地域水泳指導者から見た学校水泳の現状と課題

中島茂輝 : いしいドーム

注）：「いしいドーム」は徳島県名西郡石井町の町営体育施設。町はこの施設の維持管理とプログラムサービスの提供業務を指定管理者制度を活用して民間スポーツクラブに委託。講師の中島氏はその民間スポーツクラブの職員であり、この町営プールでの水泳指導と管理運営を担当されています。

講演内容

• 学校プール変化してきている。石井町内の中学校ではプールの閉鎖・プールを使わない学校が増え、学校で水泳の授業が出来ないためにいしいドームに依頼している。
• プールの閉鎖は金銭的問題、改修費用の問題があるとされる。
• 教師が率先して水泳指導をしている学校は児童･生徒の水慣れしやすい。
• 教師がプールサイドから声だけで指導している学校では児童･生徒の水慣れしにくい
  
• ある中学校では、小学校の時に水泳授業を重点的学校の出身の生徒と、小学校の時に余り水泳を重点的にしていない学校の出身の生徒では、水泳に対する意識が全く違っていた。
• 教師に「どのような授業をしたら良いのか」を聞くと「適当に泳がしといてください」と返事が返ってきた。
• 学校が学校の行事で委託した民間のスイミングスクールにおいて、生徒をけなすような、子供がショックを受けるような発言をした指導者がいた。

• 学校のプール事情が変化してきている中で、民間のスイミングスクールに委託する時は注意が必要である
  

講演内容に関する質問・意見

• N氏（香川県中学校保健体育現職教諭）
  • 体育の教師が水泳の専門家であるとは限らないので水泳の授業を水泳の専門家であるインストラクターに頼むのは理解できる。
  • 年間で水泳が2時間では少なすぎる。現行指導要領で年間90時間の体育の時間で一つの単元で８時間が標準とすると、水泳も最低８時間が標準。学校や委員会と相談して8時間は確保するべき。
  • 一般的には、水泳の授業を8時間ぐらいで計画し、水泳をする前の2ヶ月ほど前から体育主任と授業計画等事前打ち合わせをする必要がある。例えば7月から水泳をするのでは5月くらいから毎時間の指導案を考えたら効果的である。

• Y氏（徳島県中学校保健体育現職教諭）
  • プール・プールサイドの状態が悪い。
  • 授業は競技向上に向けて詰めた授業は難しい。
  • 小学校高学年から中学校では思春期の時期で自分の体を見られたくないという理由で見学する生徒が多い。
  • はじめのほうの授業ではビーチボールをしたり、碁石拾いをしたり騎馬戦をやったりして水に慣れることから始め、後に泳がすといった方法をとっていた。
  • 新しい指導要領において、バタフライや背泳ぎなどが新たに入るなど内容が増えたが、それを実施するためのプール施設の改修などは不十分である。

    （その発言に対する質疑応答）

  • 『学校の授業で来る生徒で恥ずかしがって入らない生徒への対応法について』
    • Y氏「どうしたの？」「なぜ服を着ているの？」「次の時には泳ごうね」など声かけをする。
  • （水慣れより心の水慣れが出来ていない。水着で人前にでることは人間形成の途中である意味越えなければいけない課題で、自分をさらけ出すことは必要。恥ずかしいから泳がないという雰囲気を作り出して放置している大人の責任。という意見が出た。）

• K氏（徳島市教育委員会管理職）
  
  • 新体力テストの点数が徳島市の平均は、全国平均、徳島県の平均より低い。生徒・児童の運動させる時間、空間、仲間の3つの柱を確保出来るのが学校体育の時間であり、確保していけば体力が上がるのではないかと考えられる。
  • 徳島県の小学校の教師の平均年齢が高いし、体育を専門としない女性の教師が多い。
  • 昨年度から徳島市内の小学校で水泳において教師の指導力を上げる取り組みがある。学校それぞれで講師を呼び研究会・講習会を行うようにしたり、水泳においては昨年31校中13校が外部コーチを招き生徒に指導しながら教師も指導してもらったりしたて、教師の指導力を高める努力をしている。
  • 外部コーチを頼む時は生徒の泳力を伸ばすことが第一の目的ではなく、教師が生徒の泳力を伸ばすための方法を知ることによって指導力を高めることが目的であり必要である。

• S氏（元小学校長）
  • 夏休みのプールの開放
    
  • 外部指導者の奨励
    
  • 学校の授業だけでなく長期休暇中のプールの開放や外部指導者を招いて授業をする方がよい
    

    （その発言に対する質疑応答）

  • 『石井町内の中学校の水泳をなぜいしいドームを使用するのか』
  • 中島氏：いしいドームは教育委員会の管轄であり、石井町は経費削減を行っている。学校もいしいドームも教育委員会の管轄なので中学校の授業での使用は無料で、各学校でのプールの水道代を削減するためにいしいドームを利用している。
    町の財政から負担される学校の水道代を削減するために同じ教育委員会の管轄のいしいドームを利用しているようだ。