心理臨床コース
コース概要
科学と実践を架橋し,理論と応用を住還する
心理臨床コースは,児童生徒だけでなく,乳幼児から高齢者までのすべてのライフステージの方々が抱える生活上の諸問題について,臨床心理学,心理・教育科学,障害科学の視点からの支援を考えます。本コースには,臨床心理学領域,心理・教育科学領域,障害科学領域という3つの領域があります。それぞれの領域では,専門的知識と実践方法を学ぶことを通して,現代社会における諸課題について様々な側面からアプローチします。2つの領域は,それぞれ入試方法や指導体制が異なります。
「二兎を追って二兎を得る」公認心理師と臨床心理士に必要な実践力の獲得
臨床心理学領域では,カウンセリング・心理療法に関する専門的知識と技術を通して,個人個人の心の問題・課題に対応するとともに,社会の中での一人ひとりの個性豊かな人間的成長を支援する高度な実践的力量を有する心理職(公認心理師・臨床心理士)の養成を行います。また,現職教員で臨床心理学を実践的に学び,教育相談の力量を高めたい方にも適しています。
臨床心理学の専門家は,心理学の知見に基づいた実践活動を行い,実践活動によって生じた課題を科学コミュニティに還元することが必要です。臨床心理学領域では,修士学位論文の執筆を通して心理学的知見を実践現場に供給し,ケースレポートの執筆によって実践活動で課題を明確にするプロセスを学ぶことができます。
不登校もいじめも解決し,ストレスフリーで自尊感情豊かな子どもの育成を目指す
心理・教育科学領域では,ストレス,暴力(いじめ含む),無気力や抑うつ,低い自己肯定感,低い共感性や道徳性など,心理的な問題に「心理学」から迫ります。問題の原因を推測する研究と,学校教育や日常生活上の心理的な問題について予防教育プログラムの開発と実践を行います。
本領域の基盤となる学問は,「心理学」と「教育科学」です。心理学ではゼロから専門性の高みまで教育と研究を発展させます。人のこころの複雑さと興味深さの醍醐味に触れてみませんか。教育科学では,学校教育に科学の息吹を吹き込み,科学的根拠ある教育へと学校教育を変貌させます。誰もが願う教育のあるべき姿を実現させませんか。現職教員等で学校教育力を高めたい方,カウンセラー,学校教員志望の方,資格取得プログラムを利用して教員資格を取りたい方,留学生,博士課程進学希望者に適した領域になります。また希望者は,予防教育の実施支援を行う「予防教育コーディネーター」資格を取得できます。
障害科学領域では,病理・生理を含む基礎研究,心理学,福祉学,教育学,特別な教育的ニーズに係る歴史や国際比較研究などの学際的なアプローチにより,コミュニティにおける「実践力」「研究力」「エンパワメント力」といった専門性を高めています。博士課程に進学された方や帰国して大学教員になられた留学生の方も複数おられます。
※障害科学領域については,組織改編のため令和6年度入試からは募集を行っていません。
担当教員紹介(令和6年4月1日現在)
臨床心理学領域
氏 名 | 今田 雄三 |
---|---|
職 名 | 教授 |
専門分野 | 精神医学,臨床心理学 |
詳細データ | |
研究内容 | 描画療法,コラージュ療法に関する研究など |
授業科目 | 保健医療分野に関する理論と支援の展開(精神医学特論),教育分野に関する理論と支援の展開(教育心理学特論)など |
メッセージ |
専門分野は精神医学および臨床心理学です。特に児童思春期のケースを対象とした描画療法やコラージュ療法など,非言語的な表現を用いた臨床実践および研究に取り組んできました。また,徳島県精神保健福祉協会教育研修委員会委員として,「阿波っ子の心の健康づくり巡回指導」事業の企画運営,ならびに県内の公立学校に出向いての心の健康に関する授業の実践にも取り組んでいます。 |
氏 名 | 小倉 正義 |
---|---|
職 名 | 教授 |
専門分野 | 発達臨床心理学 |
詳細データ | |
研究内容 | 発達障がい児者への心理教育,発達障がい児者やその家族のメンタルヘルスと支援,学校・家庭・地域の連携,思春期・青年期のメンタルヘルスなど |
授業科目 | 心理実践実習,子どものこころへのアプローチなど |
メッセージ |
専門分野は発達臨床心理学で,広く発達障がい児者やその家族への支援の研究,学校・家庭・地域の連携,思春期・青年期のメンタルヘルスなどをテーマとして研究を行っています。2021年4月から発達臨床センターの所長を勤めており,多様性に応えることのできる教育の推進に力を入れています。また,学校現場,子育て支援や福祉の現場,医療機関など様々な現場でそだちの心理臨床に携わっています。 |
氏 名 | 葛西 真記子 |
---|---|
職 名 | 教授 |
専門分野 | 臨床心理学,ジェンダー&セクシュアリティ |
詳細データ | |
研究内容 | ジェンダーやセクシュアリティに関する臨床実践,自己心理学の事例研究 |
授業科目 | 臨床心理学Ⅱ,臨床心理学演習,臨床心理学実習など |
メッセージ |
