プレスリリース 科学誌「米国アカデミー紀要(PNAS)」への研究成果の掲載について

2015年3月24日

 

 

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)新学術領域研究「古代アメリカ文明の高精度編年体系の確立と環境史復元」(課題番号:26101002,研究代表者:米延仁志,本学准教授)の研究成果がProceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)に掲載されました。

 

成果の概要:マヤ文明の定住生活の進化

マヤ低地で先土器時代(前1000年以前)に居住地の移動を繰り返していた狩猟採集民の集団が、定住共同体を確立するというプロセスにおいて、グアテマラのセイバル遺跡では居住の定住性と移動の度合いが異なる多様な集団が集って前1000年頃から公共祭祀建築や公共広場を建設し、公共祭祀を執り行った。従来の研究よりも精密な本研究の編年体系の確立によって、マヤ低地のセイバルの共同体は、前1000年頃に確立されたが、セイバルの大部分の住民は、前700年頃まで地面の上に柱を立てた非恒久的な住居に住み、居住地を移動し続けた。前700年頃には、支配層は石造の基壇を有する恒久性の高い大きな住居に居住した。恒久性の高い住居を同じ場所に増改築して、住居の床下に死者を埋葬する習慣は、前500年頃までに一部の住民の間で取り入れられ、前300年頃までにセイバルの住民の間で一般的になった。先古典期中期(前1000年~前350年)の公共祭祀建築は、マヤ低地の一部の重要な共同体だけで建設された。このことは、重要な共同体に,定住性の度合いが異なる様々な集団が集って、公共祭祀を執り行ったことを示唆する。

本研究により,多様な集団が共同体の公共祭祀を行い,またそのために公共広場を建設・増改築するといった共同労働を通して社会的な結束やアイデンティティーを固め,マヤ文明の定住共同体が発展していったことを明らかとなった。世界の様々な地域の考古学調査によれば、定住という新たな生活様式は全ての社会集団の間で必ずしも同時に起こらなかった。本研究は文明が形成されるための重要なプロセスを実証的に提示したものである。

 

 

 

掲    載    誌 : Proceedings of the National Academy of National Academy of Sciences

                        (PNAS)(米国科学アカデミー紀要)

 

論文タイトル : Development of sedentary communities in the Maya lowlands: Coexisting

                       mobile groups and public ceremonies at Ceibal, Guatemala

                      (マヤ低地における定住共同体の発展:グアテマラ共和国セイバル遺跡で

                       共存した定住・非定住集団と公共祭祀)

 

著           者 : Takeshi Inomata, Jessica MacLellan, Daniela Triadan, Jessica Munson, Melissa Burham,

                       Kazuo Aoyama, Hiroo Nasu, Flory Pinzón, and Hitoshi Yonenobu

 

D      O      I : www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.1501212112

 

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