鳴門生徒指導研究第33号(2024)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 33,2024,October,ISSN 0917-5180

ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第33号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名、要約、キーワードを掲載します。


日本語・英文タイトルと著者名および要約
(1)2023年の世界の不登校研究の概観-ERICおよびPsycInfoの文献から-
佐藤 正道
A Review of the Studies about Non-Attendance at School, School Phobia and School Refusal in the World (2023) :SATO Masamichi
要約:
日本の不登校の問題を考える上で,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から2002年まで,および2011年はERICおよびPsycInfo(PSYCHOLOGICAL ABSTRACTS)の,2003年から2010年まではPsycInfoの2013年と2014年はERICの,さらに2015年からはERICおよびPsycInfoの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance,school dropout,school phobia,school refusalを持つ文献を分類してきている。その基礎研究としての継続研究として2023年はERICおよびAPA PsycInfoの文献45件について取り上げ分類し検討を加えた。
Key words : school attendance, school dropout, school phobia, school refusal

(2)不登校に対する居場所の概念と意義の再検討
山田 麻依子・小坂 浩嗣
The Concept and Significance of “Ibasho” for Non-Attendance at School: Literature Review:YAMADA Maiko,KOSAKA Hirotsugu
要約:
本稿では,居場所に関する研究を渉猟し,不登校における居場所の概念やその意義について検討することを目的とした。居場所概念について,わが国と海外の研究における定義,インターネットなどの社会現象との関連についての検討を踏まえ,居場所に対する社会的および心理的定義の意義を展望した。
キーワード:居場所,不登校,心理的定義,社会的定義

(3)性の多様性に関する取組を促進及び阻害する要因についての検討-高等学校保健体育科教員へのインタビュー調査を通して-
福吉 麻実子・葛西 真紀子
An Examination of Factors Promoting and Discouraging Gender Diversity Initiatives: Through Interviews with High School Health and Physical Education Teachers:FUKUYOSHI Mamiko,KASAI Makiko
要約:
近年,セクシュアル・マイノリティに関する社会の関心は高まりを見せているが,学校現場においては十分な取組が行われているとは言い難い。そこで本研究では教科特性として性差が影響すること等から高等学校保健体育科教員を対象としたインタビュー調査を行い,学校における性の多様性に関する取組の現状を明らかにするとともに,取組を促進する要因や阻害する要因について検討することとした。その結果,取組を促進する要因としては,物理的支援,個人,組織的な支援の三側面が示され,取組を阻害する要因としては,個人に関することが要因として明らかとなった。これらの結果から今後,学校教育において性の多様性に関する取組を進めていくためには,個人に関する要因である教員が持つ不安や負担を軽減することが有効であると考えられ,すでに行われている内容をさらに充実させていくことに加えて,管理職のリーダーシップのもと,学校全体で取り組んでいくことが重要であると考えられる。
キーワード:性の多様性,セクシュアル・マイノリティ,保健体育科教員,取組を促進及び阻害する要因

(4)小中学校教員にとって不登校児童生徒の対応に活用しやすい資料の検討-徳島県教育委員会「段階別不登校対応ハンドブック」をもとに-
庄野 双葉・葛西 真紀子
A Study of Resources that Elementary and Junior High School Teachers Can Easily Utilize in Dealing with Non-attending Students: Based on the “Handbook for Handling Non-attending Students by Stages”:SHONO Futaba,KASAI Makiko
要約:
近年,不登校児童生徒数は増加傾向にあり,憂慮すべき事態となっている。増加する不登校児童生徒が不登校に陥る要因は多岐にわたっていること,教員の不登校対応が難しくなってきている。そこで本研究では徳島県教育委員会作成の「段階別不登校対応ハンドブック」をもとに小中学校教員3名にインタビュー調査をすることでその効果を検証し,必要であれば小中学校教員が利用しやすいハンドブックになるような提言をすることを目的とした。研究Ⅰでは「段階別不登校対応ハンドブック」のようなハンドブックが全国にどれくらい存在し,また各都道府県の不登校児童生徒数とハンドブックの整備率に関連は見られるのか調査した。調査の結果,関連がないことがわかった。研究Ⅱでは教員3名にインタビュー調査をした結果,教員は厳しい状況の中で不登校対応をしていることがわかり,教員の立場でも専門性の高い支援ができる資料があると良い等の得た意見をもとに改良できそうなところについて提言を行った。今後はより多くの教員から意見を得ることによって,さらに汎用性の高いハンドブックにできると考えた。
キーワード:ハンドブック,不登校対応,教員

(5)保護司が活動継続に至るまでの内的プロセス
長濵 絢音・川西 智也
Internal Processes that Lead to the Continuation of Activities by Volunteer Probation Officers:NAGAHAMA Ayane,KAWANISHI Tomoya
要約:
 日本の更生支援における民間協力者として重要な役割を担う保護司は,無給で活動するボランティアである。保護司の活動は負担も大きいが,その活動を支える仕組み作りはまだ不十分である。本研究は,保護司が活動継続に至るまでの内的プロセスを明らかにし,活動継続を支える手立てを考察することを目的とする。活動年数15年以上の保護司3名に半構造化面接を行い,語りをM-GTAを用いて分析した。その結果,保護司が活動継続に至るには,【❶「保護司」になる】【❷「保護司」の現実を知る】【❸「保護司」としての責任】【❹「保護司」を引き継いでいく】の4つの段階があることが示された。また,保護司は活動を始めたばかりの頃には対象者とどのように接したらよいか分からないことによる困難を感じるが,試行錯誤する過程で対象者への捉え方が変化していくことが示された。心理職によるコンサルテーションは,この過程を支える手立てのひとつとなると考えられる。
キーワード:保護司,更生支援,活動継続,心理職との連携



このページに掲載された内容および原著論文はすべて鳴門生徒指導学会(THE NARUTO ASSOCIATION OF SCHOOL GUIDANCE AND COUNSELING)に帰属するものである。

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