第5回鳴門教育大学運営諮問会議議事要録

日時

平成15年7月31日(木)  15:00~17:20

場所

ルネッサンスリゾートナルト 8階「マジィルーム」

出席者

井内慶次郎 会長〔(財)日本視聴覚教育協会会長〕
桑原信義  副会長〔(株)徳島銀行相談役〕
大塚  公  委員〔大塚製薬(株)監査役〕
亀井俊明  委員〔鳴門市長〕
佐藤修策  委員〔湊川短期大学長〕
高木弘子  委員〔元 徳島県教育委員会教育委員長〕
高倉  翔  委員〔明海大学長〕
中野重人  委員〔日本体育大学教授〕
野原 明   委員〔文化女子大学教授〕

欠席者

松村通治  委員〔徳島県教育委員会教育長〕

陪席者

溝上学長,佐々木副学長,藤原副学長,田浦事務局長,高橋図書館長,安好第1部主事,田辺第2部主事,村田第3部主事,村澤第4部主事,前田第5部主事,齋藤学校教育実践センター長,石堂徳島県教育委員会学校教育課企画調整班長,その他事務局職員

会議

(1)開会

  井内会長から,会議の開会が告げられた後,今回は松村委員が都合により欠席している旨の報告があった。
  引き続き,溝上学長から本会議への出席に対するお礼に併せて,今回の議題設定に至った経緯等の説明及び鳴門教育大学の今後のあるべき方向について指導・助言を賜りたい旨の挨拶があった。

(2)資料確認, 日程説明

  総務部長から,日程説明と配付資料の確認があった。

(3)議事

  1. 国立大学法人鳴門教育大学について

      溝上学長及び藤原副学長から配付資料に基づき,国立大学法人化に向けた大学の取組み等について説明があった。

    〔説明内容〕

    • 鳴門教育大学の使命について
    • 中期目標・中期計画について
    • 「特色ある大学教育支援プログラム」について
    • 学長他役員等及び教員選考基準,管理運営組織等について
    《学長等からの説明に対する質疑応答等》
    • 委員の発言

        鳴門教育大学の中期目標・中期計画の中に出てくる教育実践力とは何を指しているかを説明願いたい。

    • 大学側の発言

        学校の教員には確かな授業ができることが求められている。従来は,教育職員免許法の3つのカテゴリー(教職,教科専門,教科教育)について,基本的に大学が設定した授業科目を学生に選択・履修させることにより単位を加算し,自動的に免許を与える体制をとっていた。これは学んだこと,研究したことを学生自身に統合させるかたちを取っていたわけであるが,学生の中で実践と理論の統合がうまく図られていない面もあった。そこで,より確かな教員としての学力をつけるために,教職と専門の両方にかかわるキーコンセプトを見つけ,それを中心として内容の再構成をしていく,内容学というものを構築していく必要があると考えた。
        教員を養成していく上では,子どもがバランスよく成長していくための学ぶべき様々な分野ごとに,それぞれのキーコンセプト,学習指導要領及び評価基準に示されている原理といえるものを中心として内容を構成していく力をつけ,その上で,教育実習を通して実践的な力を養っていくことが必要である。それとともに学生が子どもとふれあいながら,子どもとは一体どういうものであるかを体験を通して知ることにより,抵抗なく子どもに対処できることも重要である。教育実習的なものを中心に置きながら,内容的には核になるものを抽出し内容を再構成することは,専門科学,教科教育及び教職それぞれの教官の相互協力によって可能であると考えており,教育実践力の育成として研究している。

    • 委員の発言

        実践力とは,学級経営はもちろん,教材の開発・研究,学習指導法の研究なども含まれるのではないか。

    • 委員の発言

        校長の立場から先生方の総合的な教育力を見ていて思うのは,授業に子どもたちをどう引き込むかという力がないと,いくら先生に学力があり,教材を研究していてもなかなか生徒はついてこないということである。そういう意味で,実践力というのはもう少し違う側面が入ってくるのではないかと考えている。

    • 大学側の発言

        子どもをどうすれば授業に引き込むことができるかということは,非常に核心に触れる重要な指摘だと思う。子どもの考え方や行動を理解するには,学校での様子や帰宅後の様子をよく観察したり,ともに遊んだりして,子どもとはどのようなものなのかを体を通して知ることが大切だと思う。フレンドシップ授業や鳴門市における子どもとのふれあい授業,子どもの街づくりといった,日常的な生活の中での型にはまらない教育実習といえるものに,学生が積極的に参画し,協力することが子どもを理解する上で非常に重要ではないかと考え,それをもっと強力に進めていこうと考えている。
        学生に聞くと,当初は漠然と教員になりたいという気持ちで入学するが,1年生の終わり頃になると,自分がどのような専門の教員になろうというはっきりした目的意識を持つようになってくるという意見がある。これは,現場における実際の教育体験から形成されるのではないかと思っている。附属学校園における教育実習を体験することで,授業の型や方法を身につけることができるが,それを支えるものとして日常的な子どもとのふれあいも行われなければならない。

