コンケン大学(タイ王国・コンケン)留学報告
- 派遣大学:コンケン大学(タイ王国・コンケン)
- 留学期間:2010年9月~2011年2月(6か月)
- 在籍区分:大学院
私の体験談
コンケン大学で
英語科では3教科を受講しました。1クラス3単位で合計9単位となり,大学院ではフルタイマーとなり,これはアメリカのシステムと同じでした。すべてのクラスに同じクラスメイトがいつも一緒に受講していましたので,すぐに仲良くなりました。クラスメイトも常に英語で話し,タイ人の先生方も授業はすべて英語で行っていました。これは正直タイ語ですべて話されると「やばい」と思っていたので,最高でしたし,当初はとても助かりました。正しい発音で正しい文法で話さないと恥ずかしいということはなく,自分の意見を伝えようとする姿勢が皆にありました。もちろんタイ語がたまに使われる時もありましたが,私が理解できない時は学生か先生か誰かが必ずといっていい程英語で説明してくれましたから,そのまま流されたり無視されたりはしませんでしたので,少しもマイノリティが経験する心細い気持ちになることはありませんでした。タイは「Land of Smiles」と良く聞いていましたが,気遣いとリラックスの調和がとれたまさにぴったりなフレーズだと感じています。タイ全体では確かにリラックスしている感覚がありますが,この英語科での学生に対する期待度は非常に高く,英語で勉強することに対する各自の目標や情熱に驚かされました。
一緒に受講していたクラスメイトの中にはネパールから来たお坊さんもいましたし,授業が始まる前に必ずエナジー補給のためクルクル踊っている人もいました。朝からの授業でも楽しさ満点でしたね。

あるお寺にて・・・
日本語科にもおじゃまし,日本語実習をさせてもらいました。やはりここでも文化背景を理解することがとても大切でした。例えば学生は先生を「Ajarn ~」と呼び,その人は絶対的な知識を持っている者であり,そのような先生には,「教えてもらう」というスタンスがありました。それにより学生は先生や目上の人に対し,高い敬意を表す一方,「チャレンジ」することは避ける傾向にあったので,質問等が無いからといって,学習者が皆理解しているという前提は間違っているのであると学びました。さらに日本語で授業を進める「直接法」には,良い面もあり悪い面もあるということを体験できたことは良かったです。
寺院で会った子どもと
普段の生活で
ここからは私の体験したカルチャー・ショック的な例を挙げましょう。大学から10分ほど離れたアパートに住んでいましたが,ベランダの外を見るとよく象が歩いていました。パオーンと鳴くのですぐに気づきます。初めはびっくりしましたが,すぐ慣れました。もちろんただ歩いているのではなく,ビジネスとして起用されているのです(本当は違法なのですが,警察も無視でした)。いろいろな所へ連れてまわり,食べ物を買って与えるといったものです。タイでは屋台がほとんどなので,食事中など象を連れてでっかいのが入ってきます。一度食べ物を買い,与えましたが,やはり見るからに普通の象でしたが,訓練を受けた頭の賢い象でした。そして象だけが入ってくるのではなく,小さな子ども(幼稚園児か小学生低学年ぐらい),特に女の子が,夕方から夜にかけて,こちらが食事をしていると近くまで来て,「これを買ってください」と言ってくるのです。その2メートル先には母親らしき人がこちらを見てニコニコしています。可哀想に思い,買ってあげたこともあります(日本円にすると何十円くらいのもので,売り物は食べ物や作り物などさまざまでした)。後に他の人から話を聞くと,その女の子は上手く言葉をはなせなかった(もしくはそのように演じていた)ようです。そしてこの母親のような人は実は親ではない可能性が高かったそうです。タイではもう何年も前から社会問題となっていることで,小さな子どもを利用してビジネスをしている人がたくさんいるようです。中にはある程度その日に売り上げを伸ばせなかった場合,その日のご飯を食べさせないなど,ニュースにもなっている位です。小さな村からこのような形で町に出てお金をもらうという行為はバンコクなど大きな町では当たり前に見ることができる光景だそうで,驚きました。複雑な心境と過酷な経験を小さな子どもが経験しないといけないとは正直ショックでした。これも象の例と同じく,買う人がいるので,無くならないサイクルというわけです。

