鳴門生徒指導研究第19号(2009)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 19,2009,August,ISSN 0917-5180

ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第19号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワードを各論文毎に掲載します。


1.日本語のタイトルと著者名
(1)
保育現場・家庭における臨床心理学的課題と要望に関する基礎調査-相談・支援機能の現状と保育カウンセラーの可能性−立本 千寿子

(2)ピアサポートを活用した効果的な禁煙支援に関する研究 角田 智恵美・長間 えり
(3)日本における多文化間メンタルヘルス支援活動の実施 竹山 典子・葛西 真記子
(4)『よい子』に関する研究 -インタビュー調査にみるその変遷- 早田 希里子・葛西 真記子
(5)青年にとっての第二反抗期と親子関係に関する調査 -質問紙調査と面接調査を通して -  野田 歩・葛西 真記子
(6)カウンセリングを学んだ教師の意識について 広瀬 毅・小坂 浩嗣
(7)青年期の友人関係における同調行動に関する研究 松本 麻里・葛西 真記子
(8)2008年の世界の不登校研究の概観−PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から佐藤 正道

2.各論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワード
 

(1)保育現場における臨床心理学的課題と要望に関する基礎調査-相談・支援機能の現状と保育カウンセラーの可能性−

立本 千寿子

Basic Investigations Concerning Problem of Clinical Psychology and Demand in Nurseries - State about Consultation ・Support's Function and Possibilities of Child-care -
TATEMOTO, Chizuko

要約
  現代の乳幼児を取り巻く現状には,様々な課題が存在している。保育現場は,日々そのような課題を最も身近に感じ,その解決の為に支援しているところであると言える。
 本研究では,そのような保育現場の抱える臨床心理学的課題や要望を質問紙調査によって明らかにし,相談・支援機能の現状と保育カウンセラーの可能性を明らかにした。
 その結果,保育現場において,本来の支援の他にそれ以上の支援が必要である子どもや保護者が大勢おり,対応の難しさを持つ子どもや保護者も同様であった。それ故に,臨床心理士を活用したいと願う保育現場が多く存在するという切実な結果から,保育カウンセラーによる対応の可能性は大きいことが明らかになった。
 また,現在保育カウンセラーがいる園といない園,それぞれの現状を明らかにした上で,保育カウンセラーに求められている事柄や可能性を明らかにした。

キーワード:保育現場,臨床心理学的課題,相談・支援機能,保育カウンセラー
p2-p13(トップへ戻る)

(2)ピアサポートを活用した効果的な禁煙支援に関する研究

角田 智恵美・長間 えり

A Study about effective non-smoking support with peer support
TSUNODA,Chiemi & NAGAMA,Eri

要 約
 本研究で,ピアサポートを活用した禁煙支援の実施を通じ,重要性が叫ばれながらも,現状では十分な成果を上げているとは言い難い若者への禁煙支援を行う際の有効な方法や視点について検討することを目的とした。支援者とはピア関係にある大学生3名に対し,個別面談を中心とした支援を行った。効果的な支援のためには,ニコチン依存度や喫煙ステージなどが低い早期の内の支援が重要であると考えられた。また,特に若者への支援に際しては,以下のような支援方法や視点が有効であることが示唆された。認知行動療法の特徴に見られるような支援者と禁煙の実行者の協働関係,ピア関係を生かした支援,支援者が健康教育やカウンセリング等について研修を積み一定の知識とスキルを習得しておくこと,「禁煙したらどのような良い面があるのか」というポジティブな具体的イメージによる動機付けを行うこと,経済的負担のない,身近な場所での支援等である。

キーワード:禁煙支援,ピアサポート,若者
p14-p27(トップへ戻る)

(3)日本における多文化間メンタルヘルス支援活動の実施

竹山 典子・葛西 真記子

A study of multicultural mental health support in Japan

TAKEYAMA,Noriko & KASAI,Makiko

要 約
 1990年の「出入国管理および難民認定法」の改正施行以降,在日外国人の数は急増した。これは,彼らのメンタルヘルスへの支援ニーズの増加も意味する。しかしながら,日本人には多文化共生社会という発想が欠如しがちで,在日外国人には心理的支援の手が届きにくいと考えられる。本研究では,医療従事者と国立大学法人の留学生相談機関を対象に,多文化間メンタルヘルス支援活動の実施について調査した。結果,日本では多文化間メンタルヘルスケアが可能な医療機関が限られていること,また,留学生相談機関では,心理専門職より日本語教育等のメンタルヘルスケア関連以外の教職員が,留学生の相談業務に関わる機会が多いことが明らかになった。また,学齢期の子どもの心理的援助活動に専門的に携わる医療機関がほとんどないことも窺えた。以上から,日本では異なる文化的背景を持つ人々が,心理専門職の支援対象者として広く認識されていないことが明らかになった。

