鳴門生徒指導研究第17号(2007)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 17,2007,August,ISSN 0917-5180

ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第17号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワードを各論文毎に掲載します。


1.日本語のタイトルと著者名
(1)
中学生期に不登校を経験した高校生・社会人の心理的変化-教員や家族のかかわりを中心に−下司 清史・葛西 真記子

(2)教育支援センターにおける指導員と学生ボランティアの協働に関する調査研究−橋崎 麻希・小坂 浩嗣
(3)児童養護施設職員と心理職の連携の現状と課題−中村 真実・葛西真記子
(4)2006年の世界の不登校研究の概観−PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から佐藤 正道
(5)子育て親の現状と「より所」としての子育て支援− 立本 千寿子
(6)学校臨床における情報共有のあり方に関する研究−守秘義務と共通理解を巡って− 辻村 裕一・葛西 真記子
(7)10代の若者への性教育の在り方−養護教諭が関わる妊娠・中絶相談事例を中心として− 角田 智恵美・夏田 真衣・筒井 康子

2.各論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワード
 

(1)中学生期に不登校を経験した高校生・社会人の心理的変化−教員や家族のかかわりを中心に−

下司 清史・葛西 真記子

Psychological Change of High School Student and Business People Who Experienced Truancy in JUnior High School -Focusing on Relation of Teachers and Family Members-
GESHI,Kiyoshi & KASAI,Makiko

要 約
 中学生期に不登校を経験したα高校の生徒と卒業生を対象に、入学前後の心理的な変化をインタビューし、かかわりを持ったと考えられる人物を対象にインタビューを行い、不登校を経験した生徒が登校を続けられる要因について検討した。さらに、教職員を対象に不登校を経験した生徒についてのアンケート調査をした。その結果、生徒と卒業生のインタビューからは入学前に期待感を持っていたが、入学後は不安感が強くなることがわかった。しかし、その後の教員や上級生のかかわりで不安が軽減し、自己肯定感が高くなったことが分かった。教職員のインタビューからは多くの教職員が不登校生徒に対して「声をかける」という方法でかかわっていたことがわかった。アンケート結果から不登校生徒への対応に多くの教員が協力的であることがわかった。このことから、多くの教員がかかわることで不登校を経験した生徒が登校を続けられる要因となっていると考えられる。

キーワード:不登校,かかわり,心理的変化
p3-p19(トップへ戻る)

(2)教育支援センターにおける指導員と学生ボランティアの協働に関する調査研究

橋崎 麻希・小坂 浩嗣

Research on Collaboration between Guidance Worker and Student Volunteers in Educational Centre
HASHIZAKI,Maki & KOSAKA,Hirotsugu

要 約
 本稿は、不登校に対する支援施設の一つである教育支援センター(旧適応指導教室)における指導員と学生ボランティアの協働について、全国200の教育支援センターの指導員400名を対象に、郵送法により調査した研究である。調査目的の第一は指導員の視点から教育活動に関する指導の意識と学生ボランティアへの期待の構造を検討し、第二に指導員の教育活動と学生ボランティアに期待する教育活動について検討した。その結果から、(1)指導員は情緒面や自主性を尊重した役割意識を有したのに対して、学生ボランティアには兄・姉的役割を期待していること、(2)両者に共通した役割として社会性の促進や学習指導の支援を重視していることが明らかにされた。

p20-p37(トップへ戻る)

(3)児童養護施設職員と心理職の連携の現状と課題

中村 真実・葛西真記子

Current issues and Problems concerning Coordination between Child care workers and Psychotherapists

NAKAMURA,Mami & KASAI,Makiko

要 約
 被虐待児に対する治療的援助の必要性から、平成11年度より心理職を配置する児童養護施設は年々増加しており、施設職員と心理職との連携の重要性や必要性が高まっている。本研究は、施設職員・と心理職の連携の現状を把握し、よりよい連携について考察することを目的とした。その結果、(1)非常勤心理職・実習生の場合、施設職員と心理職が積極的に顔を合わせた形で話す機会を増やすこと、(2)常勤心理職の場合、「心理療法の枠」や期待されている業務を踏まえた『心理職の役割の確立』が課題としてあること、(3)心理職全体では、「児童養護施設の理解」、および「心理職への理解の促進」などの『専門職同士の理解』が重要であることが示され、わかりやすい『情報交換』が求められていることが明らかとなった。これらを、すでにある施設内ケース検討会や他施設との合同ケース検討会、スーパーバイズなど心理職同士の連携を活用・充実させながら行うことが第一歩である。

キーワード:児童養護施設,施設職員,心理職,連携
p38-p52(トップへ戻る)