コンケン大学卒業式の様子
もう一つだけ挙げましょう。私が住んでいたアパートの前にはゴミ捨て場(ドラム缶)がありました。事前に仕分けする必要はなかったのですが,だいたい毎10~15分おきぐらいにゴミ箱をあさるいろいろな人がいましたから,彼らがある意味仕分けしているような感じでした。取っていくものは主にペットボトルや紙などで,集めて売るそうです。別に気にしていなかったのですが,ある日ばったりあさられている時に自分のゴミを捨てなくてはいけなく,どうなるのかドキドキしました。ドラム缶へ歩き近づいてもその人はそこを去ったり目をそらしたりもしませんでした。そしてゴミを捨てた瞬間,私がまだそこにいるのに私のゴミを目の前で開け,中のペットボトル等を取りました。笑うしかありませんでしたが,となりのアパートのセキュリティさんも夜私のアパート前のドラム缶をあさり,いろいろ取っていたので,リサイクルがこんな形で行われていることには驚くだけでした。
クラスメイト@TESOL_Conference
公立高校で
コンケン内にあるムアン・コンピタヤーコム公立学校へ,鳴門教育大学の修士論文の一部であるデータ収集のため2ヶ月ほど通い,授業を展開させてもらいました。過去ハワイに住んでいた時に学んだフラを伝え,それを英語を手段として学ぶ際の異文化理解度や言語習得の効率性をインタビューを通し調査することができました。調査中観察できたこととして,タイの生徒は授業内容が「少し難しい」と感じると即投げ出してしまう者も多い一方,「面白い」と思う授業に関しては非常に活発となる傾向があり,真面目な内容であっても楽しく教えることがタイでは強く求められると感じました。
フラを習うタイの生徒たち
最後に
自分では結構柔軟性はあると思っていましたが,タイではすぐに対応できない場面も多数ありました。「うわっ衝撃的だなぁ」というただただショックなこともあり,分かり合えた時のあの何とも言えない感動もあり,この2面を体で味わえることが,留学の醍醐味であり,それにより環境適応能力が伸びるのであると信じています。更に「なぜタイで英語?」という質問に対して,私は胸を張って言えます。例えば私の通った英語科にいると「使える英語」が身に付きますし,同時にタイ語も学べ,異文化も吸収できます。「メジャーな国でないと・・・」という固定観念は崩れる時代になってきていると強く思います。
ある一日のスケジュール
時間 | 内容 |
---|---|
7:00 | 起床等 |
9:00-12:00 | 午前の授業 |
12:00-13:00 | 大学のカフェテリアでランチ |
13:00-16:00 | 午後の授業 |
18:00- | 夕食 |
19:00-22:00 | 勉強 |
24:00 | 就寝 |
留学にかかった費用
渡航費(往復)
13,5000円(ビザ代行料金2万円を含む)
生活費(1か月あたり)
計 27,000バース(単位:バース、為替:1バース=約3円 ※H22現在)
- 宿舎費(家賃):5000バース
- 光熱費:2000バース
- 食費:13,000バース
- 教材費:1000バース
- その他:個人的雑費、交通費等
先輩の声!
留学前に関すること
- 留学の動機・目的は?
- タイの高校を訪問し,論文のためのデータを持ち帰ること。英語科の授業を受け,EFL(English as a Foreign Language)をどのようにして学んでいるかを体験すること。タイの文化・タイ語を学ぶこと,など。
- いつ頃留学を決意しましたか?
- 鳴教でさまざまな国から来た留学生と交流を深め始めてからなので,大学に入学して一年目ぐらいだったと思います。
- 留学する大学を決めた理由は?
- タイからの留学生たちの出身校であったことと,当大学の姉妹校であったからです。
- 留学前の語学スキルアップの方法は?
