ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第35号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名、要約、キーワードを掲載します。
| (1)2025年の世界の不登校研究の概観-ERICおよびPsycInfoの文献から- 佐藤 正道 A Review of the Studies about Non-Attendance at School, School Phobia and School Refusal in the World (2025) :SATO Masamichi 要約: 日本の不登校の問題を考える上で,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から2002年まで,および2011年はERICおよび PsycInfo(PSYCHOLOGICAL ABSTRACTS)の,2003年から2010年まではPsycInfoの,2013年と2014年はERICの,さらに2015年からはERICおよびPsycInfoの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance,school dropout,school phobia ,school refusal を持つ文献を分類してきている。その基礎研究としての継続研究として2025年はERICおよびAPA PsycInfoの文献44件について取り上げ分類し検討を加えた。 Key words : school attendance, school dropout, school phobia, school refusal (2)中学校の特別支援教育における進路支援の特徴と課題―全国特別支援教育センター協議会加盟機関の公開資料を対象とした資料分析― 水本 和也 Characteristics and Challenges of Career Guidance in Junior High School Special Needs Education: A Literature Review Based on Publicly Available Documents from Member Institutions of the National Association of Special Needs Education Centers:MIZUMOTO Kazuya 要約: 本研究は,全国特別支援教育センター協議会加盟機関の公開資料を用い,中学校の特別支援教育における進路支援の特徴と課題を整理したものである。調査の結果,早期からの計画的な指導,体験活動の重視,保護者との連携,個別の教育支援計画の活用,関係機関との連携などが共通して示されていた。一方で,生徒本人の自己理解・自己決定の扱いには差があり,就労を強く重視する自治体と,本人主体性を重視する自治体との間に傾向の違いがみられた。また,障害受容や異学年交流などの見落としが課題として挙げられた。今後は地域性に配慮し,生徒の自己理解とそれに基づく進路決定を支える進路支援モデルの構築が求められる。 キーワード:特別支援教育,進路決定,個別の教育支援計画 (3)生徒が認知する学年教師集団の状態認知尺度の開発―大学生の回想データを用いた予備的・探索的検討― 熊谷 圭二郎 Development of the Students’ Perceived Grade-Level Teacher Team Functioning Scale: A Preliminary and Exploratory Study Using Retrospective Data from University Students :KUMAGAI Keijiro 要約: 本研究は,生徒の視点から学年教師集団の状態を測定する質問紙尺度の開発を目的とした。教師集団の協働を「個業化状態」「依存的安定状態」「自律的協働状態」の3状態として理論的に整理し,大学1年生218名を対象に高校時代の学年教師集団を回想させる予備的調査を実施した。探索的因子分析の結果,個業化状態は独立因子として抽出されず,生徒の知覚においては依存的安定状態と自律的協働状態の2因子構造が得られた。学校適応感との相関分析では,自律的協働状態が適応感全般と正の関連を示し,とくに教師関係との関連が強く(r=.56),依存的安定状態は教師関係・学習関係と負の関連を示した。本尺度は予備的段階にあるが,教師自己評定とは独立した生徒の知覚指標として,今後の尺度精緻化に向けた基礎的知見を提供するものである。 キーワード:学年教師集団、尺度開発、学校適応感 (4)巡回相談における就学移行期の保護者支援に関する研究動向と課題-スコーピングレビュー- 新村 隆博 Current Status and Issues of Parent Support During the Transition to School in Itinerant Consultation: A Scoping Review:SHINMURA Takahiro 要約: 本研究は,スコーピングレビューを通して,巡回相談における就学移行期の保護者支援に求められる巡回相談員の支援機能と今後の支援体制のあり方を明らかにすることを目的とした。電子データベースおよびハンドサーチによる国内文献の検索の結果,12編の研究が分析対象となった。分析の結果,【保護者への直接的支援】と【保護者への間接的支援】の2つのカテゴリーおよび10のサブカテゴリーが生成された。以上により,自治体によって多様な形態の支援構造で実践される巡回相談であっても,就学移行期の保護者をサポートするという点に関しては,巡回相談員に共通する支援機能が示された。巡回相談員には,未就学段階からの長期的な学校適応支援を確実にするため,保護者への直接的支援と並行して,環境調整や関係機関との連携体制を構築することの重要性が示唆された。 キーワード:巡回相談,就学移行期,保護者支援,スコーピングレビュー (5)特別支援教育に携わる小学校教師のメンタルヘルスに関する質的研究-発達障害に焦点を当てて- 山本 茜・廣瀬 雄一 A Qualitative Study on the Mental Health of Elementary School Teachers Involved in Special Needs Education: Focusing on Developmental Disabilities:YAMAMOTO Akane,HIROSE Yuichi 要約: 本研究は、特別支援教育に携わる小学校教師へのインタビュー調査を通じ、専門的知識やソーシャル・サポートに着目しながら教師のメンタルヘルスをいかに改善したり支援したりできるかについての方法を探り、検討していくことを目的とした。