【プレスリリース】生活史進化の定説を覆す:ツノカメムシ科のメス親による子の保護は「小さな卵を一度に数多く産む」条件下で進化した
2024年5月15日
鳴門教育大学の工藤慎一准教授らの研究チームは、昆虫綱半翅目ツノカメムシ科の多数の種を比較した研究によって「メス親による子の保護の進化が、小さな卵を一度に数多く産む性質と関連する」ことを明らかにしました。
この結果は、「子育ての手厚い生物ほど、大きな子(卵)を少数産む」という生活史の進化に関する従来の定説を覆すものです。
本研究成果は、2024(令和6)年5月10日に生態学・進化学・行動学の国際誌「The American Naturalist」のオンライン版(Ahead of Print)で発表されました。
論文
Maternal care under large clutches with small eggs: The evolution of life history traits in shield bugs
著者
Shin-ichi Kudo, Tomohiro Harano, Jing-Fu Tsai, Kazunori Yoshizawa,Nobuyuki Kutsukake
工藤慎一(鳴門教育大学:責任著者)・原野智広(愛知学院大学・総合研究大学院大学)・蔡經甫(國立科學博物館(台湾)・北海道大学)・吉澤和徳(北海道大学)・沓掛展之(総合研究大学院大学)
研究のポイント
- 遺伝子配列を用いてツノカメムシ科種間の系統(樹形で表現した進化の道筋)を推定し、「メス親による子の保護」の起源を検討した結果、この系統の中で「卵を産んだ後、全く保護しない」状態から「子の保護」が繰り返し進化したことが示された。
- 「子の保護」の進化は、「小さな卵」や「多数の卵を含む卵塊」などの形質とセットになることが判明した。
- さらに、「少数の卵を含む卵塊」から「より小さな卵を多数含む卵塊」に変化した後に「子の保護」が進化したと推定された。
- 「生涯一回繁殖」と「子への高い捕食圧」が、「メス親による子の保護」と「子の保護・小さな卵・多数の卵を含む卵塊」の形質セットの進化を促した可能性が指摘された。