2019(平成31)年度入学式告辞

「平成から令和へと改元される年の入学式にあたって」

 

 学校教育学部113名、大学院学校教育研究科は留学生19名を含む193名、以上306名の皆さん、鳴門教育大学へのご入学おめでとうございます。
 鳴門市長 泉理
(みちひこ) 様をはじめご来賓の皆様、ならびに本学教職員とともに、皆さんの入学を心からお祝いいたします。
 また、これまで皆さんを温かく見守り、支えてこられましたご家族や関係者の皆様に心から敬意を表しますとともに、お慶び申し上げます。

 キャンパスの桜が、皆さんを迎えてくれているように思えます。そして、正門を入ってワシントンヤシ、カナリーヤシ、アメリカデイゴ、サツキツツジ、ゲートを抜けると大きな楠というように、様々な植物が私たちの心を和ませてくれます。国立大学の中でも有数の美しいキャンパスです。
 鳴門教育大学は、教員養成の充実、現職教員の研修、教育に関する高度な研究、教育に関する社会貢献を目的としており、「新構想大学」の一つとして、つまり「教師教育のリーダー大学」として、昭和56年(1981年)10月1日に創設され、昭和59年(1984年)4月に大学院の1期生を、昭和61年(1986年)4月に学部の1期生を迎えました。そして、地元の鳴門・徳島を拠点に、四国、日本、世界へと活動を展開してきました。

 さらに、今回、他大学に先駆け大学院の大改革を行い、この平成31年4月1日より、「鳴教大
(なるきようだい)モデル」と称される大学院教育をスタートさせます。
 しかし、制度やカリキュラムが変わっても、本学の基本方針は変わりません。それは、「専門性」「共感性」「社会性」「実践力」を大切にし、「常に自らが学び続け成長しよう」とする「人間的な魅力がある教師や教育関係者」の養成に努めるということです。

 鳴門教育大学は、非常に美しくて魅力的な大学です。しかし、環境や基本方針は大事ですが、本学が何より美しくて魅力的なのは、より良い教師、より良いカウンセラー、より良い国際教育の専門家というように、教育に携わる高度な専門職業人・プロフェッショナルを目指し、全国さらには海外から様々な経歴を持つ多くの人たちがこのキャンパスに集まってきており、多くの出会いがあるということです。

 皆さんもリーダー大学に入学したという自覚を是非持ってもらいたい。そして、卒業や修了時に本学で学んだことが誇りに思えるように、本学において様々な出会いと交流を経験することによって、人間として成長していかれることを願っています。
 その為にも、よき出会いや交流の第一歩は、挨拶ができるかです。

 ところで、一昨日に「平成」から新元号が「令和」と発表され、まだその余韻がさめやらぬ時に入学式を迎えるのは、一生記憶に残ることでしょう。本学としても、新しい元号で新しい大学院がスタートするのは、感慨深いものがあります。
 しかし、令和がどのような時代になるのか、期待と不安な気持ちがする人も多いのではないでしょうか。
 そしてまた、「和」という漢字に、何かホッとする人も多いと思います。「大化」から「令和」まで248の元号のうち、「和」という漢字が用いられたのは、5番目に多く20回目だと言うことです。
 やわらぐ、なごむ、と読み、日本、日本人、日本語という意味にも用いられます。平和、温和、和解、和気藹々
(あいあい)など、どれも肯定的な言葉であり、聖徳太子の「和を以て貴しとなす」で代表されるように、「和」はまさに日本人にとって最も大事な言葉と言えます。

 韓国のイ・ウオンボク(李元馥)氏は、韓国と中国と日本の三国を比較することによって、韓国の国民性と歴史をわかりやすくコミックで描いています。 李氏は、三国の最も重要な価値を一文字の漢字で表すなら、中国は「一」であり、ONE、FIRSTである。日本は「和」であり、HARMONY、PEACEである。そして韓国は「忠」、中と心からなる「忠」であり、ORTHODOXY、ORIGINALITYである、と述べています。
 「和」も「一」も「忠」も重要な言葉ですが、特にどの言葉に価値を置くかでそれぞれの国民性の違いが垣間見られます。それゆえ、この三国がこれからも良き出会いと交流をするためには、お互いに違いを認めたうえで、如何に相手を尊重し、適度な距離感がとれ、共に協力して仕事ができるかです。
 2002年に出版された本ですが、ユニークな見解は、今読み返しても教えられるところが大いにあり勉強になります。本学の図書館にありますので、関心のある方はご覧下さい。(松田和夫・申明浩(訳)『コミック韓国』朝日出版社2002年)。

 閑話休題、話を戻し結びに向かいたいと思います。
 リーダー大学に入学したという自覚と、卒業や修了時に本学で学んだことが誇りに思えるように、本学において様々な出会いと交流を経験し、人間として成長していかれることを切に願っています。そして、皆さん何より健康に留意してください。
 以上、私の入学式の告示といたします。

 鳴門教育大学への入学、誠におめでとうございます。

 

 

2019(平成31)年4月3日
                     鳴門教育大学長 山下一夫