後藤家文書について

 
後藤家文書
旧阿波国名東郡早渕村(現徳島市国府町早渕)の後藤家は,19世紀中に組頭庄屋を勤めた旧家です。後藤家が所蔵していた本文書群は, 支配,年貢,諸役,用水,土地,社会・身分関係文書一式で構成されており, 江戸時代(近世)後半における徳島藩領の地域社会を知る上で,貴重な古文書です。
[所在場所] 貴重資料室
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旧阿波国名東郡早渕村(現徳島市国府町早渕)の後藤家は、19世紀中に組頭庄屋を勤めた旧家である。かつて日本近世史研究の先駆者の一人、戸谷敏之氏が、近世日本の農業経営を類型化するにあたり、「摂津型」経営に対して「阿波型」経営なる範疇を設定したが、その際の論証として、この後藤家文書の経営史料が駆使されたことは、つとに有名である。以来、後藤家文書は多くの研究者の注目するところとなり、これまでにも農業史・村落史研究を中心に活用されてきた。
1987年に鳴門教育大学が、後藤家文書の大半にあたる古文書1万7000点余を購入し、その後、本学の高橋啓教授が中心となって整理が進められた。また,2020年には県内の篤志家が収集していた古文書2800点余が寄贈され,現在1万9800点余の古文書が鳴門教育大学附属図書館に収蔵されている。
後藤家文書には、組頭庄屋関係史料を中心に、後藤家の経営史料をはじめ、村落史・農政史・藩制史・商業史・文化史など多様な分野に関する内容が含まれる。例えば、阿波を代表する商品作物・藍の流通関係文書や、水利関係文書、あるいは四国八十八ヶ所巡礼の道沿いである早渕村周辺の四国遍路に関する文書などを見ることができる。また、名東県新聞など、他に見られない貴重な記録も多い。
なお、同じ後藤家に関わる記録としては、故後藤捷一氏(1892~1980年)のコレクション『凌霄文庫』(四国大学附属図書館所蔵)が知られている。典籍類が中心の『凌霄文庫』に対して、本学所蔵の後藤家文書は、文書・新聞・絵図が主体である。


参考文献
戸谷敏之『近世農業経営史論』日本評論社、1949年
高橋 啓『近世藩領社会の展開』渓水社、2000年