平成15年度の講演の概略
講演テーマ「学校における危機管理」 講師 大阪教育大学 学校危機メンタルサポートセンター長 元村直靖 学校管理下の災害 学校管理下内で起こった災害の死亡例は、年間200〜300名であり、ほぼ毎年一定である。ほとんどは、交通事故である。学校内での犯罪は増えている。 学校災害、学校内外で発生する危機・病気や自殺による死、交通事故、犯罪、自然災害、戦争、その他が考えられる。 海外での事例 長期予後の事例研究は少ない。初期対応は十分ではないものが最初は多かった。 アバーファン小学校事件(1966)イギリス 33年後の予後の調査 30%でPTSDの部分症状が見られたとしている。 チョ−チラー事件(1976) 15名死亡 その後の対応はなかった。 5年後の調査では、抑うつ状態(100%)。世の中に対する恐怖感を抱いていた。 ジュピター号事件(1988) フェリーがタンカーと衝突 生徒、教員各1名死亡 救助しようとしたもの2名死亡 対応した学校では、個別的対応を行う。保護的援助体制で臨む。 クリーブランド小事件(1986) 生徒5名(東南アジア系アメリカ人)死亡 当日の夕方に50名の精神保健専門家が対応。母国語で話をした子どもが一番回復を 示したとされている。行政にカウンセラーを要請。イリノイ州のカウンセラーが対応。 ダンブレイン小事件(1996)イギリス 生徒教員17名死亡 犯人自殺 児童と保護者のトラウマと喪失体験に対応。心的外傷の長期サポートと児童に対する サポートを行う。 コロンバイン高事件(1999) 116名生徒死亡、28名の教員死亡、143名の生徒は負傷。 カウンセラーを増やす。メンタリングプログラム、ホームルームでの話し合い、コミ ュニケーションボックス、校舎の壁に生徒の描いたタイルを埋めるなどの作業を行う。 アメリカでの犯罪被害者支援 全米被害者支援援助機構NOVA(1975〜) 有給職員9名、無休職員(40時間分の危機介入プログラムを修了済)75名 直接的被害者援助direct service to victims 専門家やボランティアの教育 被害者の権利運動 全米犯罪被害者センターNCVC 全米暴力被害児童センター アメリカでの自然災害後の危機介入 連邦緊急時統制機関 FEMA 復員兵行政局 危機介入、カウンセリングと擁護(捜査段階)、犯罪予防(処分後) 一般人に対する教育活動、専門家の教育 全米暴力被害児童センター 1999年にYale大学に設置。事件発生時の危機対応プログラムの開発、教員への 危機対応研修プログラムの開発、被害児童への援助 アメリカでの暴行などの学校犯罪253,000件(1998)〜日本は6万件 日本での学校災害例(特に犯罪) 京都市伏見区日野小学校事件(1999) 小2の児童が刃物で死亡 和歌山県伊都郡かつらぎ町小学校事件(2000)小1児童が刃物で死亡 大阪教育大学附属池田小学校事件(2001)児童8名死亡、15名負傷 (6月8日事件当日) メンタルサポートチームが、午後にボランティア自然発生的混成チームとしてできる。 当日の確認事項 ・犠牲者入院先への精神科医の派遣 ・マスコミ対応の一本化(Faxで) ・ホットラインの設置(24時間態勢) ・家庭訪問にはカウンセラーが同行 (6月9日 2日目) 保護者会開催。保護者に児童の心に関する講演。 子どもにすべきではないこと、初期対応の在り方、今後予想される症状について クラス別の会における質疑応答 食欲不振、頭痛腹痛の症状、じんましんなどが起こることが考えられる。 子どもは表現することが難しいことなどを説明。 (6月10日 3日目) 家庭訪問の人員確保、陣容の調達と班編成(家庭訪問班・トラウマ対応班・教員支援班) 記者会見 2次被害予防のための取材自粛要請 〜始めの取材担当者はスクープねらいということもあり言葉も荒く、怒ら れた。今の取材は、社会部で穏やかであるが。 (6月11日 4日目〜6月14日) 家庭訪問開始 16班で児童680名中637件を6日間で訪問。 (11日100件、12日150件、13日130件、14日120件) 要フォローは162件(25.4%) 要フォローについては、電話と家庭訪問 遺族訪問開始 反省点としてもっと早くしたかった。 教員の支援 これも反省点、高ぶっていてがんばれるだけがんばろうとしている。 メンタル面でかなり傷を負われている方も〜校長から疲れている教員を休ませるなど の対応を(例) (6月16日 7日目) アトム発刊(ニュースレター)保護者向けの教育が目的 初期のチームを解散し大教大中心のチーム編成 (6月22日 15日目) 池田子ども家庭センターに相談窓口、アトム相談室を開設。 警察の小1小2の児童に対する事情聴取に配慮の要請。子どもたちがまた思い出したり、 フラッシュバックがあったり。カウンセラーの陪席を要請し認められたが、聞かないこ とやオープンクエスッチョンにするなどのルールができていないため十分な対応ができ なかった。 (6月25日〜8月26日 休業中の活動) フリースペース活動 リラクゼーションのための活動を行った。 (8月27日 再開) 欠席は少ない。 (10月11日) 欠席が増えてきた。始め元気だったが、弱ってきたりして。 現在は、不登校はいなくなった。グループワークを開始。授業中1回。症状の格差が 広がってきたので個別的対応、 教員の支援、保護者支援、ご遺族支援。 (文部科学省の通達) 平成12.1.17 日野小学校事件後 平成13.6.11及び8.31 幼児生徒の安全確保及び学校安全に関する点検項目 検証を求められている 学校危機管理マニュアルの実情(1998) 自然災害83% 学校事故83% 伝染病等関連53% 学校外からの侵入0.3% 学校安全管理の実情(2001) 情報対策、連絡体制は実施が高い。 ボランティア協力は実施低い。学校での対応のケースが多い。 学校危機の予防 第1次 危機の発生を事前に予防 第2次 危機の増加の防止 第3次 危機発生の状態からの回復 対応として、行政:Crisis Response Teamの派遣 学校:校長のリーダーシップ 教職員の役割分担 平常時からの災害マニュアル作成 平常時からの危機介入研修 外部協力機関の把握 保護者への連絡網の確保 災害直後の対応 正確な情報(校長、教頭、教務) 事件事故の正確な情報の記録を取っておくこと。 児童生徒保護者への連絡と情報提供 問い合わせへの対応 マスコミへの対応(短期的 中長期的) 外部専門家との連携 非常事態対応計画 起こりうる危機的事件が何であるか。 支援機関や支援スタッフは誰でどこにいるのか。 学校における危機管理計画の開発 学校のすべての教職員の決定と確認 危機管理編成の組織 組織の設置とメンバーの任務 地域機関との連携、調整、方針 管理者不在の場合の対応 すべての教職員の役割を決めておくことと正確な記録を取っておくこと 危機対応実践マニュアル 自分の学校に合う形で作成すること 緊急時対応の専門機関のリストアップ 教師に危機カウンセリングなどの心の危機対応に関する研修を行うこと 学校安全と学校開放とは対立概念ではない。 別のレベルの話である。どういうルールにしているかを明確にすること。 |
Copyright 2003 Naruto Association of school Guidance and Counseling:Last Updated 2003.08.27