鳴門生徒指導研究第16号(2006)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 16,2006,August,ISSN 0917-5180

ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第16号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワードを各論文毎に掲載します。


1.日本語のタイトルと著者名
(1)
“信頼”を軸とした学校と父親の連携がもたらしたもの−父親から暴力を受けてきた男子高校生の実践報告−藤井 隆

(2)不登校児童生徒への養護教諭の関わり方−現職養護教諭を対象とした質問紙調査を中心として−角田 智恵美・佐藤 ひかり・五十嵐 裕子
(3)教師の児童理解を深めるための臨床心理学的実践研究−図画工科の授業作品から−野村 京子・葛西真記子
(4)2005年の世界の不登校研究の概観−PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から佐藤 正道
(5)乳幼児に対する「個に応じたケア保育」を実践出来る保育者養成−音楽療法(療育)の可能性の面から− 立本 千寿子

2.各論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワード
 

(1)“信頼”を軸とした学校と父親の連携がもたらしたもの−父親から暴力を受けてきた男子高校生の実践報告−

藤井 隆

Cooperation between a Teacher and Father Based on "Trust"
FUJII,Takashi

要 約
 本事例は,父親から暴力を受けていた男子高校生(以降B君)の2年次の学校における1年間の取り組みと,B君の学校生活の変容を追ったものである。緊急避難的に,B君に暴力を振るう父親から遠ざけることを考える必要もあるが,親子の分離による人間不信の回復には,多大なる労力と時間を必要とするし,学校としては援助が難しくなる。
 B君の父親は,精一杯父親としての虚勢を張りB君に暴力を振るう。だが,そのことで逆に不完全な父親像をさらけ出すことになる。しかし,一方で必死になってB君を立ち直らせようとする父親の姿も見る事ができる。この2つを抱え苦悩している父親と共感することで,「信頼」を軸にこの親子が再びつながることを目指して連携を取ることができた。すると,気がつくと父親の周りにB君への援助者が自然に集まる結果となり,事態は好転をし始めた。その結果,親子の分離は回避され,B君と父親との関係も大きく改善されたのである。

キーワード:子どもの虐待,生徒指導,教育相談,連携,人とのつながり,グループダイナミクス
p3-p15(トップへ戻る)

(2)不登校児童生徒への養護教諭の関わり方−現職養護教諭を対象とした質問紙調査を中心として−

角田 智恵美・佐藤 ひかり・五十嵐 裕子

A Study of Intervention of School-Nurse to Non-Attendant Pupils-Through a questionnaire to incumbent school-nurses-
KAKUTA,Chiemi & SATO,Hikari & IGARASHI,Yuko

要 約
 不登校問題は,依然として学校教育上の重要な課題である。不登校児童生徒と関わる機会の多い養護教諭の行う健康相談活動への期待も大きい。本研究では,現職養護教諭への質問紙調査から不登校児童生徒への対応の実際を検討,分析し,不登校支援を行う上で,養護教諭に求められる対応方法や技法について考察した。不登校に関する相談は,約8割の養護教諭が受けた経験があった。養護教諭が関わる不登校の型には偏りが見られ,「学校生活に起因する型」と「不登校情緒的混乱の型」が大多数であった。また,直接的な支援としては,受容・共感的な対応を中心に行う一方,スキル訓練などを取り入れている者は極少数であった。担任や保護者等の能動的,具体的な支援も取り入れるとともに,学校生活全体での組織的・系統的支援のコーディネーターとしての関わりも重要である。

キーワード:不登校,養護教諭,健康相談活動,受容,連携
p16-p28(トップへ戻る)

(3)教師の児童理解を深めるための臨床心理学的実践研究−図画工科の授業作品から−

野村 京子・葛西真記子

A Practical Study for Understanding Children's Inner World from Clinical and Psychological Perspectives.

NOMURA,Kyoko & KASAI,Makiko

要 約
 学校現場で起こる様々な問題に対処するために,普段の学校生活の中で教師がより児童理解を深める事ができないかと考えた。そこで,本研究では,図画工作科の授業の作品の中から,臨床心理学的視点を提供し,児童の心の内の理解を深めること,また,それらの視点を他学級の先生方を交えて事例検討会を行うことで教師間の情報交換や意見交換を行い,その有効性について明らかにするという,二つの目的として実践を行った。対象児童は37名で,そのうち各担任教師を挙げてもらった抽出児童は9名であった。実践後作品の解釈を行い,抽出児童についての事例検討会を行い,それらを提供し,意見交換を行うことで,より多角的な児童理解につながった。また,図画工作科の授業で作られた作品から,児童の内面を知ることができるということを,参加した教師により認識された。

キーワード:児童理解,事例検討会,図画工作,臨床心理学
p29-p39(トップへ戻る)

(4)2005年の世界の不登校研究の概観−PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から−

佐藤 正道

A Review of the Studies about Non Attendance at School,School Phobia, and School Refusal in the World(2005)
SATO, Masamichi

要 約
日本の不登校の問題を考える上で,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から 1年毎にERICおよび PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance,school dropouts,school phobia ,school refusal を持つ文献を分類してきている。その継続研究として2005年の文献139件について取り上げ分類し検討を加えた。 

Key words : school attendance, school dropouts, school phobia, school refusal
p40-p81(トップへ戻る)

(5)乳幼児に対する「個に応じたケア保育」を実践出来る保育者養成−音楽療法(療育)の可能性の面から−

立本 千寿子

Trainning for child care professionals who can practice individualized child care for infants and toddlers - The possibility of utilization of music therapy for child care -
TATEMOTO,Chizuko
要 約
 現在,障害児やグレーゾーン児への支援,虐待児への対応,育児不安を持つ親への支援など。乳幼児を取り囲む課題は多い。それらの時代を背景にして,保育者養成校においても健常児のみならずそのような特別な関わりの必要な乳幼児や保護者に対し,通常の保育に加えて,ケア・支援をすることの出来る保育者の養成が求められている。本論文では,音楽療法(療育)をひとつの切り口とし,筆者が必要だとするケア・支援の観点から見た課題解決策である音楽療法(療育)の可能性を明らかにし,新しい取り組みである音楽療法(療育)の継続的な授業実践による事例を通して,保育者養成の側と保育者を目指し学ぶ学生の側から,先述課題へとせまる道筋を述べた。生きた力の育成を目指す実感を伴う学びの提供を通して,学生達は新しい知識や視野の習得,現場に繋がる意欲や動機付けの獲得,これからの人生を考える上での選択の材料の発見,学生生活における目標への発展などを行い,保育者像を具体的に描くきっかけと同時に本実践の目標を達成していったことが確かめられた。音楽療法(療育)を通したケア・支援する保育について養成校で授業実践したことは,時代の要請に即した新しい視野や知識・資質の獲得をはじめ,これから保育者となり乳幼児と向き合う者にとって有効であったと考えられる。
キーワード:音楽療法(療育),乳幼児,保育者養成
p82-p94(トップへ戻る)

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Copyright 2000-2006 Naruto Association of School Guidance and Counseling:Last Updated 2006.10.08