本日は移動日。合間あいまに目を通した資料やwebの中から、いくつか関連する情報をまとめて(というか羅列して)おきます。
印刷教材を使い、通常の郵便でレポートの提出や採点のやりとりをする「通信制大学」を英語では“correspondence school”という。しかしこの言葉はもう死語になりかけているようだ。かわりに“distance education”、“distance learning” 、“distributed learning”などの言葉がよく使われている。正確な違いはよくわからないが(別にちゃんと定義されているわけではないようだし)、“correspondence school”には郵便によるやりとりというイメージが強く、その他の情報伝達手段、特にインターネットを利用した教育方法の名前としては馴染まないからであろう。
教材のweb化、電子会議室でのクラス討論など、インターネットの利用は加速度的に進んでおり、そのうち“on-line education”という名前に変わっても不思議ではなさそうだ。これはオンキャンパスの授業に関しても言えることで、web化した教材を使って授業を進める教官が増えてきているそうだ。この場合、授業のすべてをオンラインで行うわけではなく、学習の一部を支援する形で利用されるので、“web-supported instruction”などと呼ばれる。我田引水になるが、自分は昨年、実地教育IVにて電子討論の演習を試みた。その様子はここをクリック。
アメリカの文部省が管轄する National Center for Educational Statisticが、教師の質に関して行った全国的な調査の結果がホームページに公開されている。タイトルは“Teacher Quality: A report on the preparation and qualification of public school teachers”。いくつか興味を引く数字をひろってみる。詳しくは上のページを参照していただきたい。
その他、教員養成や研修についていろいろなデータがあるので参考にしていただきたい。
International Data Co. の調査によると、オンライン教育の市場は1996年の1億9千7百万ドル(約2百億円?)から、2002年までには55億ドル(約6千億円?)にまで成長する見通し(円への換算には自信がない....)
また、2000年末までにはアメリカの人口の35%以上がインターネットを利用するようになる見込み。人口の30%にまで普及するのに、パソコンは13年、テレビは17年、電話は38年かかった。これに対してインターネットは7年もかからなかった。
先に紹介した“Teacher Quality”の報告書にも見られるように、アメリカは教育の質を改善するために学級あたりの子どもの数を減らす方針に踏み切った。カリフォルニア州では学級のサイズを小さくした学区に特別の手当をだすようにしてこの政策の実施を推進している。このため教員が不足している。
カリフォルニア州立大学ノースリッジ校では、深刻な教員不足に対応するため、英国のOpen University (遠隔教育、オンライン教育で世界的に有名な大学)にコンサルテーションを依頼し、遠隔教育を利用した社会人教育を検討している。
オレゴン州立大学でも同様に、教員免許の取得コース(http://www.orst.edu/instruct/pte/)と教員のための研修コース(http://pds.orst.edu/)の両方をオンラインで提供している。
アメリカの文部省は遠隔教育を推進するための資金、“Fund for the Improvement of Postsecondary Education-Learning Anytime Anywhere Partnership (LAAP)” を設置している。研究費というより、実際に“使える”カリキュラムの開発費として確保された予算のようだ。
また、公立学校からのインターネットへのアクセスを確保するために、E-Rateという、接続料金の値引きをする資金も確保されている。
生涯学習大学協議会のマネジメントセミナーで印象的だったのは、発表者全員(学部長や教務委員長、教育長など)が、(1) たいへん優れたプレゼンテーションをして、(2) ビジネスマン&ウーマンのように話したこと、だった。全員がノートパソコンとPowerPointを使ったスライドでプレゼンした(1名だけMacを持ってきていてケーブルが合わず断念した発表者がいた。ついつい同情)。スライドだけではなく、スピーチのトレーニングを受けていると感じさせるほど、話もわかりやすかった。
もともと生涯学習分野は、大学にとってスポーツにつぐ収入源らしい。だから他の学部や機関に比べ、リーダーには経済的なマネジメント能力が要求される。また、地域や行政、学校や企業との協力体制を築き上げていくために、交渉スキルも重要視される。交渉では、特に、コラボレーションによって“win-win situation”、つまり全員が得をする関係を模索することが重要だと感じた。さらにこうしたコラボレーションの関係は、能力のあるリーダー個人に頼らずに、組織間の協定や仕組みまで発展させなくてなならない。たとえば、オハイオ州立大学と公立学校の間で協定された学費免除や、ミズーリ大学での“shared professorship”などはそのいい例だと思う。アメリカでは労働力の流動性が高いので『この人だからこそお願いする』などといった個人的な人間関係に依存した協力関係では安定したコラボレーションは望めない。日本とは、このへんに、明らかに文化的な違いがある。
ちなみに、生涯学習大学協議会のニューズレターには、17の大学から、生涯学習関係の学部長やディレクターのポジションの公募が掲載されていた。資格の欄をみると、Ph.D.など学問的な要求とともに、新しい市場開拓やパートナーシップの確立、組織の財政的なマネジメントなど、経営に関する実務経験を要求する項目が多く見られる。生涯教育、遠隔教育、社会人教育の運営は、通常の学部や大学院の運営とはかなり異なるようだ。学生の募集、授業の提供、学生相談(履修やオンライン授業でのパソコンの操作にいたるまで)など、かなりきめ細かな顧客サービスを提供しなくてはならない。自由経済、市場主義的な色合いが強くなる。したがって、これまでの大学運営とはかなり異なるリーダーシップが要求されるようである。