鳴門生徒指導研究第11号(2001)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 11,2001,August,ISSN
0917-5180
ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第11号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワードを各論文毎に掲載します。
1.日本語のタイトルと著者名
@ガイダンス機能を生かした心の教育の創造に関する研究 池尾みどり・徳永悦郎
A自己愛心性の研究(1) −Kohut理論による自己愛人格目録の研究−
落合佐敏・阪 武彦
Bシステムズアプローチの動向 ―文献研究をもとに− 相模健人・田中雄三
C学校内観法による中学生の親子関係の変容についての研究 坂本文隆・葛西真記子
D前青春期における孤独感の類型とその特徴 −小学校4・5・6年生を対象に質問紙調査を用いて− 田上 尚・山下一夫
E2000年の世界の不登校研究の概観
-ERICおよびPSYCHOLOGICAL
ABSTRACTSの文献から- 佐藤正道
2.各論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワード
@ガイダンス機能を生かした心の教育の創造に関する研究
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池尾みどり・徳永悦郎
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The Effectiveness of Guidance-Oriented "Mind Education" towards
Creativity |
Ikeo,Midori and Tokunaga,Esturou |
要約
心の教育の充実が叫ばれているにもかかわらず,心の荒廃を感じさせる出来事が相次いでいる。今こそ,多様な視点から心の教育を見直す必要に迫られていると考える。そこで,本研究では,「指導と共感のバランス」「ガイダンス機能の充実」の2点を重視し,心の教育に関わる単元を構想した。特にガイダンス機能については,ガイダンスを適応指導と生き方指導の二つの側面から捉える児島の考えに依拠した。また,@適応指導と生き方指導の統合をねらう。A適応指導では,自分をありのままに受け入れ,自分のよさに目を向けることをねらいとする。B生き方指導では,自分の将来に向け,どのように行動していったらよいか考えさせることをねらいとする。C適応指導は特別活動において,生き方指導は道徳の時間において指導するが,各々の役割を相互補完的に生かすことをねらいとするという4点を単元構想の視点とした。
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キーワード:心の教育,ガイダンス機能,適応指導,生き方指導,自尊感情
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p20-p33,(トップへ戻る)
A自己愛心性の研究(1) −Kohut理論による自己愛人格目録の研究− |
落合佐敏・阪 武彦 |
A Study of Narcissistic Personality (1) |
Ochiai,Satoshi and Saka,Takehiko |
要約
最近の臨床研究では,自己愛人格は,傲慢で攻撃的かつ自己陶酔的な自己愛人格と,他人からの批判に敏感で,容易に傷つけられたと感じる自己愛人格に分類されるようになった。しかし,従来自己愛人格の研究で用いられた自己愛人格目録(NPI)では,自己愛人格の誇大感は測定できても,その脆弱性は測定できなかった。その点,「誇大自己への固着」因子と「理想化の障害」因子を持つKohut理論による自己愛人格目録では,自己愛人格の持つ2面性を立体的に捉えることが出来,実証研究でも自己愛の分類が可能であると考えられた。本研究では,Kohut理論による自己愛人格目録の「誇大自己への固着」因子と,従来用いられてきたNPIベースの質問紙とが,自己愛の同じ側面を測定しているかを検証することを目的とした。
全日制高校に通う高校生110人を対象に,阪大版NPIとKohut理論による自己愛人格目録を同時に実施し,それぞれを因子分析してNPIの4因子とKohut理論による自己愛人格目録の14項目間の相関を見たところ,両者は非常に類似した構造をしていることが確認された。その相関係数の高さは,阪大版NPIとKohut理論による自己愛人格目録の「誇大自己への固着」因子との併存妥当性および構成概念妥当性を証明するのに十分な値であるが確認された。したがって,Kohut理論による自己愛人格目録の「誇大自己への固着」因子と,従来用いられてきたNPIベースの質問紙とが自己愛の同じ側面を測定していることが検証された。
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キーワード:自己愛,コフート理論,自己愛人格目録 |
p34-p48,(トップへ戻る)
Bシステムズアプローチの動向 ―文献研究をもとに− |
相模健人・田中雄三 |