小学校教師5名を対象に半構造化面接を行い、KJ法を用いて分析した結果、当初の仮想モデルでは想定していなかった「自己理解」が、教師のやりがいや心理的安定を支える重要な基盤であることが示された。教師は児童や同僚との関係性の中で葛藤を抱えながらも、知識の再構築や自己の傾向への気付きを通してやりがいを得ており、それが良好なメンタルヘルスへとつながっていた。本研究を通じて、特別支援教育に携わる教師のメンタルヘルスを維持しながら、児童理解と支援の質を深めていくためには、専門的知識や具体的な支援方法を校内で共有し、教師が心理的に安定した状態で児童と関わることのできる環境を整えることが重要であることも分かった。 キーワード:特別支援教育、教師のメンタルヘルス、専門的知識、ソーシャル・サポート (6)医療的ケアを要する在宅重症心身障害児のきょうだいがケアを担い続ける過程 坂東恵・川西智也 The Process of Siblings Continuing to Provide Care for Children with Severe Motor and Intellectual Disabilities Requiring Medical Care at Home :BANDO Megumi,KAWANISHI Tomoya 要約: 本研究は,医療的ケア(以下,医ケア)を要する在宅重症心身障害児のきょうだいが,どのような過程を経て【ケア役割を担い続ける】に至るのかを明らかにすることを目的とした。18歳以上のきょうだい3名に半構造化面接を行い,複線径路・等至性モデルを用いて分析した。その結果,【医ケアが開始】を必須通過点として,【医ケアへの参加】【医ケアの日常化】を経て等至点に至る複線的径路が示された。ケアへの参加には,興味や楽しさ,使命感などが影響していた。ケアの継続には,母への支援意識や同胞への愛情が共通してみられた。また,進路選択を分岐点とし,一度は医療職・福祉職を目指していたが,その後の進路は分かれた。異なる選択をしながらも,3名ともケア役割を担い続けていた。きょうだいは自らケアを引き受け,成長や喜びを見出す一方で葛藤も抱えているため,自分の思いを言語化し,将来の展望を主体的に描ける環境を整えることが求められる。 キーワード:医ケア,ケア役割,きょうだい 日本の不登校の問題を考える上で,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。 筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から2002 年まで,および2011年はERICおよび PsycInfo(PSYCHOLOGICAL ABSTRACTS)の, 2003年から2010年まではPsycInfoの,2013年と2014年はERICの,さらに2015年か らはERICおよびPsycInfoの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance, school dropout,school phobia ,school refusal を持つ文献を分類してきている。その基礎 研究としての継続研究として2024年はERICおよびAPA PsycInfoの文献46件について取 り上げ分類し検討を加えた。 Key words : school attendance, school dropout, school phobia, school refusal (2)保護者の障害の受容が進路決定に与える影響に関する考察~障害受容モデルを進路 支援に活かす視点から~ 水本 和也 A Study on the Influence of Parental Acceptance of Disability on Career Decision-Making: Toward Applying Disability Acceptance Models to Career Support:MIZUMOTO Kazuya 要約: 近年,特別支援教育におけるキャリア教育,進路指導の充実が課題となっている。不十分 な自己理解や不本意入学,中途退学などが問題となる中,保護者の障害受容が進路指導の充 実にとって重要であるという課題に基づいて,これまで研究されてきた障害受容モデルのレ ビューを行った。具体的には,段階説をはじめ,慢性的悲哀説・螺旋モデルの3つの仮説 を取り上げ,保護者の障害受容について,構造や感情・時間の捉え方,ゴール設定などから 整理を行った。それらの考察を経て,今後の特別支援教育における進路決定についての展 望を述べた。 キーワード: 障害の受容,特別支援教育,進路決定 (3)東日本大震災を大学時代に経験した教師の自己形成―震災経験の語り重ねに注目して― 早渕 維・川西 智也 Self-Formation of Teachers Who Experienced the Great East Japan Earthquake during Their University Years: Focusing on Repeated Narratives of the Disaster Experience: HAYABUCHI Yui,KAWANISHI Tomoya 要約: 東日本大震災を大学在学中に経験し、生まれ育った故郷で小学校教師をしながら、震災 経験の語りを様々な授業に生かす活動を継続しているAさんが、どのような自己形成の径 路を辿ったかを明らかにすることを本研究の目的とした。2回の半構造化面接の後、複線 径路・等至性モデル(Trajectory Equifinality Model:TEM)を採用し、分析を行った。そ の結果、Aさんの径路は第1期〈教師として震災経験を子ども達に語る(EFP1)〉を経て、 第2期〈子ども達に震災経験の教訓を語り継いでいこう(EFP2)〉に至るプロセスとして描 かれ、「人との繋がり」や、「震災経験を語る」ことがもたらす経験がAさんの自己形成を 促進していることが示された。本研究は過去に震災などにより脅威を経験した教師の発達の 理解を進める一つの資料になると考えられる。 キーワード:東日本大震災、教師、語り重ね |

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