2016(平成28)年度入学式告辞

「魅力ある教師を目指して ~感動する心を大切に~」

 

 ただいま入学を許可いたしました学校教育学部113名、大学院学校教育研究科・修士課程170名、専門職学位課程52名の皆さん、鳴門教育大学へのご入学おめでとうございます。ご来賓の皆様および教職員とともに、皆さんの入学を心からお祝いいたします。

 そして、これまで皆さんを温かく見守り、支えてこられましたご家族や関係者の皆様に心から敬意を表しますとともに、お慶び申し上げます。

 

 キャンパスの満開の桜が、皆さんを迎えてくれているように思えます。そして、桜だけでなく、正門を入ってワシントンヤシ、カナリーヤシ、アメリカデイゴ、サツキツツジ、そしてゲートを抜けると楠というように、様々な植物が私たちの心を和ませてくれます。
 
 鳴門教育大学は、非常に美しくて魅力的な大学です。
 初代学長の前田嘉明は「環境は無言の教育であり、大学の環境・建物は物言わぬ教師である」、つまり学び舎として最高の環境を作りたいという信念の下、国立大学の中で有数の美しいキャンパスを造りました。

 

 しかし、建物も大事ですが、本学が何より美しくて魅力的なのは、より良い教師、より良い教育を目指し、全国さらには海外から様々な経歴を持つ多くの人たちがこのキャンパスに集まってきており、多くの出会いがあるということです。
 高校あるいは大学を卒業してすぐの人、現職教員、社会人、留学生。そして、本学の教職員も、より良い教師、より良い教育を目指す皆さんを支えようと努めており、このキャンパスに集う一員です。例えば、本学の教員は、自信を持って皆さんを教えますが、同時に自らより良い教師、より良い教育を目指し、学び続けようとする謙虚さを持ち合わせています。

 

 本学の教育成果の一つとして、世間でも注目を浴びていることですが、学部卒業生の教員就職率6年連続第1位があげられます。また、大学院修了生の教員就職率も非常に高いとともに、現職教員も修了後リーダー教員として活躍しています。
 しかし、教師になれる、キャリアアップするということは大切ですが、その中身が問われています。つまり、「教師になる」「教師である」ということから、「どのような教師を目指すのか」、皆さん各自が考え、目標を立て、それに近づく努力を是非してもらいたい、と私は願っています。

 

 実は、私としては、皆さんに人間的魅力のある教師を目指してほしいのですが。
 子供、保護者、同僚から、「鳴教大で学んだ教師は何か人間的魅力がある」と言われるようになってほしいのです。
 しかし、人間的な魅力のある教師とは、どのようなことを意味し、どのようにすればなれるのか、難しい問題です。人それぞれの思いや考えがあることでしょう。

 

 魅力ということは、感動ということと深く関係しています。
 魅力ある授業、感動する授業は、そう簡単にできるものではありませんが、それを目標に多くの教師や学生が授業研究に励んでいます。そのように努力する姿こそ、私には魅力を感じます。
 けれども、子供たちを感動させようとする気持ちが強すぎると、かえって子供たちは白けてしまいます。

 

 むしろ、教師自身が子供たちに対して感動する心を持っていてもらいたいのです。
 子供を暖かい目で見ながら、子供の心臓と自分の心臓を重ね合わせるかのように想像していると、自分の心臓がどきどきとしてきて、自分の心が動いてくるのがわかります。それは感動と言うには小さなものですが、まさに感受性や共感ということです。
 そうすると、子供の喜びや楽しみが、我がことのように感じられます。あるいは、子供の戸惑いや悲しみも、我がことのように感じられます。ここに、教師と子供の心の交流が生まれるのです。私には、このような教師こそ、とても魅力を感じます。
 教師は、なんてすばらしい仕事でしょうか。

 

 最後になりましたが、新入生の皆さんが、本学において様々な交流と出会いを経験することによって、人間としてさらに成長していかれることを願っています。私も、皆さんとの出会いを楽しみにしています。
 以上、私の入学式の告示とさせていただきます。

 

 鳴門教育大学への入学、誠におめでとうございます。

 


 

 

2016(平成28)年4月6日

鳴門教育大学長  山下 一夫

 

桜
(桜)
 
アーチ
(左:ワシントンヤシ)
(右:カナリーヤシ)
デイゴ
(アメリカンデイゴ)
本部前
(サツキツツジ)
楠
(楠)