ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第32号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名、要約、キーワードを掲載します。
(1)2022年の世界の不登校研究の概観-ERICおよびPsycInfoの文献から- 佐藤 正道 A Review of the Studies about Non-Attendance at School, School Phobia and School Refusal in the World (2022):SATO Masamichi 要約: 日本の不登校の問題を考える上で,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から2002年まで,および2011年はERICおよびPsycInfo(PSYCHOLOGICAL ABSTRACTS)の,2003年から2010年まではPsycInfoの,2013年と2014年はERICの,さらに2015年からはERICおよびPsycInfoの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance,school dropout,school phobia,school refusalを持つ文献を分類してきている。その継続研究として2022年はERICおよびAPA PsycInfoの文献45件について取り上げ分類し検討を加えた。 Key words : school attendance, school dropout, school phobia, school refusal (2)日本の性教育と家父長制 井ノ崎 敦子 Japanese Sexuality Education and Patriarchy:INOSAKI Atsuko 要約: 日本の性教育は先進国に比べるとかなり遅れていると指摘されている。学習指導要領において妊娠に至る関係性は扱わず,生物学的知識のみに限定した性教育を推奨する「歯止め規定」が存在しているのも性教育が遅れている要因の1つである。しかし,昨今のインターネットの普及等により,子どもたちは不適切な関わりを求められる危険にさらされており,これまで以上に自分自身の身を守るスキルを習得することが求められている。そこで,本研究では,日本の性教育の歴史を概観するとともに,諸外国の性教育の現状を紹介し,日本の性教育の位置づけを明確にする。その後,性教育の国際的標準とされている包括的セクシュアリティ教育を紹介し,日本の性教育が遅れている大きな要因の1つである家父長制思想と性教育の関係を概説したのち,今後の日本の性教育のあり方について提言する。 キーワード:性教育,家父長制,ジェンダー二元論,包括的セクシュアリティ教育 (3)小学校における認め合う学級風土をつくる自己表現ワークの開発 森本 正樹・小坂 浩嗣 Assertion Training Work for Mutual Acceptance Classroom Climate in Elementary School:MORIMOTO Masaki,KOSAKA Hirotsugu 要約: 本実践研究では,多様なニーズを抱える児童が安心感をもって学べるために,認め合う学級風土づくりを狙いに実践した自己表現ワークの有効性について検討することを目的とした。Z小学校2年生(25名)を協力学級として,X年8月~X+1年10月の期間に,本研究で開発した自己表現ワークを実践した。実践記録について,自己表現プロセスの3観点である①自分の気持ちにていねいに意識を向ける時間・空間をもつ,②自分を表現する(気持ちや浮かんできたイメージなどを表現する),③自分や友だちが表現したものを分かち合うから分析した結果,認め合える学級風土づくりへの効果が示唆された。 キーワード:学級風土,自己表現,シェアリング,認め合い,学級づくり (4)不登校児童の担任をする初任者教員の変化 浮田 小織・川西 智也 Changes in Beginning Teachers who are in Charge of Children who are not Attending School:UKITA Saori,KAWANISHI Tomoya 要約: 本研究では,不登校児童と関わる初任者教員の負担や成長を含めた変化を明らかにすることを目的に,担任期間中に不登校になった児童を受け持った3名の教員に半構造化面接を行った。木下(2003)の修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを分析的枠組みとし,西條(2007)の構造構成的質的研究法をメタ研究法として採用した。分析の結果,不登校児童と関わる初任者教員の成長について,登校に対する認識や不登校児童を捉える視点,不登校観などの点から明らかになった。また,不登校児童と関わる初任者教員にとっての支え手が不登校支援にもたらす影響も示された。 キーワード:小学校,不登校,初任者教員,変化 |
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