平成25年度入学式告示

- 高度専門職業人としての教員を目指して -

 

 

 

 ただいま入学を許可いたしました学校教育学部107名、大学院学校教育研究科・修士課程216名、専門職学位課程43名合わせて259名の皆さん、改めて本学へのご入学を心からお祝い申し上げますとともに、お慶び申し上げます。
 また、この日まで皆さんを温かく見守り、支えてこられましたご家族、関係各位に心から敬意を表します。

 

 さて、鳴門教育大学は、新構想の大学として、1981年10月に創設された「教員のための」大学、「社会に開かれた」大学です。2004年4月からは、国立大学法人鳴門教育大学として装いを新たにし、一昨年10月1日、創立30周年を迎えました。人間の発達段階で言えば成人期にあたり、働き盛りと言えます。
 本学の規模は、学部定員400名、大学院定員600名、合わせて1000名という小規模な大学ですが、教職員は254名であり、皆さん一人ひとりのニーズに合わせて、きめ細かな教育研究指導が行える態勢を取っています。

 

 2004年4月の法人化以後、本学は大学憲章を定め、「教育は国の基である」という理念のもとに、教員養成大学として時代の要請に応えるべく、高度な教職の専門性と教育実践力、そして豊かな人間愛と深い教養を備えた高度専門職業人としての教員の養成を最大の目的とし尽力して参りました。また、四国霊場88カ所の一番札所、霊山寺が鳴門にあることにちなんで、本学を「教育の一番札所」と名付け、我が国の学校教育や教員養成において、先導的役割を果たしていくべく日夜努力を重ねているところです。

 

 今年1月9日の文部科学省の発表によりますと、本学学部学生の教員就職率は80%であり、3年連続全国第一位という輝かしいものでした。先に述べましたように本学は、創立30年あまりの若い大学ですが、教員養成の目的大学として着実に実績を上げ、歴史に名を刻んでいると言えるでしょう。皆さんとともにこれを常態化し、教員の鳴門ブランドを創っていきたいと思います。

 

  ところで、学校現場では今何が起こっているでしょうか。小学校では、一昨年度から改訂学習指導要領が実施され、それに伴い「小学校外国語活動」が、中学校では昨年度から「武道」「ダンス」が必修化され、注目されています。
 一方、いじめ、不登校、引きこもり、学力低下、保護者への対応など、従来からの教育課題も山積しており、心労の故か、心身の不調等を訴え休職を余儀なくされている教師が全国で5000人を超えると言われています。学校現場の先生方は、学校の授業や生徒指導のみならず、家庭訪問や保護者との面談など多忙を極めておられるのではないでしょうか。いじめや体罰、それに起因する自殺は今や社会問題となり、新聞等のマスメディアに取り上げられない日はありません。

 

 現職派遣の先生方の中には、日常業務の多忙さや人間関係の葛藤の中で、ともすれば初心がくじけそうになり、教師としてのアイデンティティが揺らいでいる人がおられるかも知れません。これから始まる大学院の教育研究の中で、もう一度、自らのアイデンティティを問い直し、それを再構築し、不動のものとしてください。大学生活は、これまで積み重ねてきた自らの教職キャリアについて省察するよい機会となるでしょう。教師とは一体何者なのか、この奥深い問題を改めて問い直し、「学び続ける教員像」を確立して下さい。

 

 さて、昨年8月28日に、中央教育審議会は「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」答申を出しました。その中で、教員を「高度専門職業人」と明確に位置づけ、教員養成の「高度化、修士レベル化」を提言しています。そしてまた、「学び続ける教員像」の確立を求めています。

 

 本学は既に、平成17年度より学士課程にコアカリキュラムを策定・導入し、コア科目として教科教育実践と教育実習(実地教育)を学年を縦断して設けています。大学院でも教職大学院では教育実習が10単位以上義務づけられていますし、修士課程でも学校現場の課題を探求する「教育実践フィールド研究」を設けています。中央教育審議会の答申にあるような教育実践力をしっかり身につけた質の高い教員を養成するためには、構造化され体系だった教育実習が欠かせません。

 

 本学の学士課程においては、教員としての基礎、基盤を修得するようなカリキュラムになっていますが、コア科目の一つの柱である教育実習を取り出してみますと1年で「ふれあい実習」、2年で「施設実習」、3年で「主免教育実習」、4年で「教員インターンシップ」、さらに4年の後半で「副免教育実習」が組まれています。つまり、1年から4年を通して、教育実習がコア科目として貫かれています。大学と学校現場との往還を通して、理論知と実践知の融合を図り、教員としての資質・能力を身につけるような教育課程となっています。

 昨年私は、学生諸君の教育実習に少しでも役立ててもらおうと思い、教育実習十訓(10の指針)を作りました。そして、主免教育実習である附属学校園実習に行く前、3年次の9月に学生諸君に実習十訓を配付しました。しかし、本学では先ほどお話ししましたように1年から教育実習が始まっています。そこで、本日の入学式では、私の作った教育実習十訓を皆さんへお贈りしたいと思います。

 

 教育実習十訓
 一.害をなすなかれ
 一.児童生徒の理解に努めよ
 一.教育実践力を身につけよ
 一. 周りの人たちを師と仰げ
 一.礼節を重んぜよ
 一.自主的かつ協調的であれ
 一.誠実と謙虚の両輪を備えよ
 一.実習を省察し成長の糧とせよ
 一.清潔を旨とせよ
 一. 心身の健康に気をつけよ

 

 この教育実習十訓は、いささか古めかしい感もありますが、教育実習のフィールドに限らず、社会の多くの場面で活かすことができるのではないかと思います。これらの多くは、私自身への自戒の言葉でもあります。

 

 さて今世紀、社会は一層グローバル化が進み、環境、資源、人口、紛争、災害など地球上の大きな課題が、私たちの前に立ち塞がっています。人類が抱える数々の困難な問題に対して、教育こそが解決への導きの糸となり、次の世代を生き延びさせることに繋がるのではないでしょうか。混迷する世界にあって、私たちは、高い志と揺るぎない教育観に立って、次世代を担う子どもたちに「何を」、「どのように教えたらよいのか」、熟考し、質の高い教員養成を目指すとともに、「社会に開かれた大学」として地域に貢献し、その使命を果たしていきたいと思います。

 

 皆さんが、大学という組織文化の中で、多くの新しい出会いをつくり、大いなる人間的成長と学問的発展を遂げられることを心から願っています。


                                                    2013年4月8日

                                          鳴門教育大学長 田中雄三

  

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