鳴門生徒指導研究第21号(2010)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 21,2011,August,ISSN 0917-5180

ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第21号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワードを各論文毎に掲載します。


1.日本語のタイトルと著者名
(1)
新設子育て支援施設における新人支援者の心理的変化立本 千寿子

(2)生徒指導における「もの語り」 藤井 隆
(3)発達障害をもつ生徒に対する心理的な支援についての一考察 − 自閉症生徒の問題行動の解決をめざした支援から − 湯浅 和夫
(4)教師の精神的健康を維持・促進するプログラムについて森下 左知子・葛西 真記子
(5)2010年の世界の不登校研究の概観−PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から佐藤 正道

2.各論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワード
 

(1)新設子育て支援施設における新人支援者の心理的変化

立本 千寿子

The New Figure Support Person's Psychological Changes in Newly Established Child -rearing Supports Facility
TATEMOTO, Chizuko

要約
  Y短期大学では,平成16年度より,地域子育て支援研究所が設立され,平成22年度からは,地域の親子が週に数回自由に来校して支援を受けることが出来る子育て支援施設を開始した。同時に,同じ地域性に所在する私立保育園において,出張形式の地域支援を開始した。それらの支援を,2名の新人支援者が展開している。
 そこで本研究では,大学が運営する上記の子育て支援に関して,新人支援者を対象に実施した継続的な質問紙調査を通して,その回答や記述から,新人支援者の経月比較にみる,支援を通した心理的変化を明らかにすること,また,それらの経月比較を通して,支援における課題を明らかにすることを目的とした。
 その結果,それぞれの新人支援者の様々な心理的変化の特徴が明らかになった。また,「支援の限度の基準化」,「支援を行う上で必要な知識や実務の習得及び向上」,「実態から見えてくる支援におけるシステム作り」等の課題が明らかになった。

キーワード:子育て支援,新人支援者,地域支援,心理的変化,経月調査
p3-p16(トップへ戻る)

(2)生徒指導における「もの語り」

藤井 隆

" Narrating Wholeness" for School Guidance and Counseling
HUJII, Takashi

要 約
 生徒指導の立場から生徒の行動を見つめていると,時として我々教員も含む集団の健全性を見落としがちである。今回取り上げるケースでは,生徒達が体育祭での応援団の練習を夜の公園で密かにしていることに,意図しない関わりを持つことで,生徒に対して普段と違う関わり方を体験した。それはまるで「こぶとり爺さん」の話と呼応する体験であった。
 人によって語られる物語の「出来事の内容そのものに焦点を当てるのではなく,語りを通じて今ここで立ち現われてくる意味(Its meaning now)に焦点を当てる」と,集団はあたかも本来向かうべき方向に自ら軌道修正しながら,ダイナミックに変化していくように思える。生徒指導が人と人との出会いや関わりを出発点とするならば,互いに協力して撚りあげられた物語が生まれる。そして,その物語をどう読み解くのかも,実はそのものに関わった当事者に託されているのではないだろうか。

キーワード:ナラティブ,生徒指導,問題解決,教育臨床,こぶとり爺さん
p17-p30(トップへ戻る)

(3)発達障害をもつ生徒に対する心理的な支援についての一考察 − 自閉症生徒の問題行動の解決をめざした支援から −

湯浅 和夫

Consideration of psychological support for students with developmental disabilities; Assistance aimed at solving the problem behavior of students with autism

YUASA,Kazuo

要 約
近年,発達障害者に対する立法的な支援が拡充されてきたのは周知の事実である。教育の現場においても,発達障害をもつ生徒に対する支援の充実が問われている。生徒の卒業後,新しい環境適応をめざすこともその要素のひとつと考えられている。本研究では,そのリスク要因と考えられている自閉症生徒の問題行動(「かみつき」)に視点をあて,その解消のための心理的な支援についての事例研究を実施することにした。筆者は,そのためのツールとして「Fingar marker」の考案に約3ヶ月を要したが,その効果について研究し考察したところである。なお,本研究でめざしたこれらの問題行動の解消と「エディプス期」の課題克服の関連性を見出すことはできなかった。今後の課題としたい。
 

キーワード:自閉症生徒,かみつき,Fingar marker,切り替え,ファンタジー
p31-p43(トップへ戻る)

(4)教師の精神的健康を維持・促進するプログラムについて

森下 左知子・葛西真記子

Developing a Facilitative Mental Health Program for Teachers
MORISHITA,Sachiko ; KASAI,Makiko

要 約
 日本の教師の精神的健康はここ数年の間に急速に悪化している。文部科学省の発表では,2007年度における教職員の病気求職者数は8000人を超え,そのうち,精神疾患による休職者数は5000人を数える(文部科学省,2009)。また,この発表の開始年度より10年の間で病気休職者数は約2倍,精神疾患による休職者は約3倍に増えている。本研究では教師の精神的健康の悪化という事態を改善するために,教師の精神的健康尾を維持・促進するためのプログラムの考案を目的とした。考案にあたっては,精神的健康に関連するとされるレジリエンス(森ら,2002)に注目し,教師がその職業上,困難な状況をどのように乗り越えるのかというインタビュー調査(森下,2011)の知見を元に構成した。また,効果を検証するためにプログラムの実施前後に質問紙調査を行った。結果,調査協力者の感想記述からは概ね効果が得られ,質問紙調査による効果においては,一部の群の教師に効果が示された。 

キーワード:教師,精神的健康,レジリエンス
p44-p56(トップへ戻る)

(5)2010年の世界の不登校研究の概観−PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から−

佐藤 正道

A Review of the Studies about Non Attendance at School,School Phobia, and School Refusal in the World(2010)
SATO, Masamichi

要 約
 日本の不登校の問題を考えるうえで,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から 毎年,ERICおよびPSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの,2003年以降はPSYCHOLOGIC ALABSTRACTSの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance,school dropouts,school phobia ,school refusal を持つ文献を分類してきている。その継続研究として2010年の文献71件について取り上げ分類し検討を加えた。 

Key words : school attendance, school dropouts, school phobia, school refusal
p57-p86(トップへ戻る)

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