自己点検・評価報告書(人間形成講座) 木内陽一
1.学長の定める重点目標
1-1.教育大学教員としての授業実践
(1)目標・計画
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(授業内容)
大学一年生の講義においては、将来、教職に就くための基礎知識として、教育思想の理論的、歴史的展開をさらにわかりやすく述べる。
大学三年生については、文学上の素材などを援用し、教育について幅広い視野から考えられるように工夫する。
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(授業方法)
大教室での必修科目については、必要な資料を印刷し、各自に配布するようにする。20名程度の受講者の場合は、出来るだけ受講者の発言の機会を多くし、受講者のニーズを考慮した授業方法を心がける。
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(成績評価)
厳格な成績評価を行う。 必修科目はペーパー試験を行い、厳格な採点をする。二十人程度の授業は、レポート提出を求める。
(2)点検・評価
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(授業内容)
近代の人間形成の基盤をなしている「啓蒙」という考え方を丁寧に説明した。世界史に関する知識の不十分な受講生のために、常に高等学校の世界史教科書を参照して、歴史的なコンテクストがわかるように留意した。また三年生対象の講義では、続けてラフカディオ・ハーンを論じた。英語専攻の学生や、大学院生からも肯定的な反応があった。 大学院の演習で、西田幾多郎『善の研究』を講読した。教師教育には哲学が不可欠だと確信するが、社会系教育講座には哲学担当教員がいない。これだけ哲学への関心や期待が高まっているというのに。
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(授業方法)
基本資料は印刷物を配布した。また、インターネット百科事典Wikipediaを参照するように指示した。『善の研究』の講読では、毎回、受講生にレジュメを作ってきてもらい、それを手がかりに議論した。思った以上に受講生の理解力は優れていた。古典的著作を丁寧に講読するという方法は、平凡ではあるが、大学での授業の王道ではないかと考えた。受講生との議論の中で、私の西田理解も深める事が出来たと思う。
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(成績評価)
従来の試験と出題傾向を変えたので、平均点が下がった。杞憂に過ぎないかもしれないが、大学院長期履修生の中に、基礎知識の欠けている受講者が含まれていたようだ。2008年度は、オフィスより「補習」を依頼されているので、この点に留意して任務を遂行したい。
1-2.大学教員としての社会(地域)貢献
(1)目標・計画
(財)徳島県埋蔵文化財センター(板野郡板野町)と連携し、センター職員と共同研究をするとともに、講座院生とともに同センターを訪れ、同センターの活動を院生に知ってもらうようにする。それを通じて、とくに県外から来ている学生に、阿波の文化を伝える。
(2)点検・評価
6月9日に埋蔵文化財センターを訪れた。院生にも、「座学」だけではなく、体験学習が有用なようである。当日の事を院生が以下のようにレポートしている。「今回は、昨年もお世話になった木内研OBで現在は徳島県立埋蔵文化財センターにお勤めの片山純州先生とご一緒して、埋蔵文化財センター内を見学し、火起こしや勾玉作りを体験しました。徳島県内から出土した土器や石器などについて説明していただき、古代における徳島と他の地域との関わりについて考えさせられました。体験活動では、それぞれが普段見せないような集中した表情を見せながら作品制作や火起こしに時間を忘れて没頭していました。また今度、M1の方々と一緒に行き、そのほかの体験もしてみたいと思います。」
2.分野別
2-1.教育・学生生活支援
(1)目標・計画
- 人間形成講座「人間形成の歴史と哲学」分野担当の教員として、この分野のもう一人の教員である梶井一暁講師と緊密に連携しながら、学生の教育や生活支援を行う。とくに、共同のゼミ合宿を行い、学生の指導をする。
- フィルハーモニー管弦楽団顧問教員として、学生の課外活動の支援をする。
(2)点検・評価
- 梶井研究室と合同で合宿研修を行った。
- 3月15日の定期演奏会に出演した。また、3月18日の卒業式にも演奏した。学生たちも喜んでくれて、やりがいを感じてはいるが、老眼が進み、譜面が見難くなってきた。
2-2.研究
(1)目標・計画
- ドイツでの教育学研究集会に参加し、研究発表を行う。
- ドイツ人研究者との共同研究の成果を、共著論文としてまとめ、発表する。
(2)点検・評価
- ドイツ・フレーベル博物館創立25周年記念集会(9月21日)で、「フレーベル博物館所蔵の資料と日本のフレーベル研究」のテーマの下に、招待講演を行った。講演は記念論文集に収められドイツで発刊される予定である。
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については、以下の論文を発表した。 木内陽一、ユルゲン エルカース、小林万里子「新教育」以前の新教育」(『鳴門教育大学研究紀要』第23巻(2008)1-13頁
共同研究者のエルカース教授は、私の博士論文の指導教員だった学者である。 それ以外には、「英文教育学研究」に、始めて英語論文を発表することができた。 Kiuchi, Yoichi: Unrequited Love for Germany?- Paradigm and Ideology in Educational Research in Japan until 1945. In: Educational Studies in Japan. Internatiional Yearbook No.2, 2007 (Japanese Educational Research Association), pp.45-56.
2-3.大学運営
(1)目標・計画
- 委員として学内の各種会議に出席し、職務を遂行する。
- とくに第一部副部長として、佐竹勝利部長を補佐するとともに、教育研究評議会委員として、大学の運営に加わる。
(2)点検・評価
- 大学院入試委員会副委員長として、村田委員長を補佐した。また、図書館蔵書に関するワーキング、教職キャリア開発オフィスのワーキング、教員免許更新制ワーキング等に加わった。
- 第一部副部長として、佐竹勝利部長を補佐するとともに、教育研究評議会委員の二年間の任期を無事終えた。
2-4.附属学校・社会との連携、国際交流等
(1)目標・計画
高橋啓学長の委嘱で、他の四人の教員とはかり、「文化講演会」を3‐4回企画、実行する。その際、とくに地域に開かれた講演会となるように努力し、地域と大学の連携に努める。
(2)点検・評価
- 10月19日に辰野審議官をお迎えし、大村はま先生に関する講演をしていただいた。大講義室に多くの聴衆が集まり、盛会であった。文化講演会の回数は、数値目標に達しなかった。
- 脇町高等学校「一日総合大学」(6月13日)に講師として招かれ、教育学の授業を行った。2008年度は、脇町高校からの進学者が多い見込みである。
3.本学への総合的貢献(特記事項)
今年度のハイライトは、リューネブルク大学学生のユリア・ハーンさんの来学だったと思う。5月初めから三ヶ月間の滞在であったが、形式上の受け入れ教員となった。講義でもハーンさんに、とくにドイツより持ってきた映像を用いて、ドイツ人の生活を紹介してもらい、学生・院生の刺激になった。学生たちは、私のドイツ語を聞くのは初めてだったらしく、「少しは僕を見直しましたか?」とたずねると、「圧倒されました!」と答えてくれ、面目をほどこした。ドイツとの交流に更に尽力したいと思う。