The Movement of the System Approach Based on the Literature Study |
Sagami,Takehiko and Tanaka,Yozo |
要約
近年,心理臨床の分野において,システムズアプローチが注目されている。本研究ではシステムズアプローチの発展とその現状について文献研究をもとに考察を行った。システムズアプローチは家族療法,ブリーフセラピーの分野で研究が盛んである。家族療法の主なものに,戦略的家族療法,MRIモデル,構造家族理論,ミラノ派システミック家族療法があげられ,ブリーフセラピーの主なものとして,解決志向アプローチ,ナラティブ・セラピーがあげられる。これらはスクールカウンセリングにも応用されており,これからの研究が期待されるところである。
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キーワード:システムズアプローチ,家族療法,ブリーフセラピー,スクールカウンセリング |
p49-p64,(トップへ戻る)
C学校内観法による中学生の親子関係の変容についての研究 |
坂本文隆・葛西真記子 |
An Effect of School Naikan Therapy on the Parent-Child Relationship. |
Sakamoto,Fumitaka and Kasai,Makiko |
要約
中学生の親子関係を親からの依存と自立の再構成という視点から,中学校現場で学校内観法を実施した。そしてその効果を事前,事後,その後(2ヶ月後)の3回,教研式FMCI親子診断検査の一部を用いて測定した。また,内観の深さ尺度,内観ワークシート,振り返りシートの分析を行い,その関係を検討した。その結果,親に対する気持ちや態度の変化が約4割の生徒に見られた。親子関係の変容は全体ではみられなかった。内観を深くできたと感じた生徒には親子関係の変容が見られた。
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キーワード:学校内観法,親子関係,中学生 |
p65-p79,(トップへ戻る)
D前青春期における孤独感の類型とその特徴 −小学校4・5・6年生を対象に質問紙調査を用いて− |
田上 尚・山下一夫 |
Type and Characteristics of the Soliterity in Preadolescence |
Tagami,Takashi and Yamashita,Kazuo |
要約
小学校4・5・6年生215名を対象に、孤独感類型判別尺度を用いて4類型に分けた上で、攻撃性・子どもの親に対する信頼感・非行への親和性・見捨てられ不安の傾向を通して各類型の特徴を調べた。その結果、主に以下の点が明らかになった。@:攻撃性尺度第1因子「いらだち」では類型間で有意差が見られ、A・D型はB・C型よりも「いらだち」が低い。A:攻撃性尺度第2因子「敵意」では類型間で有意差が見られ、A・D型はB・C型よりも「敵意」が低い。B:「子どもの親に対する信頼感」では類型間で有意差が見られ、A・D型はB・C型よりも「子どもの親に対する信頼感」が高い。C:「非行への親和性」では類型間で有意傾向および有意差が見られた。C型が非行への親和性が有意に高い。D:「見捨てられ不安の傾向」では類型間で有意差が見られ、B・C型は見捨てられ不安の傾向が高く、A・D型は低い
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キーワード:孤独感、前青春期、攻撃性、親子関係 |
p80-p93,(トップへ戻る)
E2000年の世界の不登校研究の概観 −ERICおよびPSYCHOLOGICAL
ABSTRACTSの文献から− |
佐藤正道 |
A Review of the Studies about Non-Attendance at School,School Phobia,and
School Refusal in the World(2000) |
Sato,Masamichi |
要約
日本の不登校の問題を考える上で,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から 1年毎にERICおよび
PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance,school dropouts,school phobia,school refusalを持つ文献を分類してきている。その継続研究として2000年の文献80件について取り上げ分類し検討を加えた。
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キーワード:school attendance, school dropouts, school phobia,
school refusal |
p80-p122,(トップへ戻る)
このページに掲載された内容はすべて鳴門生徒指導学会に帰属するもである。
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Guidance and Counseling:Last Updated 2001.10.01