    • 委員の発言

        学長の説明の中で社会や地域との連携について説明があったが,そういったところとも非常に強く結びついたプログラムであると理解してよいか。

    • 大学側の発言

        小・中学校の教員はどこへ赴任するかわからないこともあり,地域素材の教材化ができる教員でなければならない。地域の文化や自然などの中から教材化していく力をつけるためには,地域の文化財や自然に展開するものを研究の対象とするというような地道な研究体制をとることによって,学生が教員になった地域において教材化を図り,具体的な学習活動を展開させる上で非常に重要な有効な役割を果たしていくのではないかと思う。

    • 委員の発言

        おそらく,他の教員養成大学でも同じような発想で同じような課題に取り組んでいると考えられる。したがって,鳴門教育大学における取組みが他の大学の取組みと一味違うところをはっきり示していただきたい。

    • 大学側の発言

        本学の特色としては,①教員養成コア・カリキュラムと学校危機管理に係るカリキュラムを16年度までに構築し17年度から実施する方向で,学部,大学院ともカリキュラムの改善を検討していること,②附属学校園の位置付けについて,現在の学校教育学部附属を大学附属とすることで大学との関係をより一層密接にし,共同研究体制を今以上に充実させていくこと,③現在行っている教育研究業績を基底とした研究費配分をさらに改善し,教育研究業績を一層反映させること,④臨床心理士養成をより一層充実させるため,カリキュラムや組織の見直しを行っていること,⑤管理職養成プログラムの具体化へ向けて分野を新設することなどが挙げられる。

    • 委員の発言

        以前,世間では教育技術の法則化運動というのが非常に盛んになったときがあったが,あれは結局,大学の教員養成のしかたへの批判だったと思う。そういう意味で,この教育実践学を中核とする教員養成コア・カリキュラムの開発は大変先進的なことだと思う。
        今後の学部の教育体制の編成は,重要なポイントになると思うが,コア・カリキュラムと絡めて学部の教育組織についての検討状況はどうなっているのか。

    • 大学側の発言

        現在,教育研究組織を見直すための委員会を全学的に立ち上げ,鋭意検討を行っているが,その中で大学院と連係した6年一貫のカリキュラムの体系化について検討している。最終的にはそれが具体化された段階で,学部の教育の質的向上となると考えている。

    • 委員の発言

        実践学が話題になったのは,連合大学院博士課程を作るときであった。当時の文部省から,教員養成系における博士課程の必要性,既存の博士課程と新構想大学が考える博士課程との違い,独自性についてかなり厳しく求められたが,教育実践学をこれから構築するということで納得を得た経緯がある。
        学生の中に実践と理論の統合がうまく図られていない面もあったため,実践から理論を導き出し,理論化されたものを実践に適用するという具合に,理論と実践の統合をどんどん図っていく必要があり,単に実践力をつけるだけでなく,実践を学問まで高めなければならないということであった。
       &nbso;学位についてもかなり議論があり,博士(教育学)であれば京都大学,広島大学や東京大学と変わらないため,連合大学院は教育実践にウエイトを置いた教育実践学を構築するから博士(学校教育学)だということが流れの中で取り上げられた。
        それにも関連するが,専門職大学院とはどのような理念なのか。例えば東京大学や京都大学に管理職のための専門職大学院,ビジネススクールのようなものをおきたいという話が出ていたが,同様に考えてよいか。

    • 大学側の発言

        まだ,教育関係でははっきりしていないところがある。平成10年の大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について-競争的環境の中で個性が輝く大学-」の中間まとめでは例示に教員養成分野の記述があったが,答申では抜けていた。

    • 委員の発言

        昨年の中央審議会答申「大学院における高度専門職業人養成について」では,教育なども視野に入れた幅広い分野の専門職大学院を考えてほしいということで分野の例示はあえて避けたが,それとは別に法科大学院についてはいろいろな事情があって特化して先行させた。したがって,専門職大学院については,教育関係も当然考慮して考えていることを念頭におきながら,これから話を進めていただきたい。

