自己点検・評価報告書 (授業開発講座) 伊東正貴

報告者 伊東正貴

1.学長の定める重点目標

1-1.教育大学教員としての授業実践

(1)目標・計画

この5年間を省みるとき,教育をめぐる状況の変化は大きく,また速い。即応することに困難を感じているが,目標・目的は次の三段階に設定して,試行を継続している。

  1. および 2. 先ず,教育をめぐる状況変化にもとづく教育現場の戸惑い,混乱を軽減できる方向で授業の内容を試行も試みながら構築していく(社会の発展との整合)。 その継続の上で,教育実践が依って立つべき考え方,方法を探る。学ぶ立場からは事例研究による学び方は分かり易く,役に立つので不可欠だが,一般性に欠けること,社会の変化には対応できない問題がある。教育への広く深い理解が欠かせないのであるから,6年課程の教員養成,及び教科再編(学術学会では検討済み)も視野に入れながら,基礎となる教育科学の構築が求められる。
    現在,成功している(経済的に,幸福感を持てる,社会的に安定な)国々をみるなら,殆どの国々は無資源で高度な教育水準維持していることが分かる。我国がこれまでの生活水準を維持するためには,世界の技術革新競争に乗り遅れず,より便利で役に立つ商品を作り出して世界の人々に買ってもらわねばならない。残念なことに,学校教育においては,これらの基礎となる外国語(英語),科学(理科・技術),数学(算数・倫理),また社会科といった科目が嫌われている。面倒くさいことは避けるのであるが,その傾向を軽減する良い考え・方法(教育システム)の提案,実践が求められる。
    一段階目のことは,毎年,授業内容を変え,工夫を続けている。二段階目のことは,手掛かりが得られつつあるので,科研費申請が通らなくても,停年までには報告する予定を立てている。三段階目のこと,学生,院生からは授業内容が不評で,研究の理解も得られなかったことから,過去の研究・実践の蓄積は全て捨て,新規な目標に変更し個人研究としている。結果を出しやすい学びに片寄ることは,社会の状況が変わった時代にあってはやむをえない。(多様な教員が少なくなり教育現場に活気がなく残念だが,時代性でやむをえない。)

3. 評価は,支援する立場で行っている。

(2)点検・評価

  • 10年経験者研修講師などの経験は、翻って本学の院生、学生への対応、授業等への大きな示唆(方法、内容等)も得られた。唯一、困難を感じたことは、本学へ入学してすぐ(前期授業)は、院生諸君がまだ生活に慣れていないために、授業のペースが速すぎ、研究を前面にだすことへの違和感があるようである。(後期に入ると、反応が全く異なり、積極的に行動するようになる。) 大学院の授業といえども、院生諸君の戸惑いを少なくする導入に気をつければ、恐らく、問題なく受け止めてくれるようになると考えている。平成20年度初めにこの点に気をつけて始めてみると、ずっと受け止め方がよくなっている。 昨年度は学生指導等で日程が錯綜したために科研費申請期日に間に合わすことが出来なかったが、一定の観点・着想を得られていることは個人的には納得できている。

1-2.大学教員としての社会(地域)貢献

(1)目標・計画

申請予定:

  • 平成19年度大学等地域開放特別事業(平成19年8月頃を予定)
  • 平成18年度に10年経験者研修講師(他県)を担当したことによる,継続的参加予定

テーマ1:確かな学力の育成

テーマ2:学習指導と評価の工夫・改善

担当期日:平成18年8月7日(月)-10日(木),平成19年1月4日(木),5日(金)
出席教員数(小学校,中学校,高等学校教員)は,二次会場合わせて120数名。
本年は,先方のeラーニングシステムにて参加を予定。経験は本学でも役立っている。

(2)点検・評価

  • 平成19年度大学等地域開放特別事業を8月23日,24日の二日間,本学にて行った。 テーマは「風船遊びで知る探究の種」で,参加児童・生徒は31名(及び親)にのぼった。なお,開発済みで使用しなかった演示実験は,別の機会に利用することとした。10年目教員研修に基づくe-ラーニングシステムへの参加は,試行期間とのことから,要請があえばお応えするが、各教員の多忙感に配慮せざるをえない。

2.分野別

2-1.教育・学生生活支援

(1)目標・計画

  • 平成17年,18年と学生支援委員会に所属していたので,平成19年度は,その経験を基礎として学生支援,指導を継続する。
    学生の気質が大きく変わった,と言われる。具体的には,目的意識の喪失,学習意欲の低下,モラルの低下,等々,厳しく言われている。本来,義務教育段階にて基本的なしつけ,学習習慣,等,身に付けてきているはずであるが,時代の変化により,学部学生に対してもきめ細かな対応,指導が必要になった。また,交換留学生等,外国からの学生に対する対応も,これまで通り,出来る限り,丁寧に行いたい。(教育に関する国際競争力は低いという事実に立って,留学生への対応にも工夫を重ねていく予定。その成果は本学学生の指導,支援にも役立っている。

