鳴門生徒指導研究第9号(1999)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 9,1999,August,ISSN 0917-5180

ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第9号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワードを各論文毎に掲載します。


1.日本語のタイトルと著者名
@開かれた学校と生徒指導
 藤枝 博

A理科実験が生徒に与える心理的作用 宮崎秀樹・田中雄三
B道徳学習の単元化に関する研究
 −「総合単元的な道徳学習」に焦点を当てて−六車信二・徳永悦郎
C児童の性格タイプによる「ほめ方」「叱り方」 永井 武・田中雄三
D不登校児童に対して夫婦間に焦点をあてた家族療法を行った事例 相模健人
E不登校児童生徒の自立を目指すスモールステップ作りと事例研究 田岡吉加・田中雄三
F子どもの心をとらえる「自由な空間」の研究 辻 映子・田中雄三
G1998年の世界の不登校研究の概観
  -ERICおよびPSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から- 佐藤正道


2.各論文のタイトル(英文タイトル)・著者名・要約及びキーワード
 

@開かれた学校と生徒指導

藤枝 博

Practical Use od School Counselors and the Ways of School Guidance

Fujieda,Hiroshi

要約 
いじめ・不登校・非行などの教育課題に対し,保護者や関係機関等との連携による開かれた学校づくりの必要性が指摘されている。本論文は,開かれた学校として新たに組織した会に焦点をしぼり,生徒指導の在り方について,中学校の実践を事例として論考した。従来からある教職員の「生徒指導部会」をより活性化するとともに,新たに生徒会活動を取り入れた「人権擁護委員会」と,学校・家庭・地域との連携を図るための「健全育成会」が組織された。人権擁護委員会では,生徒会が実施したいじめや茶髪に関する生徒へのアンケートをもとに,生徒・教職員・保護者が議論を深めた。特に,茶髪問題は保護者ヘアンケートを実施するまでに至り,全校あげての議論となった。健全育成会では,総会とともに,小学校区別健全育成会を開催し,その校区に出向き,地域の保護者,民生児童委員,補導センター指導主事,小学校教師,本中学校教師らが参加し,問題行動を示す子どもについて率直に話し合った

キーワード:開かれた学校,生徒指導,人権,スクールカウンセラー茶髪

p3-p15,(トップへ戻る)


A理科実験が生徒に与える心理的作用

宮崎秀樹・田中雄三

Psychological Effects of Science Experiments

Miyazaki,Hideki and Tanaka,Yozo

要約
中学生の1日は学校生活に約10時間が費やされるとともに,下校後は塾へも通い忙しい毎日を送っている。このような生活の中で中学生はストレスを高め,現実から逃避し問題行動を起こしていると考えられている。このような状況の中で,中学生の登校拒否生徒の増加は著しく,いじめや暴力行為も近年増加している。問題行動を起こす生徒の心性を,稲村(1988)は水が入ったコップ(準備状態)に発祥契機としての水が注がれ,あふれる状態が問題行動の発生であると比喩的に述べている。しかし,学校の中でこのような生徒指導的な間題に配慮した教科指導が行われていることは少ない。本研究では,この点に着目し,生徒指導的な側面に配慮することを,生徒の自己決定力,自己存在感を育て,生徒の心理的な安定を目指して授業を構成することととらえ,理科の授業の中で,生徒自身に決定する場をより多く設定でき,生徒ひとりひとりが実際に実験に取り組めるように個人実験を設定した。この授業の前後で心理的変容を調査し,生徒にとって充実感が高まる授業がどのようなものかを検討した。

キーワード:生徒指導,教科教育,理科実験,充実感。

p16-p29,(トップへ戻る)

B道徳学習の単元化に関する研究−「総合単元的な道徳学習」に焦点を当てて−

六車信二・徳永悦郎

Programming the Units in Moral Learning

Muguruma,Shinji and Tokunaga Etsuro

要約
本研究では,平成8・9年度文部省指定「豊かな心を育む教育推進事業実践研究協力校」から収集した資料をもとに,@「総合単元的な道徳学習」の主題構成の特徴を明らかにする,A単元学習の視点から「総合単元的な道徳学習」の在り方を分析する,B「総合単元的な道徳学習」の有用性と課題についてまとめるの3点を目的とした。
 その結果,「総合単元的な道徳学習」の有用性として,@体験活動を生かした道徳学習の展開,A道徳的実践力と道徳的実践の融合による両者の高まり,B計画段階からの各教育活動で行う道徳教育のみきわめ,その他4点が明らかになった。課題として,@単元の中に組み込む教科,特別活動の時間数までも考えた計画づくりの難しさ,A「道徳の時間」の特質を生かした「単元の道徳の時間」の指導の必要性,その他2点が明らかになった。そして,「総合単元的な道徳学習」の今後の展開の在り方として,「総合単元的な道徳学習」の有用性を生かし,その課題を克服するために,「総合的な学習の時間」における道徳学習の展開が期待された。 

キーワード:総合単元的な道徳学習,主題構成,単元学習,総合的な学習の時間。

p30-p43,(トップへ戻る)

C児童の性格タイプによる「ほめ方」「叱り方」

永井 武・田中雄三

The Ways of "Prasing"and "Scolding"According to Personality Types.