専門分野は,ジェンダーとセクシュアリティで,臨床心理学の場での支援に関する研究や,実践を行っています。地域の方々との活動(SAG徳島)や,海外の方々との共同研究(欧米やアジア諸国)も行っています。また,精神分析的自己心理学に基づいた臨床を専門におこなっており,臨床心理士,公認心理師以外にも,日本精神分析的自己心理学協会認定心理療法家の資格をもっています。一緒に研究や実践を行えるみなさんをお待ちしています。 |
氏 名 | 久米 禎子 |
---|---|
職 名 | 教授 |
専門分野 | 臨床心理学,深層心理学 |
詳細データ | |
研究内容 | 箱庭療法,遊戯療法,他職種との協働(臨床心理学的地域援助)など |
授業科目 | 臨床心理学研究Ⅰ,心理支援に関する理論と実践など |
メッセージ |
私の現在のおもな研究テーマは,箱庭を使ったグループ体験や,イメージを用いた心理臨床に関するものですが,論文を書くことだけでなく,日々の臨床実践そのものが研究であると考えています。臨床心理学という分野では理論と実践は車の両輪であり,面接室でクライエントと過ごす時間や,それについて考える時間がとても大切です。 |
氏 名 | 吉井 健治 |
---|---|
職 名 | 教授 |
専門分野 | 臨床心理学 |
詳細データ | |
研究内容 | 不登校,スクールカウンセリング,訪問臨床,自己心理学 |
授業科目 | 臨床心理面接研究Ⅰ,心の健康教育に関する理論と実践など |
メッセージ |
専門分野は臨床心理学です。不登校,社交不安,自己愛,スクールカウンセリングに関する研究を行っています。また,ひきこもり傾向の不登校生徒に対する訪問臨床,スクールカウンセラー養成にも力を入れています。心理臨床の実践においては,コフート(Kohut,H.)の自己心理学理論に関心をもっています。 |
氏 名 | 川西 智也 |
---|---|
職 名 | 准教授 |
専門分野 | 老年臨床心理学,地域臨床心理学 |
詳細データ | |
研究内容 | 認知症の人とその家族への心理支援,高齢者の犯罪や「迷惑行為」 |
授業科目 | 福祉分野に関する理論と支援の展開,臨床心理査定演習Ⅱなど |
メッセージ |
小・中学校(スクールカウンセラー)や精神科病院,認知症疾患医療センター等での臨床活動を経て,2018年に本学着任。著書に『コミュニティ臨床への招待』(共著,2012:新曜社),『認知症ケアのための家族支援』(共著,2017:クリエイツかもがわ),『くらしの中の心理臨床5認知症』(共著,2017:福村出版),『公認心理師・臨床心理士のための福祉心理学入門』(共著,2021:北大路書房),『認知症ケアのための心理アセスメントと心理支援』(共編著,2022:金剛出版)など。 |
氏 名 | 坂東 伸泰 |
---|---|
職 名 | 准教授 |
専門分野 | 児童青年精神医学,臨床心理学 |
詳細データ | |
研究内容 | 精神障がいを持つ子や親への育児支援,ペアレントトレーニング,心理学・小児科領域・精神科領域を統合した臨床実践など |
授業科目 | 家族関係・集団・地域社会における心理支援に関する理論と実践,臨床心理面接研究Ⅱ,臨床心理査定演習Ⅰなど |
メッセージ |
臨床現場で長く小児医療や児童青年精神医療に携わってきました。大なり小なり育児がストレスと感じている人が多い中,精神障がいというハンディが子か親(もしくは子と親)にあれば育児の負担はさらに増大する可能性があります。しかし,少しの支援でその状況が大きく改善する場合もあります。好きで障がいを持つ人はいません。常に相手をリスペクトしながら,どういう支援が有効かみなさんと一緒に考えていきましょう。 |
氏 名 | 廣瀬 雄一 |
---|---|
職 名 | 准教授 |
専門分野 | 臨床心理学,教育心理学,ナラティヴ・アプローチ |
詳細データ | |
研究内容 | 心理療法,不登校・ひきこもり支援,復職支援,森田療法など |
授業科目 | 臨床心理査定演習Ⅰ,臨床心理面接演習,福祉分野に関する理論と支援の展開など |
メッセージ |
私はこれまで公認心理師・臨床心理士として精神科クリニックや心理相談室などで臨床実践を重ねてきました。同時に、不登校やひきこもり、精神科リワークでの復職支援、成人に対するカウンセリングなど幅広い領域を対象に、望ましい心理支援、心理療法のあり方について研究を続けています。それは、人々がその苦難から脱し、新しい物語(ナラティヴ)を生きていけるような支援のあり方を探求する試みです。著書として『心の臨床を哲学する』(共著、新曜社)などがあります。 |
氏 名 | 古川 洋和 |
---|---|
職 名 | 准教授 |
専門分野 | 臨床心理学(行動療法,認知行動療法),行動医学 |
詳細データ | |
研究内容 | うつ病・不安症の改善に資する心理学的プロセス変数の特定,認知行動療法の実践家養成 |
授業科目 | 臨床心理学統計法,保健医療分野に関する理論と支援の展開など |
メッセージ |