キーワード:多文化間メンタルヘルス,在日外国人,留学生,医療従事者,心理的援助活動
p28-p40(トップへ戻る)

(4)『よい子』に関する研究 -インタビュー調査にみるその変遷-

早田 希里子・葛西 真記子

A Study on 『Good Child』 -Changes found by interview-investigation -
SOUDA,Kiriko & KASAI,Makiko

要 約
 近年,『よい子』の潜在する問題性が指摘され始め,問題の顕在化に至る背景に,自己の確立との関係性が示唆される事例が報告されている。そこで本研究では,青年期後期の者を対象とし,中学生の頃からの『よい子』状況の変遷の経過やそれをもたらした要因について,個人内比較によって検討することを目的とした。その結果,『よい子』からの変遷の過程には,ありのままの自分を認めてくれる他者の受容や支持による支え,自ら体験的に多様な価値観に触れ,その上で主体的に検討していくという作業の重要性が示唆された。また,『よい子』的な特性を継続させていても,危機,動揺,迷いの経験を経て『よい子』としての自分を確立してきた者の存在が示された。

キーワード:よい子,自己の確立
p41-p53(トップへ戻る)

(5)青年にとっての第二反抗期と親子関係に関する調査 -質問紙調査と面接調査を通して -

野田 歩・葛西 真記子

Research on the Meaning of the Second Rebellion Period for Adolescents and the Parent-Child Relationship -Through questionnares and survey interviews -
NODA,Ayumi & KASAI,Makiko
要 約
 現在の青年が考える第二反抗期とはどのような意義を含んでいるのか,そして第二反抗期がなかった場合は,その要因と第二反抗期に代わる親からの自立や自我の芽生えの過程があるのかについて検討した。質問紙調査の結果,第二反抗期の〈有り〉,〈無し〉,〈分からない〉の基準として,(1)自分というものがはっきりしていなかったこと,(2)お互いに尊重する関係を親子の間で築けていたこと,が要因としてあげられた。また,第二反抗期無し群や分からない群では,一人暮らしをすることが自分を形成することに繋がっており,その後親とぶつかったり気持ちを伝えていったりする可能性が示唆された。
キーワード:第二反抗期,親子関係,青年
p54-p66(トップへ戻る)


(6)カウンセリングを学んだ教師の意識について

広瀬 毅・小坂 浩嗣

Attitudes of Teachers who Learned Counseling
HIROSE, Takeshi & KOSAKA,Hirotsugu

要 約
 教師がカウンセラー化することは,教師・カウンセラー二つの立場に立つことになり,問題に直面したとき悩んでしまうデメリットがある。しかし,日頃から児童生徒に関わっている教師が,カウンセラーの姿勢やスキルを発揮できるメリットは教育現場に必要である。
 そこで,本研究では,カウンセリングを学んだ教師が,現場で何を感じているのかを知り,デメリットについては,その傾向と対策を探ることとした。

キーワード:教師カウンセラー,カウンセリング・マインド
p67-p80(トップへ戻る)

(7)青年期の友人関係における同調行動に関する研究

松本 麻里・葛西 真記子

Research on Conformity Behavior in Friendship of Adolescents
MATSUMOTO,MariA & KASAI,Makiko
要 約
 本研究では,「表面的同調行動」の側面から質問紙とインタビュー調査を通して,青年期の友人関係の知見を得ることを目的とした。質問紙は,同調行動尺度,STAI Y-2尺度,公的自己意識尺度,日本版MLAM承認欲求尺度,私的自己意識尺度,青年用アサーション尺度の全55項目からなる質問紙を用いた。インタビュー調査では,質問紙では得ることのできなかった,思いや考えについて調査を行った。対象は大学院生12名であった。半構造化面接によるインタビュー調査の前に質問紙を行い,両方の結果を基に考察を行った。その結果,高校時代より大学生時代の方が同調行動をとる傾向が少なくなることが明らかとなり,安心感や他者の表明,いじめ,リーダー体験等が問題行動に関連していることが明らかになった。友人関係を親密で満足のいくものにするために,同調行動だけでなく,自分の意見等を述べるアサーション能力も必要であることも考察された。
キーワード:同調行動,青年期,友人関係
p81-p93(トップへ戻る)

(8)2008年の世界の不登校研究の概観−PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から−

佐藤 正道

A Review of the Studies about Non Attendance at School,School Phobia, and School Refusal in the World(2008)
SATO, Masamichi

要 約
 日本の不登校の問題を考える上で,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から 1年毎にERICおよび PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの,2003年以降はPSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance,school dropouts,school phobia ,school refusal を持つ文献を分類してきている。その継続研究として2008年の文献80件について取り上げ分類し検討を加えた。 

Key words : school attendance, school dropouts, school phobia, school refusal
p94-p126(トップへ戻る)

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Copyright 2000-2009 Naruto Association of School Guidance and Counseling:Last Updated 2009.09.07