鳴門教育大学の田川一希准教授,愛知教育大学の渡邊幹男特別教授らの研究グループは,タイ南東部において食虫植物Drosera indica L.の新しいタイプを発見しました。このタイプは粘液を分泌する毛(粘毛)が赤く,株が非常に小さいことを特徴としています。研究グループはこのタイプが雨季と乾季の明瞭な季節性をもつタイの環境,特に乾季の厳しい乾燥・高温条件に適応して分化した可能性に着目しました。栽培実験の結果,赤い粘毛をもつ小型のタイプは,世界的に広く分布する白い粘毛をもつ大型のタイプに比べて,乾燥・高温条件下で高い生存率を示すことが明らかになりました。また,野外における分布や発芽・開花時期の違いもこのタイプが乾燥・高温条件に適応している可能性を示唆しています。
本研究は,食虫植物の多様化が餌となる昆虫の捕獲だけでなく,気象条件など非生物的環境とも深く関係していることを示しています。このプロジェクトは,日本とタイの研究者5名による4年間の国際共同研究により実施され,2026(令和8)年8月5日に,英国ロンドン・リンネ協会が発行する進化生物学の国際誌Biological Journal of the Linnean Societyで発表されました。
論文
Ecological divergence in a carnivorous plant, Drosera indica L. (Droseraceae): discovery of a red-tentacled dwarf form adapted to drought stress
著者
田川 一希(鳴門教育大:責任著者)・渡邊 碧以・Ekgachai Jeratthitikul(タイ・マヒドン大)・山東 智紀・渡邊 幹男(愛知教育大)
研究のポイント
- タイ南東部で,形態学的特徴が明瞭に異なる食虫植物Drosera indica L.の2つのタイプ(赤粘毛タイプ,白粘毛タイプ)が同所的に自生することを発見しました。
- 赤粘毛タイプは土壌水分量の少ない場所に多く自生し,乾燥・高温条件下での栽培実験で白粘毛タイプと比較して高い生存率を示しました。また,赤粘毛タイプは乾季にいち早く発芽・成長し開花する季節性を有していました。これらのことから,赤粘毛タイプは乾燥・高温条件への適応として分化した可能性があります。
- 食虫植物の形態の多様化は,これまで主に餌の捕獲との関係から説明されてきた。本研究は気象条件などの非生物的要因も,食虫植物の多様化に影響する重要な要因であることを示しています。