    • 委員の発言

        博士課程を作るときに,教育委員会の調査をかなり行ったが,その際教育委員会からは,教員はスペシャリストでなくゼネラリストでよい,何にでも使えるような者でなくてはならないから,博士課程でスペシャリストを養成することは現場には合わないという意見をたくさん言われた。小学校の場合であればなんでもこなせるゼネラリストを養成してくれという要望が強かったということもあり,学校教育が何を要望しているのかが今後話題になるのではないか。

    • 大学側の発言

        そういう立場から,管理職・学校マネジメントの専門家の養成,臨床心理士の養成など専門的な領域における専門職大学院の設置を目指し,準備をする必要があると考えている。本学の修士課程も広い意味で教育の専門職を養成しているが,その中でも特に専門的な領域に特化した領域があるはずであり,それにふさわしい人材を養成するための教育研究のシステムをこれから固めていかなければならない。

    • 委員の発言

        大学の運営について,いわゆる一般論から言うと企業も行政もみんな同じで,判断の視点を鳥の目と虫の目で見ることが必要である。ものごとを論じるには大きい鳥の目のほうからはじめて,だんだん小さく虫の目にしていくべきである。鳴門教育大学の使命として,今後の教員養成に関し,まず四国で2拠点,やがては四国で1つの教育大学にしたいという構想を持っているようであるが,その使命を達成するのに具体的にどう持っていくのかということを聞きたい。
        また,受験生が最寄りの教育大学の門の前を通り過ぎて,鳴門教育大学を希望するような,個性ある,魅力ある大学にするにはどうすればよいか,それが今後の勝負どころだと思う。

    • 委員の発言

        教育実践学が大学院の学問としてあるべき姿なのかどうかということが議論に出たようであるが,教育実践学は学んだことの効果がすぐに測定できる,子どに受け入れられるか,ちゃんと授業ができるかなど非常に端的な結果の出る数少ない学問だと思う。学んだことをすぐに実践し,実践した結果が良くなければ次の方法を考えるという現場と学問がすぐに交流でき,さらに高めていける学問というのはほかにないと思う。それをどんどん追究していくことによって,もう少し日本の学問の水準を実学化できるのではないかという意味で,今の教育大学の制度,研究のやり方はもっと受け入れられていいし,見直されてもいいのではないかという気がする。
        他の学問が何も役に立っていないとは言わないが,例えば,経済学を一生懸命やっても,日本の経済にどれだけ効果をあげたかという評価は何もなく,実績の裏づけがない。これが日本の大学の学問の一番いけないところではないか。大学で自分の理論を研究し,実社会に出て実践をやってみるが,うまくいかないのでもう一度大学に帰って自分の理論をやり直すということができない仕組みに日本の社会がなっているのだと思う。しかし,教育というのは数少ないそのようなことができる学問だと思うし,さらに学問と実際とが密接に連携して向上していけるという部門ではないかと思う。

    • 委員の発言

        いろいろと本質的な意見をいただいたが,今でた意見を掘り下げることでいろいろな問題が全部出ると思う。特に教育大学を作ったときは何を考えたのかという原点にもう一度帰っていただきたい。まさに教育実践学だと思う。本学発足のときの初心を掘り下げて,そこから逸脱するなら教育大学の看板をはずした方がよいと思う。本学発足のときにどこからどのような抵抗を受けながら,どこと戦いながら本学を作ったのか,それが少し据え膳になっているような気がする。その意味で今までに出た意見をとりまとめる際に,できれば本学が発足した初心を元にしながらそれのどこを加速するのか,どこが不幸にも時代の流れでうまくいかなかったのか,その反省と実績の評価をつなげるという両面がないと本当に人の心を打つものは出てこないと思う。

  2. 鳴門教育大学の次期学長の選考方法について

      溝上学長から配付資料に基づき,次期学長の選考方法(選考会議の組織,選考に係る手続き,有資格者等)について説明があった後,井内会長から学長に対し,運営諮問会議委員の中から選出する5人の選考会議委員の選考に当たり,候補者の依頼を行うよう指示が出された。
      これを受けて,学長から井内会長,桑原副会長,亀井委員,佐藤委員,高木委員に就任依頼が行われ,了承された。
      引き続き,学長から今後の選考会議の日程について説明があった。

  以上の議事に対し,溝上学長から法人化後の本学の方向性を明確にすることの決意と,4年間2期にわたる運営諮問会議委員の指導・助言に対し感謝の言葉があった。

(4)閉会

井内会長から,第5回運営諮問会議の閉会が告げられた。

最終更新日:2010年03月19日

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