(2)点検・評価

  • 学生支援に関して,当方の出来る限り対応してきた。ただ大変こまることは,全てのことをまかせてくるので,多忙感にさいなまれる。自立をどのように支援していくべきか,目下の大問題である。

2-2.研究

(1)目標・計画

  • 修士2年生の研究題目に合わせて,研究協力を予定している。当院生は“脳の血流変化観察”を希望しているが,本学にその設備が無いので,やむをえず必要な場合は,学外の研究機関に協力を依頼する。同時に本学にも当装置の設置ができないものか,考えてみたい。(設備は高価なため,設置は難しいが,近い将来の教育学研究には必要なので,研究の方向性を含め,可能性の検討は行っていく予定。GSR(人体抵抗測定装置)等,占有システムを移動の際に移管すべきであったと悔やまれる。)
    現時点では上記の方法にいよらず,アンケート調査方法により(及び,他の測定方法も検討しながら)研究を進める。
    なお,個人で進めている研究は別途,継続して行う。

(2)点検・評価

  • 当院生が新規に店を開店し,幼い娘を抱えながら独立した生計を営んでいる。そのため,思い切った提案をし難いのであるが,私方のタイムリミットから,現在,当人と電話と手紙で相談中である。休学期間が長いだけに、対応に困難を感じている。

2-3.大学運営

(1)目標・計画

  • 教育をめぐる状況は目まぐるしく変わり,また厳しいものがある。しかし,子どもたち,また学ぶ立場にある学生たちを追い詰めるようなことがあってはならないので,その観点から大学運営に関わりたい。そのため,現在は,学外における活動(学会関係,公的な関わり,等)は,現職教員指導以外はその都度,辞退している。
    限られた期間で学生に良い方向への変容を求めることは生易しいことではないが,これまでの教育,研究経験に則り,有為の教員を育成することを最大の目標として,全てその観点から判断し,協力する。昨今は児童・生徒の発達段階に合わせた適切な指導が十分とはいえなくなっているため,尚更に手間と時間が必要になった。高等教育の段階といえども,自立支援のために世話をやく必要があるので,可能な範囲で学生との対話を重ねたい。特に,院生からは,もっと学生中心に考えて対応して欲しい旨の強い意見を繰返し聞かされている。真摯に受け止め,機会があるごとに対話を続けている。若い(年齢が近い)教員ほど,学生には人気があることが分かっているが(学校教員と同じ),ベテラン教員の経験を自分のものにすることも成長に役立つ。学生の意欲を引き出す方向で協力していきたい。

(2)点検・評価

  • 10年目研修講師の経験を生かして授業を進めてみたが,大学院に入学してすぐの院生には受けが良くなかった。また留学生の理解を助ける英語を用いた表現の多用も日本人学生には悪い印象を与えてしまったようである。後に英語のクラスとして別時間にしたが,院生は多様な学生から構成されていることを考慮して,ゆっくりとした,丁寧な授業展開を構成すべきであった。後期の授業では,こういった雰囲気は無くなる。

2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等

(1)目標・計画

  • 「附属学校との連携」:附属校は貴重な教育研究開発場所なので,枠にとらわれない先駆的研究もできるとよいと考えられるが,そのためにはある程度のゆとりがあるとよいように考えられる。従来から,付属校の教員から有為で指導力のある大学教員を輩出している事実に立って,その条件整備を考えたい。状況は学生も大学教員も負担を与えるだけになっているため,研究協力し難い状況にある。
  • 「社会との連携」:平成18年度に担当した10年目研修講師の機会を活かし,継続的に関与する予定。教育の大事さ,難しさ,面白さ(興味深さ)の内容を伝え続け,アッピールしていく。
  • 「国際交流,等」:現在,特には連絡をとっている大学はないが,機会があれば,協力する。(10数年前になるが,韓国の教員養成大学の先生方から研究留学の打診をされたが,当時は条件が整っていなかった経緯があり,ご希望にそえなかった苦い想いがある。大部分の方々は,米国を研究滞在先にしたようである。)

(2)点検・評価

  • 例年,附属中学校のLF授業を担当してきた。中学生とはいえ,良く話を聞き,理解も優れている。今後も機会があれば継続する。 放送大学・徳島地区の面接授業を担当する機会があり,当方で得た感触も大きなものがあった。

3.本学への総合的貢献(特記事項)

  • 学生に対し,可能な範囲で支援は惜しまない。しかし,時に,当方への頼り過ぎ,約束の不履行があり,負担を感じる。そう言った学生には自立した活動を行えるように指導すべきなのであるが、一年という限られた時間、また相手がすでに社会人であることから、どこまで踏み込んで指導出来るのか、一定の指導範囲を探り、本学へ寄与することを考えたい。(一年課程で修士号等の付与が行えると、一定の解決が図れる、と考えられる。)

 

最終更新日:2010年02月15日

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