マルチサイトへのテレビ放送による遠隔教育 3/4(木)

 カリフォルニア州立大学スタニスラウス校(以下、CSUSと略)遠隔教育担当のオッペンハイム博士にお話をうかがった。

地域へのサービスが第一

 CSUSでは1974年から遠隔教育を始めた。この大学はこの地方にある唯一の州立4年制大学であり、1600km四方の地域に住む、125万人の人々にサービスを提供する使命がある。大きな街(たとえば分校のあるストックトン)からターロックの本校へ、週3日通うと、往復で160km、1学期で64,000kmもクルマを運転しなくてはならない。最近、オンラインコースのように、全国的、全世界的に教育サービスを提供しようとする大学が増えているようだが、CSUSは公立大学であり、この地域の人々へのサービスが第一である。これまでとはことなる学生の入学(社会人、再入学、母親、etc.)が増えるにつれて、遠いキャンパスに通わなくても授業が受けられる遠隔教育への期待はますます高まっている。実際、今度の新しい建物(遠隔教育のための教室があるビルディング)の設置は、行政の大気汚染のコントロールに関係する部署からの基金でまかなった。

システム

 ストックトン分校ではテレビ放送の他に講師を派遣しての授業が開講されている。コースの数は年間で200ほど。その1/3くらいがターロックからのテレビ放送である。

 分校は他にマンテカ、トレーシー、ドスパロス、メセードの4カ所。これら4カ所ではテレビ放送による授業だけが行われている。現在、3カ所の分校を追加する計画を策定中である。

 ITFS(Instruction Television Fixed Services)が3チャンネル。これは音声は双方向だが、画像は片方向。教官からは画像と音声が送られるが、分校からは音声しか返ってこない。

 CODEC(?商品名のようです)が1チャンネル。音声、画像とも双方向。

開講されている授業

 学部:Criminal Justice, History, Liberal Studies, Organizational Communication, Psychology, Business Administration など

 修士:Business Administration, Public Administration, Education (Administration & Supervision, Curriculum & Instruction, Multilingual Education, Reading Sepcialist) など

 近年、社会福祉(Social work)と看護(nurising)の修士コースが開講された。

 過去の集計からは、人文科学系が多数(75%)を占め、次いで経営(21%)、教育(5%)となっている。平均のクラスサイズは34人(本校での履修者含む)。

 今学期の時間割によれば、たとえばCEDECの教室は週に19コマ(+土曜日の集中)が入っていて、稼働率は50-60%というところ。社会人対象だけだと夜間しか開講できず、稼働率が下がるのでコストが回収できるかどうか怪しいとのこと。

 ちなみに、98年春学期には36の授業が開講され、本校では750人、分校合計では512人が履修している。

授業料

 オンキャンパスと同じ。

遠隔教育の専任・兼任スタッフ

 オッペンハイム博士(元々は歴史学の教授)がディレクター。副学長に報告する。ターロック本校には、専門のテレビ技術者がフルタイムで1人(かつて2人いたが、予算の都合で現在は不足している)。フルタイムの秘書が1人。情報処理センターの専属技術者にもときどき手伝ってもらっている。この他に、カメラを操作するための学生アルバイトをかかえている。カメラの操作はそれほど難しくないので、オッペンハイム博士としてはコスト削減のために教官にすべて任せるようにしたいが、難しい。

 分校には、ストックトン分校にフルタイムの技術補佐官(専門家)が1人。他の分校にはそれぞれ3交代制でアルバイトが常時1人ずつ。教材を渡したり、レポートを回収したりするのにこうした人員は欠かせない。この他に、教材などを本校から分校へ配るのに、通常郵便ではなく、巡回図書館の運搬サービスを利用している。

 オッペンハイム博士は兼任としてこの業務を行っているが、実際にはフルタイム分の仕事をしている。予算要求をしているもののなかなか通らない。

大学教官のトレーニングとインセンティブ

 テレビシステムを使って遠隔教育を行うときには、必ず、ワークショップに参加してもらい、機器の使い方や、テレビ授業のコツなどを学んでもらうようにしているが、徹底しない。大学の教官に何かを教えるのはとても難しい。また、現在のところ、教官に遠隔教育の授業を開講してもらうのを促すようなインセンティブはない。3年前、遠隔授業を履修する学生1人あたり$10をインセンティブとして当該学部へ支払うという案が認められたが、予算措置がとられていないので実現していない。

テレビ授業の有効性

 テレビシステムを使った遠隔教育の『質』が問題にされることがよくあるが、オッペンハイム博士の行った評価(ご自分の歴史学の授業、オンキャンパスとオンサイトとを比較)からは、成績、出席率などに差は見られない。学生からの評価はだいたいよい。教官からは、カメラの配置や音声など、システムについての不満や、教材を数日前までに準備しなくてはならないことなどについて改善の要求があがることがある。教育の『質』は、テレビシステムを使うかどうかということよりも、教官の授業の工夫など、他の要因に依存する、とオッペンハイム博士は考える。