- タイから来た留学生と会話をしたり,参考書やオンラインから学べました。
- 留学前の履修や教育実習のことなどに関してアドバイスがあればお願いします。
- どの授業を取るのか,に頼るのではなく,どのようにして扱われている内容が,国際関係と結びつくのかを考えたほうがいいと思います。
- 留学時に必要とされた予防接種の種類・回数・費用はどうでしたか?
- A型肝炎,B型肝炎,破傷風,日本脳炎などを受けました。同じ接種も数回受ける必要があるものもありました。狂犬病については接種をしていても,噛まれた際にまた受けなければならないので,しませんでした。
- 日本から持参するとよいと思われるものは?
- ノートパソコンは必要でした。あと日本の目薬はタイにはなかったので,持っていったほうがいいです。
- その他,日本を出発する前にしておいたらいいことに関してアドバイスがあればお願いします。
- いろいろと済ませなくてはならない手続きなどがあるでしょうが,当大学にある国際交流チームに相談し,助言をもらっておくことはとても大切です。あとは健康管理に気をつけましょう。
留学中に関すること
- 留学先で履修した科目とその履修方法は?1週間の平均授業時間数は?
勉強についてのアドバイスがあれば一緒に記入してください。 - 履修は現地で行いました。タイにも国際交流チームの部署がありますので,仲良くなりましょう。現地の言葉が話せることが何よりいいのですが,担当の方がたは英語を話せたので,英語で会話ができるようにしておくこともいろいろな場で役立つでしょう。私は担当の方に相談し,履修していきました。まず学生証を作ったりなど,向こうのやり方があるので,それを知る必要があります。タイでは1教科・週3時間で3単位となり,大学院では合計3教科履修しました。こちらが選ぶというのではなく,そのセメスターに履修できる教科がこの3教科でした。クラスメイトとすすんで仲良くなることが一番大切です。
- コンピュータ・インターネットの使用環境はどうでしたか?
- 住んでいたアパートにはインターネット(ランドライン)がありましたが,たまに接続不可になることもありました。ワイアレスは弱いかんじでした。大学内ではワイアレスを使えましたが,なんせ敷地が広く,高い建物もあったので,繋がらないこともありました。
- 留学中,どのようにして現地の学生と交流を深めましたか?
- 海外から来たということだけで,興味を持ってくれましたので,スムーズに溶け込むことができました。とにかく分かり合えるように努力し,すすんで話すことです。
- 寮・下宿など住居についてどうでしたか?
- 住んでいたアパートは比較的きれいでした。タイでは毎日屋台で食事をするため,部屋にキッチン等はありませんでした。トイレとシャワー室は同じところにあります。トイレットペーパーは自分で購入しましょう。
- 食生活についてアドバイスがあればお願いします。
- タイの屋台では普段安く食事をとれますが,野菜が少ないという印象もありましたので,いろんな場所にいっていろいろと頼んでみましょう。
- 服装についてアドバイスがあればお願いします。
- みなTシャツ,半ズボン,サンダルをはいていますので,服装にお金はそんなにかかりません。
- 習慣の違い,マナー,対人関係,犯罪などのトラブルで注意すべきことは?
- タイ語を理解できない間は苦労しますし,もちろんいろいろな面で違うということはありました。日本での常識が通用しないことはもちろんです。ここでは書けないほどたくさんの違いはあります。しかしだからこそ理解できたときの喜びは大きいのです。犯罪に巻き込まれないように,夜中の一人歩きなどあたりまえなことはしないようにしましょう。
留学を終えて
- 今後の目標,将来の夢は何ですか?
- 教育現場などで文化と文化をつなぐ「架け橋」に必要なスキルをもっと磨きたいと思います。
- これから留学を希望する学生へアドバイスをお願いします!
- なるべく長期間留学することをすすめます。なぜならカルチャーショックを緩和し,自分の中に取り入れられるようになるのは,人にもよりますが,それらのショックを受けたずっと後だからです。でないと,せっかくの経験も上辺だけということになるでしょう。
最終更新日:2016年12月14日