鳴門生徒指導研究第11号(2001)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 11,200,August,ISSN 0917-5180

ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第10号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワードを各論文毎に掲載します。


1.日本語のタイトルと著者名
@風景構成法による児童理解とティームティーチングによる児童支援の実際
 阿部 恵子・山下 一夫

A教師の自己開示が生徒との人間関係に及ぼす影響 市川 公雄・田中 雄三
B中学生の問題行動と学級担任としての支援のあり方 新見員子・田中雄三
Cカウンセリングマインドに関する文献研究 仁田 勝子
Dスクールカウンセリングにおいて問題行動を起こす児童に『虫退治』の技法を用いた1例 相模 健人・田中 雄三
E学級におけるリーダー体験の意義に関する研究−イベントづくりの実践を通して−斉藤範彰・徳永悦郎
F1999年の世界の不登校研究の概観
  -ERICおよびPSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から- 佐藤正道


2.各論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワード
 

@風景構成法による児童理解とティームティーチングによる児童支援の実際

阿部 恵子・山下 一夫

The Ways of Understanding Children through The Landscape Montage Technique and Helping Children by Teem-Teaching

Abe,Keiko and Yamashita,Kazuo

要約 
本研究では、児童一人一人の表面的な行動観察だけでなく、風景構成法という臨床心理学の知見の一つを学校現場に適用し、児童のより内面的な発達的特質と個人の特性の両面に注目した観察をし、その観察をもとに、ティームティーチングによる児童の心理療法的な支援のあり方を明らかにするものである。学級で支援が必要と考えられる児童について、風景構成法の描画を縦断的に用いたことで、より児童の内面的理解が深まりその変化が捉えやすくなったと考える。また、ティームティーチングの形態で担任以外の教師が心理療法的支援を行うことも可能であるといえよう。「個」に視点を置くことで、児童が学校生活に適応して行動することだけを求めるのでなく、心の安定をはかり内的な成長を見守る支援も大切であると理解された。

キーワード:児童の内面的理解、風景構成法、ティームティーチング、心理療法的支援

p4-p17,(トップへ戻る)


A教師の自己開示が生徒との人間関係に及ぼす影響

市川 公雄・田中 雄三

The Infruence of Teachers' Self disclosure on The Relationship between Teachers nad Students.

Ichikawa,Kimio and Tanaka,Yozo

要約
本研究は授業時に行った教師の自己開示が生徒との人間関係に及ぼす影響を明らかにすることを目的として行った。3回の質問紙調査を分析した結果,自己開示を行った実験群で教師の「無条件尊重」に関する態度への生徒の認知が肯定的に変化した。しかし,それ以外の因子では有意な変化は見られなかった。また人間関係を上昇させるまではいかないが,対照群に見られた人間関係の有意な下降を抑える効果はあったと考えられる。
一斉授業だけの人間関係では,生徒の教師への認知は下がる傾向にある。しかし自己開示とともに机間巡視を行い,生徒とのコミニュケーションを増やして行けば人間関係は向上していくことが確認された。こうした結果は,これまでの授業研究や教材研究のあり方に新たな視点を提起することができたと思われる。

キーワード:中学生,自己開示,人間関係

p18-p31,(トップへ戻る)

B中学生の問題行動と学級担任としての支援のあり方

新見員子・田中雄三

The Problem Behaviors among Junior High School Students and the Ways of Supporting by the Homeroom Teachers.

Niimi,Kazuko and Tanaka,Yozo

要約
中学時代は非常に不安定で問題が起こりやすい時期である。昨今,中学生の問題行動は多様化,複雑化,悪質化の傾向にあり教師は生徒の心理を理解し,心を通わせることに試行錯誤を繰り返している。特に,問題を示す生徒にとって学級担任の果たす役割は大きいと思われる。そこで,中学生の問題行動に目を向け,彼らが問題行動に至った背景や心理,問題行動の意味するものについてを明らかにしたいと考えた。さらに,そのような生徒に対して学級担任としてどのような関わりや支援をすることが有効であるか事例を項目に従ってまとめ,検討を加え考察を行った。まず,自験例として筆者自身が過去に担任した際,特に印象に残っている問題行動を示す生徒の事例3事例を提示し考察を加えた。次に,中学教師にインタビューを行い問題行動を示す生徒の事例を収集し,考察を加えた。その結果,考察においていくつかの共通点を見いだすことができた。

キーワード:反社会的問題行動,非社会的問題行動,学級担任,支援,生徒理解

p32-p46,(トップへ戻る)

Cカウンセリングマインドに関する文献研究

仁田 勝子

A Study of "Counseling Mind ".

