自己点検・評価報告書 (教育臨床講座) 井上和臣

報告者 井上和臣

1.学長の定める重点目標

1-1.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

  • 授業は,精神科医としての臨床経験に裏打ちされた実践的な「臨床の知」を提供できる内容としたい。
  • 学部学生の基礎学力の充実には日本語能力の向上が不可欠と考える。その第一歩として,日本語を的確に読むことが重要である。そこで,可能な限り,講義や演習の資料を受講生が順次音読するような授業の方法を採用することにする。
  • 大学院学生の場合,日本語能力はもちろんであるが,さらに英語能力の向上が求められる。外国語の文献を読む授業では,担当部分の訳出に先立って,当該部分を音読する課題を授業の重要な方法としたい。
  • 学部と大学院ともに,質問や疑問を作る能力を強化するために,講義や演習の内容に関する質問と批判的な質問を作ることを学生諸君に勧める。これを直接の成績評価の対象とはしないが,「疑問をもつ」ことの意義を知らしめたい。

(2)点検・評価

  • 精神科医として日常的に行っている臨床活動から材を得て,具体的かつ実践的な授業内容とした。とくに大学院の「精神医学研究」,「心理療法研究」,「精神医学文献演習」では,修了後に役立つ実践的な知識を提供することができた。
  • 学部の授業「脳と心の科学」,「学校精神保健学」において,学術用語だけでなく日常的な漢字の読みについても,そのつど指導を行った。
  • 大学院の授業「精神医学文献演習」において,英語文献を音読した後に訳出する課題を継続して取り入れた
  • 大学院の「精神医学研究」では講義に関する質問を作ることを毎回の課題とし,そのつど講義の冒頭で質問への回答を,当該の学生だけでなく全員に向け与えた。

1-2.大学教員としての社会(地域)貢献

(1)目標・計画

  • 日本認知療法学会の幹事(事務局長)として,とくに認知療法の医療への適用に尽力するとともに,京都府立医科大学での「認知行動療法を学ぶ会」と徳島県医師会での「徳島認知療法研究会」を主宰する活動を継続する。
  • 徳島県精神科病院協会の主催する社会生活技能訓練(SST)研修会を継続し,県内精神科医療機関の看護師などに対するSSTの実践的教育に積極的に関わる。
  • 児童青年を含む地域住民に対する精神科・心療内科クリニックでの診療活動を継続する。とくに認知療法の適用例を積み重ねるようにする。

(2)点検・評価

  • 日本認知療法学会の創設に関わる幹事(事務局長)として,引き続き認知療法の医療への適用に尽力した。京都府立医科大学での「認知行動療法を学ぶ会」の定例会(ほぼ毎月1回開催)が平成19年度末には第141回を数えた。徳島県医師会での「徳島認知療法研究会」については十分な活動を継続することができなかった。
  • 徳島県精神科病院協会の依頼による社会生活技能訓練(SST)研修会を年間5回実施し,県内精神科医療機関の看護師,作業療法士,精神保健福祉士などを対象としたSSTの実践的教育に積極的に関わることができた。
  • 児童青年を含む地域住民に対する精神科・心療内科クリニックでの診療活動を定期的に継続することができた。認知療法の適用例を積み重ね,全国各地の精神科医等に対する講演会で話題とし,認知療法の普及を図った。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

  • 臨床心理士として保健医療福祉・教育・司法領域での臨床活動を将来実践する大学院学生に向けて,当該領域での活動に資する認知療法の具体的な適用法を理解できるように,京都府立医科大学での「認知行動療法を学ぶ会」や徳島県医師会での「徳島認知療法研究会」への参加を促したい。
  • 先述の通り,学部学生の基礎学力の充実に不可欠な日本語を的確に読む能力を高められるよう,授業に取り組みたい。
  • 先述の通り,大学院学生の場合は英語能力の向上が求められる方策を講じたい。

(2)点検・評価

  • 臨床心理士をめざす大学院学生に向けて,京都府立医科大学における「認知行動療法を学ぶ会」への参加を促し,近畿圏出身者を中心に,参加を得ることができた。徳島県医師会での「徳島認知療法研究会」は活動が不定期であったため,所期の目標を十分には果たせなかった。
  • 学部学生に対する授業において,先述の通り,日本語を的確に読む能力を高められるような試みを実施した。
  • 大学院学生についても,先述の通り,英語を読むという課題を継続した。

2-2.研究

(1)目標・計画

  • 日本認知療法学会の幹事(事務局長)として,とくに認知療法の普及に資するような著書や論文の執筆,関連学会・研修会での講演等に尽力する。

(2)点検・評価

認知療法の普及に資するように,著書や論文の執筆,学会・研修会での講演・研修活動に尽力した。以下に例を示す。

  • 岩波科学ライブラリー134 認知療法の世界へようこそ:うつ・不安をめぐるドクトルKの冒険. 岩波書店
  • 認知行動療法を始める人のために (D.R.レドリーほか 著/井上和臣 監訳, 黒澤麻美 翻訳). 星和書店
  • 第103回日本精神神経学会総会精神医学研修コース7 精神科外来診療における認知療法の進め方:うつ病を例に

2-3.大学運営

(1)目標・計画

  • 各種委員会での職務を適切に遂行することで,大学の運営に関わることにする。

(2)点検・評価

  • 広報情報委員会の職務を適切に遂行することで,大学の運営に関わった。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

  • 先述のように,徳島県精神病院協会の主催する社会生活技能訓練(SST)研修会を継続し,県内精神科医療機関の看護師などに対するSSTの実践的教育に積極的に関わる。

(2)点検・評価

  • 先述のように,徳島県精神科病院協会の社会生活技能訓練(SST)研修会を年間5回実施し,県内の精神科医療機関の看護師など約30名に対するSSTの実践的教育に積極的に関わることができた。初年度からの研修会修了者は100名を超えている。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  • 日本認知療法学会の幹事(事務局長)として認知療法の普及に資する活動を平成19年度も継続できていることが,臨床心理士をめざす大学院学生の確保や入学後の教育内容に好ましい効果を及ぼしていると考えられる。
  • クリニックにおける臨床活動の経験が,学部や大学院の学生に「臨床の知」を実感させ,教育指導に現実味と実践性を与えていると自負している。
  • 平成20年度に国立大学法人評価委員会が行う中期目標期間の評価(暫定評価)において,組織を代表する研究業績のひとつとして,拙著『認知療法への招待(改訂4版)』が候補として選定され,作業が進められていることを大変ありがたく思っている。

 

最終更新日:2010年02月15日

お問い合わせ

経営企画戦略課
企画・評価チーム
電話:088-687-6012