日本での「ささやかな」幸せ

グローバル教育コース

日本語教育·日本文化分野1年生

李 妍琳  リ ケンリン(中国)

 

 皆さんこんにちは。私はリ ケンリンと申します。中国の河南省の出身で、2018年に日本に来ました。徳島に来る前は、一年半、東京に住んでいました。小さい頃に日本のアニメを見て、中学生、高校生になった時、日本のドラマとバラエティー番組が好きになりました。そして、やっと、ずっと憧れていた日本に来ました。日本に来る前は、インターネットで日本に関する情報をたくさん調べたのですが、そこでこんな投稿を読みました。「日本人はすごく真面目で、ちょっと冷たいですよ。だから日本人の友達は作りにくいです。また、日本社会には守らなければならないマナーがたくさんあるんですよ。」その時は、ずっと憧れていた日本に少し不安を抱きました。

 日本に来て最初のころは色んな困難に出会いましたが、日本人の皆さんの助けを借りて、その困難一つずつを乗り越えていきました。たとえば、私は財布を落としたことがあるのですが、そのときは日本人の方が財布を拾って、私を追いかけて渡してくれました。また、ある朝、試験を受けるため、バスに乗らなければならなかったのですが、私はバス停がどこにあるのか全然わからず困っていました。すると、電車に乗ろうとしていた日本人の方が、私の行きたい場所を聞いてバス停まで連れて行ってくれました。アルバイトでは、店長さんも店員さんもみんな優しくて、日本社会の基本的なビジネスマナー、たとえば、仕事が始まる前にはお互いに「おはようございます」と言い合うこと、また、誰かに呼ばれたらすぐに「はい」と返事することなどを教えてくれました。また、休みの時は、みんなと一緒に食事をしたり、ショッピングをしたり、花見に行ったりしました。

 日本にいる時間と、日本人と付き合う時間が長くなるにつれて、日本と中国の異なるところもどんどん感じられるようになりました。その中で私が一番強く感じるのは、日本人は、日常生活では、他人を邪魔しないように静かに自分のことをやっている、ということです。そういうちょっと距離感がある社会環境は、静かな環境が好きな私にとって、ありがたいことです。

 日本では、どこに行っても「こんにちは」「ありがとう」「すみません」などの挨拶言葉をよく聞きます。食事をしたあとの「ごちそうさまでした」、仕事が終わったあとの「お疲れ様です」など、外から見ると、面倒で細かなマナーと思う人がいるかもしれませんが、こういういつも相手の気持ちに配慮することは、私に、毎日ささやかな幸せを与えてくれています。

 徳島に来たあと、大学の先生方からはいつも手厚い配慮と援助をいただいています。一緒に寮に住んでいる日本人の友達は、私によくお土産を持ってきてくれます。神戸のクッキー、紅茶、お菓子、また家族が作ったケーキなど、たくさんもらいました。また、こんなこともありました。家から近い業務スーパーで買い物をしていたときのことです。私は、柿を買いたかったのですが、どのような柿がいいか分からず迷っていました。その時、隣にいたおばあちゃんが、わざわざ私のためにいい柿を選んでくれたのです。

 実は、日本に来る前は、興奮と期待より、恐怖のほうがもっと大きかったです。でも、今では、恐怖は全然残っておらず、日本社会からもらう温かさを心ゆくまで味わっています。毎回、日本社会の温かさに出会う時、頭にこういう歌詞が浮かんできます。「君と出会えた幸せ祈るようにーー(風になる)」

 これで私のスピーチは終わりです。ご清聴ありがとうございました。

最終更新日:2020年8月12日