Nita,Katsuko

要約
カウンセリングマインドという言葉は和製英語であり、誰が最初にこの言葉を使ったのか特定することは困難である。1970年代に、文部省が学校にカウンセリングを導入するようにしたことや、1980年代に、東京都教育委員会が「すべての教師にカウンセリングマインドを」というキャンペーンを行ったことから、学校現場に広がるようになったといえる。カウンセリングマインドの定義は人によって異なるが、「カウンセラーの態度・心構え」とする説、「教師の態度・心構え」とする説、「人間としてのあり方・生き方」とする説の大きく3つに分けることができる。それらのほとんどが、ロジャーズのカウンセラーとしての3条件を基にしている。

キーワード:カウンセリングマインド、カウンセリング、ロジャーズ、カウンセラー、教師

p47-p60,(トップへ戻る)

Dスクールカウンセリングにおいて問題行動を起こす児童に『虫退治』の技法を用いた1例 

相模 健人・田中 雄三

A Case Study of Psychotherapeutic Technique ,"the Insect Extermination"to a Maladjusted Child in a School Counseling Setting

Sagami,Taketo and Tanaka,Yozo

要約
 小学3年生女子の問題行動の事例に対して、その家族及び担任を対象に東(1997)(1)の考案した『虫退治』の技法を用いて面接を行った。3回の面接で主訴の改善が見られ終結となった。面接過程を相模・田中(2000)の考案した「コラボレーション面接記録法」によって再構成し、考察を行った。その結果、 『虫退治』の技法を用いることによって、大人たちが子どもを矯正するという従来のストーリーから、子ども自身から問題を切り離し、それを克服するというストーリーに変えることができた。家庭や学校が連携し、子どもを取り巻くシステムを変更することによって、子ども自身が自発性を持って問題を克服することができた。

キーワード:スクールカウンセリング、『虫退治』、問題の外在化、システム・アプローチ

p61-p71,(トップへ戻る)

E学級におけるリーダー体験の意義に関する研究−イベントづくりの実践を通して− 

斉藤範彰・徳永悦郎

The Study of the Leadership Experience in a Classroom.

Saito,Noriaki and Tokunaga,Etsurou

要約
本研究では、児童一人一人にリーダー体験が必要であるとの立場から、リーダー育成の授業単元を構想し、学級でのイベント的体験活動においてリーダー活動を支援した。そして、リーダー体験がどのように個の成長や学級の雰囲気づくりに関わるのか等、リーダー育成の果たす役割について明らかにすることを研究の目的とした。実験授業及び体験活動を実施した結果、その学習成果として、以下の3点が明らかになった。@リーダー活動に対する不安が軽減されただけでなく、リーダーに就くことに対する自信が生まれ、「リーダー活動に対する意欲」を高めることができた。Aリーダーを体験したことにより、「リーダー活動に対する気づき」に広がりと深まりを見出すことができた。Bリーダーを体験した児童の人間的な成長が窺えた。また、学級の全児童がリーダーを体験したことによって、児童相互の信頼関係や一人一人の集団への関わりが深まり、学級集団の雰囲気に望ましい変容を促進することができた。

キーワード:リーダーシップ、体験活動、リーダー会、イベント

p72-p85,(トップへ戻る)

F1999年の世界の不登校研究の概観-ERICおよびPSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から-

佐藤正道

A Review of the Studies about Non-Attendance at School,School Phobia,and School Refusal in the World(1999)

Sato,Masamichi

要約
日本の不登校の問題を考える上で,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から 1年毎にERICおよびPSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance,school dropouts,school phobia ,school refusal を持つ文献を分類してきている。その継続研究として1999年の文献68件について取り上げ分類し検討を加えた。

Key words : school attendance, school dropouts, school phobia, school refusal

p86-p109,(トップへ戻る)

このページに掲載された内容はすべて鳴門生徒指導学会に帰属するもである。

Copyright 2000 Naruto Association of School Guidance and Counseling:Last Updated 2000.09.04