鳴門生徒指導研究第20号(2010)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 20,2010,August,ISSN 0917-5180

ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第20号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワードを各論文毎に掲載します。


1.日本語のタイトルと著者名
(1)
「コラージュ療法」について−研究会で解説する基本的内容−川瀬 公美子

(2)経年調査から見える教育相談係の実態の変遷 大阪府高等学校生活指導研究会機関誌『生活指導』の60年間の資料から 藤井 隆
(3)幼稚園における心理的・発達的支援のシステム構築について−A市において保育カウンセラーが果たせる役割の検討− 立本 千寿子
(4)教師によるサポートが生徒の教師への信頼感や学校適応に及ぼす影響 岡 直希・葛西真記子
(5)2009年の世界の不登校研究の概観−PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から佐藤 正道

2.各論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワード
 

(1)「コラージュ療法」について-研究会で解説する基本的内容−

川瀬 公美子

Collage Technique
KAWASE, Kumiko

要約
  日本でコラージュ療法が広く知られるようになって,20余年である。本療法に新たに取り組みたいという方は,大抵の場合,まず自らが制作体験をすることを勧められる。
筆者が所属する徳島箱庭コラージュ療法研究会においても,毎年制作体験をする機会を設け,さらにコラージュ療法について解説をしている。
コラージュ療法は,芸術療法に属する方法である。1987年に森谷寛之が,箱庭療法の本質を「レディ・メイドの組み合わせ」にあるという中村雄二郎の発言にヒントを得て,コラージュの価値を再発見し,箱庭療法に匹敵すると考え,思いついた方法である。なお,コラージュ自体は芸術の技法であり,1910年代にピカソらによって導入された。その後,外国では作業療法や芸術療法としても使われていたが,多くの芸術用法のひとつという位置づけであった。
本論では,森谷が始めた「コラージュ療法」について紹介する。そしてそれに加えて,筆者のこれまでのコラージュ療法の取り組みや考察を述べる。

キーワード:コラージュ療法,コラージュ,心理療法,実施上の留意点
p3-p14(トップへ戻る)

(2)経年調査から見える教育相談係の実態の変遷 大阪府高等学校生活指導研究会機関誌『生活指導』の60年間の資料から

藤井 隆

A Study of investigations of the actual conditins performed changing among the school counseling compositions and system, with perennial questionnaires and research in The High School
HUJII, Takashi

要 約
 大阪府高等学校生活指導研究会の設立時から60年間,同研究会の機関誌『生活指導』が毎年発刊されてきた。その中に30年間にわたる教育相談係の実態調査資料が蓄積されている。この資料を基に大阪府公立高校における教育相談係の経年変化をまとめると,社会的背景や文部科学省や大阪府教育委員会独自の施策などと呼応しつつ,学校現場における教育相談の形態の変遷が見て取れる。この30年間の変化には1991年と2001年と10年毎に変換点が生じ,両輪として機能していたはずの生徒指導としての機能と教育相談としての機能との間に‘隙間’1)が1991年頃から生じ始め,2001年頃からはその隙間がさらに急速に広がっていると考えられる。
 教育相談活動を十全に機能させるためは,学校教育全体を通じて行う生徒指導と個別性・専門性を要求されつつも全教員が行うとする教育相談との繋がり方,専門家としてのスクールカウンセラーとの連携のあり方を生徒指導の原点から再考する必要があると思われる。

キーワード:教育相談,生徒指導,連携,経年実態調査,スクールカウンセラー
p15-p29(トップへ戻る)

(3)幼稚園における心理的・発達的支援のシステム構築について−A市において保育カウンセラーが果たせる役割の検討−

立本 千寿子

System Construction of Psychological and Developmental support in kindergarten

TATEMOTO,Chizuko

要 約
 本研究では,実際に心理的・発達的支援のシステム構築を行う際の具体的な示唆を得る為に,大阪府内のA市公立幼稚園の実践現場で勤務している現職の幼稚園教諭を対象にした質問紙調査を行い,A市の公立幼稚園における子育て支援における保育カウンセラーの在り方の検討と,心理的・発達的支援のシステム構築を行う際の重要な事柄を得ることを目的とした。
その結果,心理的・発達的支援への意識・実施の現状や課題の具体的内容,心理的・発達的支援のシステムに対する意識や魅力に感じる点感じない点等が明らかになった。具体的には,心理的・発達的支援のシステムに対しては,肯定的な意識が大変高く,そのシステムにおいて魅力を感じる点をKJ法で分類した結果,非常に多くの教諭が,教諭サイドの専門性と保育の質の向上を挙げた。

キーワード:幼稚園,心理的・発達的支援,支援システム,保育カウンセラー
p30-p41(トップへ戻る)

(4)教師によるサポートが生徒の教師への信頼感や学校適応に及ぼす影響

岡 直希・葛西真記子

Effectiveness of Teacher's Support on Student's Trust and Adjustment
OKA,Naoki & KASAI,Makiko

要 約
 本研究では,教師によるサポートが中学生・高校生の教師への信頼感や学校適応にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするために,中学生363名,高校生145名に教師に対する信頼感尺度,知覚されたサポート尺度,学校生活適応感尺度,Self-rating Depression Scaleの4尺度の質問紙調査を行った。その結果,教師から生徒にサポートを行うことで,生徒の教師に対する信頼感が増すことがわかった。さらに,教師からのサポートと生徒の教師への信頼感は,学校適応や抑うつ傾向に良い影響を及ぼしていることもわかった。中学生と高校生では,学校適応を高める要因には違いが見られた。また,中学生では教師への安心感が抑うつ傾向を軽減するということがわかったが,高校生では教師は抑うつ傾向の軽減には影響を及ぼさなかった。

キーワード:教師,ソーシャル・サポート,学校適応感
p42-p55(トップへ戻る)

(5)2009年の世界の不登校研究の概観−PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から−

佐藤 正道

A Review of the Studies about Non Attendance at School,School Phobia, and School Refusal in the World(2009)
SATO, Masamichi

要 約
 日本の不登校の問題を考えるうえで,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から 毎年,ERICおよびPSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの,2003年以降はPSYCHOLOGIC ALABSTRACTSの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance,school dropouts,school phobia ,school refusal を持つ文献を分類してきている。その継続研究として2009 年の文献73 件について取り上げ分類し検討を加えた。 

Key words : school attendance, school dropouts, school phobia, school refusal
p56-p88(トップへ戻る)

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