(4)2006年の世界の不登校研究の概観−PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から−

佐藤 正道

A Review of the Studies about Non Attendance at School,School Phobia, and School Refusal in the World(2006)
SATO, Masamichi

要 約
 日本の不登校の問題を考える上で,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から 1年毎にERICおよび PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance,school dropouts,school phobia ,school refusal を持つ文献を分類してきている。その継続研究として2006年の文献124件について取り上げ分類し検討を加えた。 

Key words : school attendance, school dropouts, school phobia, school refusal
p53-p96(トップへ戻る)

(5)子育て親の現状と「より所」としての子育て支援

立本 千寿子

Child care parent's state and the course of child care support as something to believe in
TATEMOTO,Chizuko
要 約
 現代の日本において、子育てを取り囲む問題は多い。それらの課題に対応する支援も行われてきてはいるが、実際は現状に沿った十分な支援がなされているとは言いがたい。
 そこで本研究では、意味ある支援を行う上で、まずは現状を調査することが最も重要であると考え、子育て親の心理的・肉体的・経済的な面における現状と、「心のより所」として機能する人や場所等を調査した。
 その結果、現在の子育て親のありのままの姿が明らかになった。その中でも特に、最近の子育て親は、身体的・肉体的よりも心理的・精神的に負担を感じており、また子どもへの関心においても精神的な発達を最も気にかけているということや、価値観の多様化の中で、何が自分らしい子育てかという「子育て観」に揺らいでいることが明らかになった。また、近年の、子育て支援を重要視していこうとする傾向に比べ、「安心して相談できる人」としての機能や、「安心して相談できる場所」としての機能を果たせていないことが明らかになった。
 これらの結果を受け、今後の子育て支援における方向性を示唆した。
キーワード:子育て親,乳幼児,子育て支援,より所
p97-p107(トップへ戻る)


(6)学校臨床における情報共有のあり方に関する研究−守秘義務と共通理解を巡って−

辻村 裕一・葛西 真記子

A Study on Information Sharing System in School Counseling
TSUJIMURA, Yuichi & KASAI,Makiko

要 約
 本研究では小・中・高のスクールカウンセラー7名と、教師(校長、教頭、担任、養護教諭)8名の計15名を調査対象とし、学校における情報の共有のあり方に関するインタビュー調査を行った。昨今のスクールカウンセラーは、情報を教師に提供しようと努めているが、逆に守秘義務の意識も強く持ち、情報を慎重に扱っている。教師は‘集団守秘義務’の名の下、全ての情報を全員で共有する流れにあるものの、スクールカウンセラーに対しては情報を提供されていないことが明らかになった。スクールカウンセラーは「何を」「いつ」「どの程度」「誰に」伝えるかを常に念頭においておかなければならず、教師は‘情報を共有して当たり前’なのではなく、‘慎重に’扱わなければならない。またこれからのスクールカウンセラーは養護教諭や生徒指導主事と同等かそれ以上に、むしろ担任と学年主任、管理職との関係を強化していかなければならない。

キーワード:学校臨床,情報共有,守秘義務,共通理解,連携モデル
p108-p121(トップへ戻る)

(7)10代の若者の性教育の在り方−養護教諭が関わる妊娠・中絶相談事例を中心として−

角田 智恵美・夏田 真衣・筒井 康子

A Study on Sexuality Education for Teenagers - Based on the health counseling cases about pregnancy and abortion treatedby Yogo Teachers -
TSUNODA,Chiemi & NATTA,Mai & TSUTSUI,Yasuko
要 約
 近年、10代の望まない妊娠・中絶等の性に関する問題は増加傾向にあり、危険行動予防としての性教育は、学校における健康教育の重要な分野の一つである。そこで本研究では、養護教諭が性に関する相談、とりわけ妊娠・中絶についての相談に対してどのように関わっているのかを調査し、求められる性教育の在り方を検討した。性についての相談の内、妊娠や中絶に関することも多くあげられ、大多数は本人からの申し出により始まっていた。妊娠や中絶の問題の要因の背景としては、「家族環境」や「知識・スキル不足」が指摘されることが多かった。学校での性教育に欠かせない観点としては、(1)科学的な知識の教授、(2)対人関係スキルの獲得、(3)セルフエスティームを高めるような指導があげられる。相談に当たる際には、(1)相談への労い、(2)プライバシーの尊重、(3)正確な情報提供と検査の勧奨、(4)保護者との連携と支援、(5)学校内での支援体制の確立、(6)外部機関とのネットワークの構築等に留意する必要がある。
キーワード:性教育,妊娠・中絶,10代,養護教諭
p122-p135(トップへ戻る)

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Copyright 2000-2007 Naruto Association of School Guidance and Counseling:Last Updated 2007.10.07