鳴門生徒指導研究第14号(2004)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 14,2004,August,ISSN 0917-5180

ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第14号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワードを各論文毎に掲載します。


1.日本語のタイトルと著者名
(1)
教育相談的なティーム・ティーチングの必要性−小学校入学当初の児童たちとの関わりを通して−桑田千都子・葛西真記子

(2)日中大学生の自我同一性地位に関する比較研究−文化的自己観からのアプローチ 許 英美・田中 雄三
(3)保健室登校の子どもに対する援助のあり方美馬 千恵・小坂 浩嗣
(4)児童の睡眠慣習が疲労感に及ぼす影響と健康教育の実践中田 美子・田中 雄三
(5)家族療法的視点による教育相談−ロールプレイの分析をもとに 谷 哲・山下 一夫
(6)2003年の世界の不登校研究の概観−PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から− 佐藤正道

2.各論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワード
 

(1)教育相談的なティーム・ティーチングの必要性−小学校入学当初の児童たちとの関わりを通して−

桑田千都子・葛西真記子

The Importance of Team Teaching from the Educational and Psychological Point of view

KUWATA,Chizuko & KASAI,Makiko

要 約
小学校において「学級崩壊」が問題になっており,小学校1年生においても,いじめや不登校等の不適応をおこす児童がいたり,授業が成立しないという現象となって現れる「小1プロブレム」とも呼ばれる問題が拡大している。本研究では,小学校入学当初の子どもたちに教育相談的ティーム・ティーチングを実践し,その効果を,事例による振り返り,担任へのインタビューによる評価を通して実証することを目的として行った。その結果,教育相談的なティーム・ティーチングのかかわりは,@児童の言葉の裏にある気持ちの理解,A複数の視点による深い児童理解,B個別のニーズへの対応,C見守ることの大切さ,D教師の逆転移的な反応への気づき,E逆の立場からの支援,F担任への支援,G基本的生活習慣の定着などの点で有効であることが明らかとなった。

キーワード:教育相談,ティーム・ティーチング,カウンセリング・マインド,小学校1年生
p2-p16,(トップへ戻る)

(2)日中大学生の自我同一性地位に関する比較研究−文化的自己観からのアプローチ

許 英美・田中 雄三

The comparative study of ego identity status between Japanese university students to Chinese university students-The approach to the cultural view of self -

KYO,Eimi & TANAKA,Yuzo

要 約
 本研究では日本H大学教育学部の学部生254名(男子122名,女子132名)と,中国B大学教育学部の学部生276名(男子93名,女子183名)を調査対象とし,文化的自己観の視点から日中大学生の自我同一性地位に関する比較研究を行った。日本人と中国人の自我同一性地位の比較を行った結果,日本人の「同一性達成」,「D−M中間」が中国人より有意に多く,中国人の「A−F中間」,「積極的モラトリアム」が日本人より有意に多かった。また,文化的自己観においては,日本人は相互依存的自己観の得点が相互独立的自己観の得点より有意に高かった。中国人は相互独立的自己観の得点が相互依存的自己観の得点より有意に高かった。

キーワード:日中大学生,自我同一性地位,文化的自己観
p17-p31,(トップへ戻る)

(3)保健室登校の子どもに対する援助のあり方

美馬 千恵・小坂 浩嗣

The ways of supporting to the child attending in a school infirmary

MIMA,Chie & KOSAKA,Hirotsugu

要 約
 心の健康問題に対して養護教諭の教育相談機能が求められている。不登校の子どもに対する保健室登校は,子どもの心の居場所としての保健室で子どもの心の成長を支援し,段階的な教室再登校の援助方法として機能している。本研究では保健室登校の子どもに対する援助事例調査から,養護教諭の行うカウンセリングの要素を用いた援助方法についてその特徴を明らかにし,養護教諭の援助のあり方を探りたい。事例調査の質問紙は,門田(1996)による保健室登校支援モデルを基に作成した。門田モデルとは,特定のカウンセリングの技法に固執せず,またパーソナリティーの変容をめざすというより,問題解決(症状克服)指向を柱とする。本研究の結果,養護教諭は保健室登校の子ども,保護者,教職員に対して,門田モデルと同様のカウンセリング技法を駆使して援助効果を上げている。子どもに対する技法では,プレイセラピーや心理テスト,学習へのレディネスの頻度が多いのが特徴的であった。

キーワード:保健室登校,養護教諭,教育相談機能,保健室登校援助モデル
p32-p45,(トップへ戻る)

(4)児童の睡眠慣習が疲労感に及ぼす影響と健康教育の実践

中田 美子・田中 雄三

The Effect of Schoolchildren's Sleeping Habits on Their Tired Feeling and Its Compensatory Health Education Program
NAKATA,Yoshiko &TANAKA,Yuzo

要 約
 本研究では,児童の睡眠習慣の実態を明らかにし,睡眠習慣が疲労感に及ぼす影響を検討するとともに,生活リズムに関する健康教育の授業実践を行い,その効果を測定している。小学3年生から6年生までの児童598名を対象とした質問紙調査の結果,小学生中学年の平日就床時刻は21時57分,高学年22時28分,平日起床時刻は中学年6時50分,高学年6時54分であった。中学年の休日就床時刻は22時35分,高学年23時11分,休日起床時刻は中学年8時2分,高学年8時34分であった。児童の睡眠習慣は遅寝の傾向にあり,それによって日中の疲労感が引き起こされていることが明らかになった。また,小学3年生を対象とした生活リズムに関する健康教育の授業実践の結果,平日就床時刻が21分早くなったことが確かめられた。以上の結果から,今後児童の発達段階に応じて継続的,計画的に生活リズムに関する健康教育を行っていくことが重要であると考えられた。

キーワード:児童,睡眠習慣,疲労感,健康教育
p46-p59,(トップへ戻る)

(5)家族療法的視点による教育相談−ロールプレイの分析をもとに

谷 哲・山下 一夫

The educational counseling from view point of family therapy -Through the analysis of role play -

TANI,Akira & YAMASHITA,Kazuo

要 約
学校現場の様々な事象が「問題」とされる時,教師や生徒・保護者は,それぞれの思いから「原因」とされるものを作り上げ,時にはそれに囚われてしまい,解決への努力を空回りさせることがある。1950年代以降の家族療法では,このような「問題」を取り巻く環境全体に働きかけ,変化を起こすことによって「問題」の解消を図る方法が探られた。こうした視点は,様々な環境要因がからむ学校現場の事象にも適用できると考えられる。そこで本研究では,教育相談活動の日常的な形をロールプレイによって再現し,家族療法的な視点による面接と考察を通して,その有効性を検討したいと考えた。

キーワード:家族療法,教育相談,ロールプレイrole playing
p60-p73(トップへ戻る)

(6)2003年の世界の不登校研究の概観−PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から−

佐藤正道

A Review of the Studies about Non-Attendance at School,School Phobia, and School Refusal in the World(2003)
SATO, Masamichi
要 約
 日本の不登校の問題を考える上で,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から 1年毎にERICおよび PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance,school dropouts,school phobia ,school refusal を持つ文献を分類してきている。その継続研究として2003年の文献98件について取り上げ分類し検討を加えた。
Key words : school attendance, school dropouts, school phobia, school refusal
p74-p109(トップへ戻る)

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