国家資格である公認心理師の説明責任を果たすためには,科学的根拠に基づく心理実践をユーザーに提供する技能が必要となります。欧米の心理職養成においては,科学者-実践家モデルの理念に基づき,根拠に基づく心理実践(Evidence-Based Practice in Psychology)という発想を持った専門職が心の健康問題の解決に携わっています。科学的知見をどのように臨床実践に落とし込むか,実践現場で遭遇する課題を解決するために科学的コミュニティへどのように貢献すれば良いか,当研究室では実践家と研究者の双方の視点を持つ専門家養成を目指し,科学者-実践家モデルを理念とした教育を提供します。研究成果によってもたらされた知見と臨床実践とのギャップを埋めることのできる実践家・研究者を目指してみませんか? |
心理・教育科学領域
氏 名 | 山崎 勝之 |
---|---|
職 名 | 特命教授 |
専門分野 | 発達健康心理学 |
詳細データ | |
研究内容 | 健康と適応に影響する個人特性(パーソナリティ,感情,行動,認知など)について,因果関係究明ならびに健全化への介入プログラムの開発・効果評価 |
授業科目 | 心の発達・教育創造研究,心理教育科学測定・評価演習,予防教育開発・実施演習など |
メッセージ |
「幸福感に満ちた生活」 ―誰もの願いです! そのためには,心身が健康で,本当にやりたいことに没頭でき,人との温かい交流を保つことが大切です。これらは,心がもたらす大切な働きです。心の働きが問題をもつと,ストレス,暴力,いじめ,無気力,自己肯定感や共感性の低さ,思いやり・道徳性の低さが生まれ,生きづらくなります。これが,現代の子どもと大人の実態です。 |
氏 名 | 内田 香奈子 |
---|---|
職 名 | 准教授 |
専門分野 | 教育心理学,学校心理学 |
詳細データ | |
研究内容 | 感情教育,ストレス・コーピング,予防教育プログラムの開発と効果検証など |
授業科目 | 心理教育科学研究,予防教育開発・実施演習,心理教育科学演習など |
メッセージ |
心の教育にかかわる様々なテーマについて,心理学の側面からアプローチを試みる研究室です。普段の生活の中で,自分にとって困惑する出来事が起こったとき,「立ち向かおうとする力」を身につけるためにはどうすれば良いのか。問題が起こってからの事後対応ではなく,予防的にアプローチ出来ることはないのか。高等教育や生涯教育も含んだ「教育」という枠組みの中で,私たちに出来ることは何か。一緒に考えることが出来ればと思います。 |
氏 名 | 内山 有美 |
---|---|
職 名 | 准教授 |
専門分野 | 発達心理学,教育心理学 |
詳細データ | |
研究内容 | 向社会性や適応的な対人行動における,育成・獲得プログラムの開発と効果検証 |
授業科目 | 心理・教育科学測定・評価演習,心の発達・教育創造研究,心理教育科学演習など |
メッセージ |
-編集中- |
障害科学領域(組織改編のため令和6年度入試からは募集を行いません。)
氏 名 | 髙橋 眞琴 |
---|---|
職 名 | 教授 |
専門分野 | 障害心理学,質的心理学 |
詳細データ | |
研究内容 | 社会と環境との相互作用によって生じるディスアビリティと人間発達に関する研究 |
授業科目 | 臨床人間関係,障害臨床学特論,障害心理学研究法,コミュニティ障害共生支援演習 |
メッセージ |
社会と環境との相互作用によって生じるディスアビリティと人間発達に関する研究を行っています。大学院(博士課程前期課程・後期課程)時代には,社会構成主義的視点から当事者参加型研究,ナラティブアプローチ,ライフヒストリー研究関連のプロジェクトに参加してきました。本学着任後は,複数分野の研究者の方々と学習や行動に関連する共同研究も行っています。また,海外での調査研究に基づいて,最近は,多感覚環境での発達支援やリラクセーションに関する研究も進めており,実際に携帯用器材や多感覚環境を体験いただく参加型の研究も行っており,ご要望や特性に応じた環境や器材のご提案も行っております。 |
氏 名 | 田中 淳一 |
---|---|
職 名 | 名誉教授 特定研究員 |
専門分野 | 神経科学,行動神経科学 |
詳細データ | |
研究内容 | 行動を司どる神経機構とその可塑性に関する研究 |
授業科目 | 生理心理学,障害臨床学特論,障害心理学研究法,コミュニティ障害共生支援演習 |
メッセージ |
大学から現在に至るまで,基礎研究を続けています。博士課程を修了後,米国の大学のBrain Research Institute 及び心理学教室で研究し,帰国から現在まで,主として生理学の教育研究を30年以上行なっています。特に,学習記憶の神経基盤,脳神経の可塑性,体液量の維持機構などです。脳科学の知見を活用した自閉症のある学齢期の子どもの支援の研究も行いました。基礎研究,心理学,実践が融合された米国や英国のエビデンスを基本とする発達支援プログラムへの参加やアニマルセラピーを通して障害のある方の生涯学習支援への貢献を目指しています。 |