自己点検・評価報告書 (特別支援教育講座)  井上とも子

報告者 井上とも子

1.学長の定める重点目標

1-1.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

教育実践力と共に学校教員のリーダーとなり、学校内外の教育実践推進の力を発揮できる資質の向上を目指す。そのために、

  1. 授業内容に子どもの実態事例、授業展開例、指導実践例を50%以上、盛り込み、教育実践・指導イメージを高め、教育への意欲、意識の向上を図る内容とする。
  2. IT活用で、わかりやすいプレゼンテーションをする。授業毎に次回の授業テーマに即した課題を提示し、下調べと発表、それを元にした討議協議、など学生が主体的に授業に参加できる方法を取り入れる。実地、体験的な授業(臨床)を行い、指導の分析等、スーパーバイズする。
  3. 日々の努力が評価に反映するよう、発表内容、協議態度も50%の評価対象とする。50%は提示テーマに沿ったレポートの内容を論理性と共に自身の考察と教育実践への具体的提案など鑑み評価する。

(2)点検・評価

 

  • 特に大学院の授業では、昨年度の授業の進行状況からの反省と新受講生(現職教員)のキャリアや実態に応じ、内容を吟味し、十分な準備をして授業を実施した。学部の授業でも子どもの指導や相談の事例を50%以上盛り込み、興味関心の持てる授業展開を図ることができた。
  • 必ず、視覚的にプレゼンテーションし、授業毎に次回の授業テーマに即した課題を提示し、下調べと発表、それを元にした討議、協議、など学生が主体的に授業に参加できる方法を取り入れ、授業内容の進捗より内容の充実に重きを置き、授業を進めることができた。
  • 実地、体験的な授業(臨床)として、発達障害が疑われる3名に対するの就学前指導(療育)を学内で行い、指導前、指導後の指導にも時間を十分にかけ、指導の分析、指導計画作成をスーパーバイズし、指導を受けた子どもの行動改善を図ることができた。指導対象児の選定には医師でもある専攻内教員と連携するなど、医療と教育の連携の視点も盛り込み、今後の通級指導の在り方を模索することができた。
  • 現場の実践を想定した課題設定によって、受業生が協力し合い調査し、まとめ発表するなど、評価対象とした事前学習、発表内容、協議態度も良好であった。
  • 資料の集め方、論文としての書き方等、研究方法の基礎を授業内容に盛り込むと共に、課題研究等では個別的な指導と受講生同士の意見交換に時間をかけた。受講生も自ら早くに実地教育の場を探し、研究に取り組むなど、意欲的に進めることができた。

1-2.大学教員としての社会(地域)貢献

(1)目標・計画

 

  • 共同研究として、特別支援教育に関わる学会大会に参加し、ポスター発表、自主シンポジウム等で、特別支援教育コーディネーターの実践面での課題と充実の必要性をアピールする。
  • 自身の研究として、特別支援教育の推進に果たす通級指導教室の役割等を研究テーマに、全国的な調査等、行いながら、研究を進め、紀要、学会誌投稿を進める。

(2)点検・評価

 

