こんな研究ができます

情報領域は,情報科学や情報教育など「『情報』に関する独自の内容」(内容的価値)も持って
いますが,
多くの場合,何か他の目的(内容的価値)を実現するための「手段・方法」として用い
られるという特質
を持っています。
(国語や外国語などの言語が,文学や言語学など「独自の内容」を持ちながらも,多くの場合他の目的
を実現するためのコミュニケーションの手段・方法として用いられることと同じです。)

したがって,情報領域の研究は,「情報に関する独自の内容に関する研究」の他,「他領域の
目的を実現するために,どう情報が貢献できるのか」「他領域の現象と情報がどう関わってい
るのか」などに関する研究
をすることができます。

そこで,ここでは,これらの研究の例を下記に示します。もちろん,これ以外にもみなさんのアイ
ディア次第で様々な研究が可能となります。
                            

     

インターネットを活用した 異文化理解教育

インターネットは,世界をぐっと身近な存在にしました。
そのインターネットを用い,体験を共有したり,意見交
換をしたりしながら国際理解教育
(異文化理解教育・
Intercultural Education)を行うことは大変効果的です。
このようなインターネットを用いた国際理解教育に関す
る研究を行うことができます。

また,上記のような国際交流や国際共同学習を行う中
で,子どもたちは必然的に言葉の壁にぶつかります。
それを乗り越える方法として,非言語コミュニケーション
や自動翻訳,翻訳・通訳ボランティアの活用があります
が,交流が深まれば深まるほど,自ら相手の言語を学
んで直接コミュニケーションしたいという欲求が深まりま
す。このような子どもの必要感に裏打ちされた言語学
についての研究も可能です。

<関連する本研究室のプロジェクト>
ワールドスクールネットワーク
国際交流プロジェクト
「10校プロジェクト」(国際交流と英語活動)

<関連する本研究室の修士論文>
「異文化理解学習における参加型オンラインデータベ
ースの教育効果に関する研究」(原田安希子)


 
インターネットを活用した 環境教育

環境問題や環境科学に関する学習は,子どもが直接
関わることのできる身近なところから始めるとよいと言
われています。しかし,追求を進めていくと,それらのこ
とが自分たちだけでは解決できないこと,自分たちだけ
の問題ではないことに気づいていきます。

そこで,インターネットを活用すると全国各地・世界各地
の仲間とともに活動したり,意見交換したりして,地域の
問題であると同時に地球規模・宇宙規模の問題である
自然との共生について,より深めたり広げたりする
ことが
できます。

また,インターネットを活用することで,学校に頻繁に来
てもらうことの難しい環境科学や生物学,エネルギーな
どのの専門家からも,日常的に学ぶ
ことができます。

<関連する本研究室のプロジェクト>
ワールドスクールネットワーク
国際環境教育プロジェクト
徳島県ワールドスクールネットワークサポート会
(山城町,上勝町のみなさん,NHK,新聞各社)
水辺の楽校(川での活動をサポートするボランティア団
体)

<関連する本研究室の活動>
エネルギー施設見学会(伊方原子力発電所,瀬戸町風
力発電設備,高松市太陽光発電設備,愛媛県総合科
学博物館を1泊2日で見学:協力=四国電力)
情報教育
コンピュータやインターネットは使い方次第で子どもの学びを大きく広げます。コンピュータ・リテラシー
手紙や写真,ポスターなどを含めた様々なメディアなどの活用の仕方に関するメディアリテラシーに関する
研究をすることができます。                                                

また,情報倫理など情報社会に参画する態度の育成に関する研究や,それらを総合した情報教育カリキュ
ラムの在り方に関する研究も可能です。さらに電子ポートフォリオソフトウェアの開発をNECと共同で行っ
ており,学習の記録化と自己評価・相互評価,教師・保護者・地域による評価の研究も行うことができます。

もちろん,ソフトウェア開発やハードウェア環境,情報教育を支える人的環境に関する研究もできます。

しかも,情報と人間のかかわりは,コンピュータやメディアとのかかわりだけではありません。「人間教育・
教育原論」で述べるようなより本質的なところで人間が生きることとと関わっており,それら最新の情報
科学の成果を生かした新しい情報教育の在り方「人間教育としての情報教育」に関する研究もできます。

そのような一分野として,生体情報処理や感性情報処理(認知心理学を含む)に関する研究を行うこともで
きます。本講座では,来年度からこの分野を担当する人間科学(情報分野)の教官を補充する予定です。

<関連する本研究室のプロジェクト>
NEC,SONY,ジャストシステム,日立などとの共同研究プロジェクト
科学技術振興事業団,コンピュータ教育開発センターなどの委託研究
NHKのデジタル教材作成とHP運営
「情報倫理の構築」プロジェクト(FINE広島=広島大学との共同研究)
「うずしおプロジェクト」(ジャストシステムと共同研究=教師と子どものためのナレッジマネジメント)
ニューヨーク市立大・UCバークレイなどとの共同研究

<関連する修士論文>
「第1期生・第2期生の修士論文」参照

情報科学
人間と情報とのかかわり, 人間教育としての情報教育

人間が考えること,学ぶことは,情報処理そのものです。
様々な思考法や発想法,論理学の基礎に関する教育は
すべての教科等の学習で役立つとともに,生涯生きてい
く上で必要なものの見方・考え方・感じ方についての教
育につながります。変化の激しい時代を生き抜くことがで
きる「生きる力」は,このような「問題解決」の在り方を学
ぶことで,初めて可能になります。

また,思いやりの心を支える本質的な能力である「想像
力」を育んだり,相手の気持ちを読みとる感性は,非言語
コミュニケーションの側面から
育てる必要があります。
社会性のもとになる人とのつきあい方は,コミュニケーシ
ョンすることのすばらしさを実感し,適切なコミュニケーシ
ョンの仕方
について学ぶ必要があります。

このような,考えること,学ぶこと,豊かな心をもつこと,
そしてこれらを総合して「よりよい自分」を作り続けるため
には,これらを意図的・体系的に教育する「人間教育とし
ての情報教育」
が必要なのです。

このような,人間教育や教育原論に関する研究が,「人
間教育としての情報教育」の窓から行うと可能になりま
す。

<関連する本研究室のプロジェクト>
日本情報人間学会での活動
台東区立台東小との共同研究
タイ教育省との共同研究
ワールドスクールネットワーク

<関連する本研究室の修士論文>
「素質教育と総合的な学習の比較研究」(白慧英)
インターネットを活用した 福祉・人権教育
福祉教育,人権教育には,左のような「人間教育として
の情報教育を行うことが必要なだけでなく,直接会う機
会が少ない障害者や差別を受けたり人権侵害を受けた
りしている方たちと,インターネットを介して日常的に意
見交換
をして,見方・考え方・感じ方を深めたり広げたり
することができます。

また,インターネット上には,福祉や人権に関するコミュ
ニティーがたくさんあり,その助けを借りて学習を進める
こともできます。

そして,これらのインターネット上の交流が深まると,そ
れらの人との心のつながりが強くなり,実際に会いたく
なっていきます。

福祉・人権教育では,インターネットを使って当事者の
方から直接学ぶことができ
,このような学習についての
研究をすることができます。

<関連する本研究室のプロジェクト>
ワールドスクールネットワーク
国際交流プロジェクト

<関連する本研究室の修士論文>
「ネットワーク・コミュニティ活用学習の単元開発と評価」
(井手上典弘)