鳴門生徒指導研究第12号(2002)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 12,2002,August,ISSN 0917-5180

ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第12号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワードを各論文毎に掲載します。


1.日本語のタイトルと著者名
@スクール・カウンセラー活用に関する中学生とその保護者の意識について−信頼感とソーシャル・サポートの視点から−
 谷川 健二・葛西真記子

A中学生におけるグループ・カウンセリングの実証的研究
  −予防的かかわり方を求めて−
稲田ひとみ・葛西真記子
B教師特有のビリーフと生徒との心理的距離の関連性
−中学生の質問紙調査を通して−
栗原 正行・葛西真記子
C自己愛心性の研究(2)−恥感情と攻撃性を測定する質問紙の研究− 落合 佐敏・阪 武彦
D2001年の世界の不登校研究の概観−ERICおよびPSYCHOGICAL ABUSTRACTSの文献から− 佐藤 正道


2.各論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワード
 

(1)スクール・カウンセラー活用に関する中学生とその保護者の意識について−信頼感とソーシャル・サポートの視点から−

谷川 健二・葛西真記子

Junior Highschool Students' and Parents' Attitude Toward Activities of School Counselors
〜From the Viewpoint of the Sense of Reliance and Social Support〜

TANIGAWA,Kenji & KASAI Makiko

要約 
スクール・カウンセラー(以下S・Cと略す)活用について,S・Cの活用を妨げている要因を明らかにすることを目的として,中学生とその保護者を対象に実態調査(調査T)を実施した。その結果,S・Cに相談するかどうかには,他者への不信感,周りのサポートが関係しているのではないかと推察した。そして,『人に対して不信感が強い人はS・Cに相談しないのではないか』,『自分の周りにサポートしてくれる人が多いと思っている人は,S・Cに相談しないのではないか』という仮説を立てた。調査Uでは,悩みの大きさ,及びS・C活用について,信頼感尺度とソーシャル・サポート尺度との関連性について検討した。その結果,『人に対して不信感が強い人はS・Cに相談しないのではないか』という仮説とは異なり,不信感が強い人の方が相談してみたいと思っていることが明らかになった。ソーシャル・サポートについては,仮説はある程度実証できたが,あまり有意な結果として表れなかったので,今後さらに検討を要する結果となった。

キーワード:信頼感,スクール・カウンセラー,中学生

p3-p17,(トップへ戻る)


(2)中学生におけるグループ・カウンセリングの実証的研究−予防的かかわり方を求めて−

稲田ひとみ・葛西真記子

An Empirical Study of Group Counseling of Junior Highschool Students
〜In Search of Preventive Interaction〜

IKEDA,Hitomi & KASAI Makiko

要約
同性の友人との親密な関係を経験しておく必要がある中学生だが,対人関係能力の低下から孤独感を深め,閉塞感を強めている。その予防的かかわり方となる可能性を求めて,仲間との連帯感や親密性の得られやすいグループ・カウンセリング(継続型ベーシック・エンカウンター・グループ)の場を校内に設定し,その効果を質問紙によって実証しようと試みた。その結果,@何らかの心理的援助を求めて,不適応感を強めた生徒が希望してきた。Aグループ・カウンセリング参加者には下位因子の「自尊感情」の高まりや「被侵害・不適応」の軽減,「友人からの支え」の保持が見られた。以上のことより,この場の意義を自尊心を失わない,程よい近さの“非日常”にあるとし,安心してサポートの得られる“依存の場”と考えられた。

キーワード中学生,継続型,グループ・カウンセリング

p18-p31,(トップへ戻る)

(3)教師特有のビリーフと生徒との心理的距離の関連性−中学生の質問紙調査を通して−

栗原 正行・葛西真記子

Relationships between Teachers' Belief and Students' Psychological Closeness

KURIHARA,Masayuki & KASAI Makiko

要約
中学生期は、心身共に著しい発達が見られ、また、社会的にも今までの子ども時代とは違った立場に立たされる。そして、身体的な面においても心理的な面においても不安定な時、「嵐の時代」を迎えるのである。そんな中、友人関係をはじめ、親子や教師との関係は、心理的な面で多大な影響力を及ぼしてくる。そこで、本研究は、教師がもつビリーフが生徒に及ぼす影響と生徒が教師に感じる心理的距離との関連性を明らかにしたいと考えた。そこで、教師特有のビリーフと生徒と教師との心理的距離に関する質問紙調査を実施した。その結果、生徒が教師に対して感じる信頼感や親密感、威圧感や緊張感は、教師のビリーフをどのような形で表出していくかによって、生徒との人間関係に大きく影響を及ぼすことがわかった。また、そのビリーフの柔軟性が生徒との心理的距離の関係における要因になっていることがわかった。この結果が、教師と生徒の関係作りに新たな視点を提起することができたと思われる。

キーワード:ビリーフ、心理的距離、中学生、人間関係

p32-p45,(トップへ戻る)

(4)自己愛心性の研究(2)−恥感情と攻撃性を測定する質問紙の研究−

落合 佐敏・阪  武彦

A Study of Narcisstic Personality (2) 〜Construction of Shame Scale and an Aggression Scale〜
OTIAI,Satoshi & SAKA,Takehiko

要約
最近の臨床研究では,自己愛人格は,誇大感が前景に現れやすい「無関心型」自己愛人格と,誇大感はあっても普段は背景に隠れている「過敏型」自己愛人格とに大きく分類されるようになった。本研究では,分類された自己愛人格の2つのタイプの特徴を,攻撃性と恥感情によって特徴付けるための質問紙の検討を行った。
攻撃性と恥感情についてはその捉え方に諸説があり,質問紙も様々ある。そのため,その理論を整理し自己愛人格との関連について検討した後,実際に質問紙の検討を行った。質問紙は,攻撃性についてはその多様な側面が測定できる日本版Buss−Perry攻撃性質問紙(BAQ)を利用し,恥感情についてはいくつかの質問紙を参考にして開発し,信頼性・妥当性を検討した。
全日制高校に通う高校生589人を対象に,日本版Buss−Perry攻撃性質問紙(BAQ),恥についてのアンケートを同時に実施した結果,4つの下位因子からなる「攻撃性」尺度と,1つの因子からなる「対人過敏傾向」尺度と2つの下位因子を持つ「恥過敏傾向」尺度が作成された。いずれの質問紙についても,内的信頼性と構成概念妥当性が確認された。

キーワード:自己愛,コフート理論,攻撃性,恥感情

p46-p59,(トップへ戻る)

(5)2001年の世界の不登校研究の概観−ERICおよびPSYCHOGICAL ABUSTRACTSの文献から−

佐藤 正道

A Review of the Studies about Non-Attendance at School,School Phobia,and School Refusal in the World(2001)

SATO,Masamichi

要約
 日本の不登校の問題を考える上で,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から 1年毎にERICおよび PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendanceschool dropoutsschool phobiaschool refusalを持つ文献を分類してきている。その継続研究として2001年の文献92件について取り上げ分類し検討を加えた。

キーワード:school attendance, school dropouts, school phobia, school refusal

p60-p85,(トップへ戻る)

このページに掲載された内容はすべて鳴門生徒指導学会に帰属するもである。

Copyright 2001 Naruto Association of School Guidance and Counseling:Last Updated 2002.10.12