  • 特別支援教育学会大会に参加し、学会準備委員会主催のシンポジウム「特別支援教育コーディネーター養成の課題と今後」で話題を提供し、また、自主シンポジウムを「地域から発信する特別支援教育」と題し、共同企画、司会を担当し、さらに大学の立場から地域支援の在り方について話題提供を努めた。特殊教育学会とLD学会において院生との連名でポスター発表を行い、特別支援教育コーディネーターへのコンサルテーションに関わる研究について発表した。
  • 自身の研究としても、大学より遠隔地にある県内小学校の特別な教育的支援を要する児童に対して行った、学級担任をコンサルテーションした実践研究を当大学の紀要に投稿した。他、現代のエスプリ、実践障害児教育(学研)、教育開発研究所「教職研修」に特別支援教育関連の原稿が掲載された。
  • 本学アドバイザー派遣事業による県下の各学校(幼稚園から高等学校まで)の研修会講師として、規定10回を全て、各学校からの依頼お受け、講演を行い「特別支援教育」の啓発に努めた。このほか、県下の小学校、幼稚園、附属特別支援学校等の校内研修、県主催の研修講師として、特別支援教育の啓発に努めた。
  • 本学公開講座、県の教職員10年次研修において、講師を務めた。
  • 徳島県特別支援教育推進事業「専門家チーム・委員」の委嘱を受け、県下の特別支援ニーズのある子どもとその保護者、学級担任の教育相談・就学相談に応じた。
  • 兵庫県特別支援教育推進事業「専門家チーム・委員」の委嘱を受け、淡路地域の特別支援ニーズのある子どもとその保護者、学級担任の教育相談・就学相談に応じた。
  • 県立ひのみね養護学校の学校評議員を務めた。
  • 兵庫県淡路地区、地域特別支援教育連絡協議会の委員長を務めた。
  • 当講座が立ち上げる「徳島特別支援教育事例検討会」のワーキングスタッフとして参画した。
  • 科学研究費を受け、IP電話を使用し、遠隔地の養護学校や小学校の特別支援教育コーディネーターの支援(発達障害児の対応方法について等)を今年度は2校、5回程度ずつコンサルテーションを行った。
  • 本学が、鳴門市教育委員会と共催する「鳴門教育大学 教育・文化フォーラム」において基調講演し、シンポジウムのコメンテーターとしても「特別支援教育の推進」に努めた。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

  • 学部1年生の担当となり、大学生活や学業が円滑に、安全に送れ、進められるよう、随時コンタクトを取り相談に応じながら、支援を進める。
  • 研修生への対応を進める
  • 院生1年と2年の連携を図り、学び合い、支え合いの協力体制の元に研究を進めさせる。

(2)点検・評価

  • 学部1年生の担当として、宿泊研修やふれあい実習に引率し、指導助言を行った。ふれあい実習では、長期履修生3名とともに、事後指導を行い、教職経験や指導主事を生かし、教育現場が望む教員像を念頭に、「教員としての自覚」が高まるよう指導をした。幼稚園の体験実習において長期履修生とともに幼児の指導を、子どもを見る視点、生活面の安全管理の視点等学生が気づきにくい点について特に指導した。
  • 今年度コーディネーター分野の院生は5名。研修生1名。研修生は院生と同じように授業や課題研究に取り組ませ、短い期間であったが、「特別支援教育コーディネーター研究」(研究誌)に投稿することができた。院生2年の2名は、附属小学校や県立高等学校の特別支援教育コーディネーターへのコンサルテーションを行い、その実践を修士論文としてまとめることができた。この課題研究の中で、コンサルテーションへのスーパーバイズを進め、学会でのポスター発表をさせるなど、学校現場に戻ってからの成果の発揮も考え、指導することができた。
  • 修士論文をまとめるにあたって、来年度の準備にあたらせると共に、コーディネーター養成に関わる「協働意識」の向上をねらって院生1年に文章校正等に携わらせた。
  • 院生1年は早くからコーディネーターへのコンサルテーションをする研究の場を小学校に求め、決めてくるなど積極的に研究を進めることができているため、研究をする学校に指導教員として依頼状をもって挨拶に行くと同時に、その各学校のニーズに応じて校内研修会の講師をするなど、学校支援に関わり、それを通じて院生指導を進めた。
  • セクシャルハラスメント等の相談員となったが、今年度は相談者はなかった。
  • 大学院2年、1名が東京都の教員採用試験に、本学の推薦を受け受験した。その際、模擬授業案の書き方や面接指導を数回行い、推薦状作成と共に就職支援を行った。このほか関東エリアの教員採用や臨時採用に関する情報を元に支援した。

2-2.研究

(1)目標・計画

  • 特別支援教育コーディネーターの実践面での課題と充実の必要性をテーマにプロジェクト研究を進める。
  • 特別支援教育の推進に果たす通級指導教室の役割等を研究テーマに、全国的な調査等、行いながら、研究を進める。

