田中学長からの新年のご挨拶

2016年1月4日

                      「教育の力で地球システムの安定化へ」

 

 新年明けましておめでとうございます。年頭に当たり、皆様方に一言御挨拶申し上げます。
 21世紀に入って、今年で16年目になりますが、世界はグローバル化が進展し、私達は人口、経済、紛争、貧困、自然災害、環境、気候変動等多くの困難な課題に直面しています。もはや一国家一民族のみでは解決の糸口すら見い出せない、解決が不可能な時代に入りました。
 そしてまた、情報伝達技術の加速的な発達により、今や世界中の様々な出来事が瞬時に地球を駆け巡り、世界の不安定化や地球システムの不安定化が連鎖的に引き起こされるリスクの中で私達は生きています。
 このような社会状況の中で、私達はそれぞれの専門領域から地球の安定化の方向にベクトルを向けた創造的、革新的な取組が求められる時代に入っていると思います。
 その自覚のもと、年頭に当たり思いを巡らせば、今私達に課せられた地球規模の大きな課題として、私は次の3つが挙げられるのではないかと思います。

 

 一つは、原子力発電の問題です。世界共通の枠組みとして、原子力発電の廃絶の方向に進むのか、あるいは部分的容認を含めて管理、規制上の問題に力点を移すのか、各国の経済的政治的判断に委ねられており、私達は話合いの土台すら持っていません。21世紀を見通した今後の原子力発電に関する取り組み方について、すべての国が合意できるガイドラインが必要ではないでしょうか。

 

 二つは、人工知能(AI)の問題です。AIの研究はどこまで認められるべきでしょうか。いずれAIが人間を超えた能力を獲得すると予測する研究者もいます。AIの開発は、人間に一層多くの利便をもたらし、現にAIによる利便性を受けていますが、今後もその飛躍的進歩が予測されます。一方では、人類がAIに駆逐される危険を指摘する研究者も多くいます。
 AIの研究開発は倫理上どこまで認められるべきか、世界的な合意形成をしておくことが急がれると思います。

 

 三つは、地球温暖化を防止するための温室効果ガス(CO2)の排出規制の問題です。
昨年、パリで開催されたCOP21において「パリ協定」(2015年12月12日)が締結されました。
 「パリ協定」は、すべての国々が発展度合いや経済状況を考慮しつつ、ともかくも地球温暖化防止のために目標値を掲げてCO2削減に取り組むという画期的な内容でした。

 これにより、世界中の国が、自ら掲げたCO2削減の目標に向かって突き進むことになります。成功すれば、地球規模で行う事業の先駆的モデルとなります。


 もちろんグローバルスタンダードが必要な課題はこれに限らないと思いますが、少なくともこの3つの課題については、21世紀の半ばまでに世界中が納得する合意形成が図られ、世界共通の取組として緒についていなければならないと思います。

 

 さて、不安定、不均衡な地球システムにあって、昨年、教育の面から私達を勇気づける発言がありました。フランスの国際政治学者トマ・ピケティ氏の発言です。氏は「21世紀の資本」の中で、地球上の人々の富の格差を是正するための方法論の一つは、世界中の子ども達に質の高い教育を平等に分配することである、そのことが重要であると述べています。
 また、ノーベル平和賞受賞のマララ・ユスフザイさんは、国連での名演説で、次のように述べ、その言葉は人口に膾炙(かいしゃ)しています。

 

 Education is the only solution.  Education first.

 

 さらに言えば、ノーベル文学賞受賞の大江健三郎氏も先に述べた地球規模の課題を憂え、数年前から「子孫を生き延びさせることが、日本人の第一義的モラルである」と発言しています。

 私達にとって大切なことは、世界のあらゆるところに質の高い教育を分散させていくことです。すべての国々へ教育を伝播し、すべての国々から学び、国際理解・異文化理解を進め、すべての国々の子ども達に質の高い教育を浸透させていくことです。それが21世紀の教育の一端を担う私達の役目であり、目標ではないかと思います。
 私達は教育の領域で他の領域と連携を深めながら、多くのシナプスを作り、グローバルで多様な世界と連結し、今世紀人類が抱える数々の難問に対して導きの糸の役目を果たしていかねばならないと思います。そのことが、教育のグローバル化、真の国際化につながるものと思います。

 

 終わりに、鳴門教育大学が教育の世界の一員として益々の発展を遂げることを願うとともに、皆様の御健勝を祈念し、新年の御挨拶といたします。


                                  平成28年1月4日
                                   学長 田 中 雄 三

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