【プレスリリース】後脚を失ったミツボシツチカメムシのメス親は栄養卵を増やして給餌能力の低下を補償する

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 昆虫綱半翅目ミツボシツチカメムシのメス親は,地面に営巣・産卵し,幼虫に対し寄主植物の種子を随時給餌する等の複雑な子育てを行います。卵保護中のメス親は,未受精の特殊な卵である栄養卵を生産し孵化した幼虫の最初の餌とします。
 鳴門教育大学の工藤慎一准教授らの研究チームは,産卵前に後脚を失った本種のメス親が栄養卵生産を増やすことによって,後脚を失うことで低下する種子給餌能力を補うことを実験的に明らかにしました。
 一般に「捕食リスクは繁殖時に高まる」とされており,実際,産卵前の本種のメスも野外で体の一部をしばしば欠損しています。しかし,怪我によって子育てに支障が出たメス親の適応的な行動変化を示す研究例は,これまでほとんどありませんでした。
 本研究成果は,2026(令和8)年5月27日に英国王立協会の発行する生物学の国際誌「Biology Letters」のオンライン版で発表されました。

論文

Injured mother bugs compensate for reduced provisioning ability by increasing trophic egg production

著者

Hiromi Mukai, Mantaro Hironaka, Narumi Baba, Shin-ichi Kudo
向井裕美(鹿児島大・森林総研)・弘中満太郎(浜松医科大・石川県立大)・馬場成実(九州大)・工藤 慎一(鳴門教育大:責任著者)

研究のポイント

  • ミツボシツチカメムシは,オドリコソウ属の種子(蒴果)を餌としてして繁殖・子育てを行う。
    地面に営巣したメス親は,卵保護中に未受精の栄養卵を生産し,孵化直後の幼虫はこれを食べる。
    その後,メス親は種子を外から随時巣に運び込み幼虫に与える給餌を行う。
  • 産卵前のメスは,野外でしばしば体の一部を欠損している。
    そこで,産卵前のメスを用いて,後脚あるいは前翅を切除する実験区と,麻酔のみ行った対照区を設定して,種子の運搬速度および受精卵と栄養卵の生産を比較した。
  • 後脚を切除した実験区では,前翅を切除した実験区や対照区に比べてメス親の種子運搬速度が大きく低下した。これは後脚の欠損によって種子給餌能力が低下したことを示す。
  • 後脚あるいは前翅を切除した実験区では受精卵の生産数が対照区よりも低下した。
    一方,後脚を切除した実験区でのみ栄養卵の生産数が大きく増加した。
    その結果,後脚を切除した実験区では,孵化幼虫当たり利用可能な栄養卵数が大きく増加した。
  • これら結果は,後脚の欠損によって種子運搬能力の低下したメス親が,栄養卵の生産を高めて種子給餌の低下を補償することを示している。

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