(2)点検・評価

 

  • 特別支援教育に関わる地域連携をテーマに科学研究費が採択され、研究を進めた。県下の幼・小・中・高・特別支援学校の管理職に対し、県の悉皆管理職研修の講師、シンポジウム司会を務めたおりに、アンケートを実施し、県下の学校の特別支援教育の州新実態について調査した。その結果や県下で活躍中の特別支援教育コーディネーターの特別支援教育推進事例を、県総合教育センターの協力を得ながら、「特別支援教育コーディネーター養成研修」で使用できる研修資料として作成した。県全域の学校・園に配布予定。アンケートの処理方法において今ひとつ緻密さに欠け、統計処理に関する研修が必要である。作成した冊子に載せられていない結果もあり、今後さらに、結果に検討を加え、まとめたいと考えている。 さらに、IP電話とウェブカメラを使用しての遠隔地に位置する学校へのコンサルテーションを進めようと対象校を拡げつつあるが、コンサルテーション回数はまだ少なく、今後、計画の練り直し、研究の進め方の再検討を要する。
  • 特別支援教育の推進に果たす通級指導教室の役割等を研究テーマに、横浜市総合リハビリテーションセンターと横浜市情緒障害通級指導教室と連携し、全国的な調査等、行いながら、研究を進め、一部その結果を今年度の児童青年精神医学会大会で発表したが、共同研究者としては、遠隔地からの参与であり、研究をまとめるにあたって寄与できた部分は少ない。今後は共同研究の在り方を検討する必要がある。
  • 特別支援教育講座の教育研究支援プロジェクトにおいて、会議にはオブザーバーとして参加していたが、「発達障害児(者)のための就労・社会への移行支援ハンドブック」作成にあたり、就労支援の一事例を原稿として提供した。
  • 自身の研究として、これまで携わってきた「通級による指導」の運用面の検討を挙げていたが、アンケート調査を行い、回収・集計までにと止まり、まとめるに至っていない。19年度は、18年度末に行った遠隔地にある小学校の学級担任支援をEメールをとおして行った事例研究をまとめ本学の紀要の投稿、受理された。コンサルテーション方法やまとめる方法、研究デザイン面で稚拙な面があったことを反省している。

2-3.大学運営

(1)目標・計画

  • 各種委員会(未定)に障害児教育講座の一員・代表として参加し、議案内容等、滞りのないように報告伝達すると共に委員会業務を遂行する。
  • 学生確保のため、大学入試案内等の関係機関への配布、学会大会開催時配布、講演会の際の配布、等々、広報の方法を探り、大学宣伝活動を進める。

(2)点検・評価

 

  • 学部教務委員会に特別支援教育講座の一員・代表として参加し、議案内容等、滞りのないように報告伝達すると共に学部生時間割、嘱託講師選定等々、委員会業務を遂行した。実習関係授業と他の学部生授業(嘱託講師による授業・免許取得のための必修授業)の重なりが、点検後に分かるなど、確認作業に漏れが生じてしまった。免許取得のため学部生授業を院生も受講するなど、学部生の授業のみで調整がつかず、授業枠の組み替えに困難を来たした。院生授業時間割と学部生授業時間割の両方見比べながら、授業枠の調整と確認をする必要がある。
  • FD専門部会主査としてFD推進事業としてワークショップ、公開授業等を取り仕切り、その結果を提言にまとめた。ワークショップは2年目の取り組みと合って、また、規模を大きくしたこともあり、学内の評価は芳しくなく、教務委員以外の参加者が少ないなど、教員への広がりにかけ、目的を達成したとは言い難い。しかし、学外、学生参加型のワークショップは他大学に見られないなど、FD推進事業は外部評価は高く、今年度も評価委員会の良好な評価は得た。全学的取り組みの方向など、在り方の検討を要する
  • 特別支援教育講座主催、県福祉局協力のシンポジウムにおいて、学生確保のため、大学入試案内等を配布、総司会として案内を行う。県主催の研修会で講師をする際、大学入試案内等を持参し、配布を依頼した。
  • 大学院入学者増を鑑み、本学の大学院授業の単位が、日本LD学会認定の特別支援教育士の単位取得ポイントに換算されるよう、日本LD学会認定の特別支援教育スーパーバイザーの認定を受けた。
  • 「こころの科学」に講座として広告を掲載するために、広告原案を作成し、掲載の手配を行った。広告掲載の効果はまだ見られず、ホームページの充実などの検討を進めていく必要がある。
  • アドバイザー派遣事業に年間10回の枠全てを使い、派遣依頼に応じ、県下、幼稚園から高等学校まで、特別支援教育の推進に大学が果たす役割の大きさは示せたと思われるが、学外に出向く回数が増えることによって、学内の業務に従事する時間を勤務時間枠外にとることや、原稿執筆等は特に休日に行うため、常に仕事をしているような感じがしている。今後、免許改訂に伴い持ち授業枠が増えるため、業務の精選を図り、内容別の時間配分を考慮することも大事と考える。学内の負担偏重について大学全体で検討を願いたい。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