Nagai,Takeshi and Tanaka,Yuzo

要約
本研究では,児童の性格夕イプによる教師の「ほめ方」「叱り方」表現に対する心理的反応の違いを質問紙調査によって分析検討し,児童の性格クイプに応じた望ましい「ほめ方」「叱り方」表現の在り方を明らかにすることを目的とした。その結果,教師の「ほめ方j「叱り方」表現に対する児童の心理的反応は,性格タイプによって異なることが明らかになった。また,小学校高学年児童に対して最も効果的なほめ方表現は「感謝」であり「スキンシッブ」「人格評価」は望ましくないこと,最も効果的な叱り方表現は「感情」であり「体罰」「皮肉」は望ましくないことが明らかになった。学校教育において,教師のほめ・叱りが有効に機能するためには,教師は,児童の性格を十分に理解し,それに応じたほめ方・叱り方を工夫する必要がある。 

キーワード:ほめ方,叱り方,質問紙,YG性格検査

p44-p57,(トップへ戻る)

D不登校児童に対して夫婦間に焦点をあてた家族療法を行った事例 

相模健人

A Case Study of School Refusal Child using Family Therapy Approach focused on Parents' Relationship

Sagami,Taketo

要約
不登校児童の家族に対して家族療法を行った事例を報告し,考察を行った。夫婦の言い合いとIP(Identified Patient:患者とされた人)の行動という行動パターンを変えることを試み,夫婦の相違点と共通点を指摘し,夫婦間の新たな連合を形成することで母子分離が行え,両親が不登校に対する態度を明確に決定することが出来た。

キーワード:家族療法,不登校,夫婦連合。

p58-p71,(トップへ戻る)

E不登校児童生徒の自立を目指すスモールステップ作りと事例研究 

田岡吉加・田中雄三

Small Steps Aiming at Autonomy of School Refusal Children and Case Studies.

Taoka,Yoshika and Tanaka,Yuzo

要約
本研究では,不登校児童生徒への支援の一つとして,適応指導教室における児童生徒の小さな変化を目盛りとしたスモールステップとダイヤグラムを作成した。不登校への支援として,強制的ではなく,ただ「待つ」だけでもなく,子どもの小さな変化を肯定的に認めていくことが大事なのではないかと考えている。スモールステップは,自己信頼感・自己表現力・他者への目・学校杜会との関係・身体について・学習仕事活動の6軸で子どもの状熊を捉えている。指導員がクリアできたと感じた項目をスモールステップでチェックし,ダイヤグラムによってそれを視覚化する。2力所の適応指導教室で事例研究を行い検証した。結果として,横断的にスモールステップでチェックされた項目や転記されたダイヤグラムの形や,縦断的な毎月の観察による変化から,児童生徒の状態を把握でき,どういう支援が必要かが理解された。

キーワード:不登校,適応指導教室,スモールステップ。

p72-p85,(トップへ戻る)

F子どもの心をとらえる「自由な空間」の研究 

辻 映子・田中雄三

A Study of "Free Spaces",which Capture Children's Hearts

Tsuji,Eiko and Tanaka,Yuzo

要約
子どもは,学校の中のどのようなところに居場所を見つけているのだろうか。本研究は子どもの心をとらえる空間にはどのような特性があるのかを明らかにし,子どもの心をとらえ,癒やすことのできる空間を考慮した学校像を描き出そうとするものである。そのために,子どもが学校における空間特性をどのように感じているかを明らかにしようとした。その結果,学校内における場所の特性,年齢や性別により子どもが好む場所に差違があることや,悲しい気分の時には,子どもは物陰のような所に「居場所」を求めるということが分かった。このような調査結果は,学校建築というハード面からも子どもの「居場所づくり」ができることを示している。また,学校空間にかかわる様々な子どもの気持ちは,子どもの学校での「居場所づくり」という観点から生徒指導に生かしていくことができるものと考える。

キーワード:学校空間,居場所,自由にして保護された空間(カルフ)。

p86-p99,(トップへ戻る)

G1998年の世界の不登校研究の概観-ERICおよびPSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの文献から-

佐藤正道

A Review of the Studies about Non-Attendance at School,School Phobia,and School Refusal in the World(1998)

Sato,Masamichi

要約
日本の不登校の問題を考える上で,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から 1年毎にERICおよび PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance,school dropouts,school phobia ,school refusal を持つ文献を分類してきている。その継続研究として1998年の文献51件について取り上げ分類し検討を加えた。

Key words : school attendance, school dropouts, school phobia, school refusal

p100-p121,(トップへ戻る)

このページに掲載された内容はすべて鳴門生徒指導学会に帰属するもである。

Copyright 2000 Naruto Association of school Guidance and Counseling:Last Updated 2000.08.11