子供の心と大人の知恵を大切にし,鳴門教育大学でともに学ぼう

国立大学法人鳴門教育大学長 山下 一夫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

環境は無言の教育
 鳴門教育大学は、瀬戸内海国立公園の区域内にあります。大学周辺には、豪快な鳴門の渦潮、四国八十八カ所霊場の第一番札所霊山寺(りょうぜんじ)、西洋絵画の陶板複製画が一堂に展示されている大塚国際美術館などがあり、大阪梅田から高速バスで2時間で来られるということもあり、多くの観光客やお遍路さんが訪れています。
 木々の緑と海の青が映える風光明媚な地ですが、本学のキャンパスも非常に美しく、ゆったりとした雰囲気を醸しだしており、落ち着いて勉学に励むことができます。初代学長の前田嘉明(よしあき)は「環境は無言の教育であり、大学の環境・建物は物言わぬ教師である」という信念の下、本学の設計段階から関わり、日本でも有数の美しいキャンパスを造りました。

特色ある図書館
 建物だけではなく、教育施設も充実しています。例えば、図書館には、「大村はま文庫」「野地潤家文庫」があり、国語教育を学ぶ者にとって聖地のような所です。また、国立大学では先進的な「児童図書室」があり、学生・子供・市民の交流の場となっており、平成24年(2012年)に全国学校図書館協議会より「学校図書館賞奨励賞」を受賞しました。これは大学図書館で初の受賞です。

本学のスタート
 本学は、教員養成の充実、現職教員の研修、教育に関する高度な研究を目的する新構想大学として、昭和56年(1981年)10月1日に創設され、昭和59年(1984年)4月に大学院(修士課程)の1期生を迎えました。
 そして、学校教育学部は昭和61年(1986年)4月に、教職大学院(専門職学位課程)は平成20年(2008年)4月にそれぞれ1期生を迎えました。また、平成8年(1996年)4月に設置された兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科(博士課程)の構成大学でもあります。

教師教育のリーダー大学
 創設以来、教師教育のリーダー大学としての使命・ミッションを果たすべく努めてきました。その成果の一端として、学部卒業生の教員就職率6年連続第1位を達成しており、大学院修了生(現職教員を除く)の教員就職率も非常に高く、特に教職大学院修了生のそれは100%で2年連続第1位です。
 また、いじめ問題にも積極的に取り組んでいます。本学が中核となり、宮城教育大学、上越教育大学、福岡教育大学、各地の教育委員会等が連携協力し、教育・研究・支援・研修等の事業を行っています。

学校教育を支える人材の養成
 臨床心理士や国際教育協力専門家のように広く学校教育を支える人材の養成も行っています。本学大学院を修了した臨床心理士は500人以上を数え、スクールカウンセラーを始めとして各分野で活躍しています。また、学生を海外に派遣する事業を積極的に進めるとともに、留学生だけでなく海外の教育関係者の研修を受け入れており、長年にわたるこの研修事業の功績に対し平成25年にJICA(国際協力機構)より「国際協力感謝賞」を受賞しました。

本学の使命
 教師教育のリーダー大学としての使命を果たすべく様々な改革を進めてきていますが、本学が一貫してかかげている使命は、前田初代学長が開学にあたり述べた次の抱負ではないか、と私は思っています。
 「本学の使命の一つは、教師の資質を高めることにあるが、それは教育についての理論、知識、技術だけを教えることではない。教育は子供と人格的に交わる営みである。その前提になっているのは、子供との内面的なつながりであり、人間愛なのであって、そうした教師としての”心”を育てていきたい。人間愛・使命感に支えられた教師を養成することが本学の使命でもある」。

子供の心と大人の知恵
 この前田先生の抱負を、私なりの言葉で言い換えると「子供の心と大人の知恵を大切にする教師」ということになります。
 皆さんは、小学校に入学したとき、6年生や先生がそして校庭がとても大きく見えたことを覚えていますか。子供のときの楽しかったこと悲しかったことを覚えていますか。子供の心を忘れずにいるからこそ、子供に寄り添え、共感できるのです。
 子供の心を大切にするためにも、大人の知恵を身につけねばなりません。知識や技術は大切ですが、大人の知恵とはそれだけではありません。例えば、教育現場において集団の規律やきまりを重視する立場と、児童生徒個人の心や自発性を重視する立場との対立や葛藤が見られます。単純な正しい答えがないとき、同僚ともよく相談し、様々な視点から考えたうえで、答えを求めていかねばなりません。このようにして答えを求める行為自体も、大人の知恵と言えるでしょう。

教える自信と学ぶ謙虚さ
 教育は子供と人格的に交わる営みですが、鳴門教育大学において、子供だけではなく、大学教員、同僚の学生らと人格的な交わりを心がけて下さい。そして、教える自信と学ぶ謙虚さをもち、教員・人間としての器をより一層大きくして、本学を卒業・修了して下さい。
 本学で、ともに学びましょう。

 

   平成28年4月1日

     国立大学法人鳴門教育大学長 山下 一夫