 

  • 県教育委員会(徳島県と兵庫県)との連携として、特別支援教育専門家チームの一員として、各地で催される教育相談や学校支援事業に携わる。と共に本学のアドバイザー派遣事業に登録し、県内の学校における特別支援教育充実への支援を進める。
  • 附属養護学校の地域支援部との連携により、徳島県内の特別な教育的ニーズのある子どもたちへの教育的支援の充実を図る。
  • 徳島市内の通級指導教室教諭を中心に勉強会を組織し、通級指導からコーディネーション活動までの教員の資質向上、教室運営への助言等、を行い、徳島市の特別支援教育の推進に対する支援を行う。
  • 県、市の特別支援教育に関する講演会、研修会講師として、教諭や指導者の資質向上事業を支援する。

(2)点検・評価

 

  • 附属特別支援学校の地域のセンター的機能の一つである地域支援部が開催する事例検討会や研修会で講演、助言を行い、また、院生の実地教育を附属特別支援学校において行い、院生の実践をスーパーバイズすることによって、附属小学校・特別支援学校の特別支援教育コーディネーターを支援するとともに、地域支援部の活動を支援し、附属特別支援学校の教員の資質向上に協力することができた。また、附属特別支援学校研究大会では指定討論者としてシンポジウムの深まりに寄与した。今年度、事例検討会への参加が、困難である時が生じた。来年度に至ってはさらに学内業務が煩雑になる可能性が出てきており、IP電話ウェブカメラの活用によって附属に出向くことなく会に参加するなど、工夫を要する。
  • 附属特別支援学校が幹事校行として、県特別支援教育研究会主宰の研修会講師、附属特別支援学校主宰の研修会講師をする。
  • 徳島市内の通級指導教室や特別支援学級の教員、指導主事を中心に隔月、勉強会を開き、発達障害児の教育的支援について事例検討や指導助言を行っている。
  • アドバイザー派遣事業以外でも、県主催の研修会、県内外の校内研修会等の講師をし、特別支援教育、特に発達障害児への対応についての理解と啓発を進めた。他県他大学の公開講座の講師依頼にも応じたが、遠隔地からの依頼で泊を伴うような場合は、入試案内や他の研修と合わせて出向くような工夫が必要と考えている。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

FD推進事業の一つであるワークショップ開催時に本学の評価委員の視察が行われ、ワークショップの意義、視点等の説明と共に会場を案内したり、鳴門市教育委員会の要請に応え、本学教育・文化フォーラムの基調講演をしたりするなど、全学的なことに関わることができた。また、様々な雑誌への原稿掲載や、講演等、社会貢献度は高いと考えられ、本学の存在をアピールできている点においては、貢献できていると考えている。

 

最終更新日:2010年02月15日

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