崩壊を起こさない学級経営

 この講座では、『学級崩壊』を防ぐための具体的な方法を考えていきます。席に座っていられない子どもをどう指導するのか、クラス全体が「崩壊」してしまうのをどう防ぐのか。応用行動分析学の研究をベースに、ごいっしょに考えていきたいと思います。


小学校1年生の担任をしています。最近の子どもたちは家庭でしつけができていないせいか、まるで赤ちゃんのようです。授業中でもフラフラと席を立って歩き回ったり、同級生にちょっかいをだしたり、挙げ句のはてに教室から出て行ってしまったりします。これでは授業が成り立ちません。教員生活は10年以上になりますが、子どもたちの実態は年々ひどくなっているような気がします。何かよいアドバイスがございましたら、よろしくお願いいたします。


どうすれば、子どもを席につかせることができるでしょうか?

まず、席に着く練習から始めましょう。子どもたちの様子がよく分かるように、机を後ろに片づけて、椅子を前に集めましょう。そして、椅子に座って、真っ直ぐ前を見れば先生が見えるように、椅子は先生を中心にした扇形に並べましょう。そして、『手はお膝の上に乗せ、座っていてね』とはっきり言って、最初は短い時間(たとえば1分)、子どもたちの興味を引く、絵や写真やビデオを見せましょう。最後まで椅子に座っていたら、『みんなえらいね。静かに座っていたね』など、誉めてあげましょう。まず、子どもの望ましい行動を誉めて、強化することが大切です。

子どもたちが最初から騒いでいて、席に着かないときはどうすればいいでしょうか?

一つの方法は、逆に、もっと騒がせることです。他のクラスの迷惑にならない範囲で(必要なら体育館や校庭で)、たとえば、大きな声をだしながら部屋をぐるぐる走り回るとか、ジャンプさせるとかして、立っていることに疲れさせる、あるいは飽きさせることです。一時的に、椅子に座ることが強化になるようにするのです。

席を立ってしまう子どもには、どのように対処したらよいでしょうか?いくら叱っても効き目がないように思えるのですが。

先生から叱られることが、子どもにとって強化になることもあります。そんな場合、叱ったり注意すれば、それだけ、席から立ったり、奇声を発したり、他の子どもにちょっかいをだす行動を増やしてしまいかねません。また、他の子どもがそれを見て、同じ様に、先生の注意をひく行動を始めるかもしれません。これを観察学習と言います。叱られることが強化になっている場合には、子どもを叱るのではなく徹底的に無視する方が得策です。そして、先生からの注目は、約束を守って静かに座っている子どもたちに与えるのです。たとえば、『たけしくん、静かに座っているわね。先生、嬉しいわ』と言って、肩をかるくたたいて上げたりします。

無視するというのは「消去」のことですね。試してみましたが、子どもがいよいよ騒ぐようになってしまって、うまく行きませんでした。

そうです。強化をやめることを、行動分析学では「消去」といいます。消去すると一時的に行動が増えたり、激しくなったりすることが知られています。これを「バースト」と言いますが、この時点で、じっと我慢して無視を続けることが重要です。そうしないと、消去のときには騒ぐという行動が強化されてしまいます。とは言っても、完全な無視は意外に難しいのが事実です。そこで、バーストを最小限に抑えるためには、できるだけたくさん強化すること。子どもが一時でも席に着いたら誉める。席に座って先生の方を見たらまた誉めるというように、望ましい行動を誉め続けることが大切です。ちなみに、中には誉め言葉がまだ好子(行動を強化する出来事)になっていない子どもたちもいるはずです。そうした子どもにはいくら口で誉めても強化は起こりません。できるだけ頻繁に子どもたちの間を歩き回って、誉めながら、肩を揉んで上げたり、頭をなでたりしましょう。

叱らないようにするということですね。

「絶対に叱るな」というわけではありません。席を立つなどの妨害行動を止めさせようとして叱ることが、逆に強化になってしまうことがあるので、要注意ということです。望ましくない行動を適切に叱るのは、むしろ重要です。このとき、以下の点に気をつけましょう。

叱るより誉めろというのはわかりますが、そんなに誉めていたら、授業が進められません。

子どもが席に着かなくても授業は進められません。授業を通して学習を進めるのに、子どもたちに必要なスキルがいくつかありますが、席について先生の話を聞くというのはその中でも最も重要なものの一つです。最初はある程度時間をかけてもこのスキルを獲得させておくことが、その後の子どもたちの学習にとっても大きく役に立つはずです。もちろん、子どもたちの発達が進むにつれ、授業に集中させる方法も変わってきます。たとえば、もう少し高学年なら、クラスをいくつかのチームに分け、授業中、どのチームがもっとも「良い子」にしていたかを競わせるゲームをするという方法も有効であることがわかっています。これなら、先生は、子どもが妨害行動をするたびに、その子どものチームの得点を黒板で減点していき、授業の終了時に精算すればよいだけですから、授業も進みます。

甘えっ子が多くて困ります。親のしつけができていないのでしょうか?

確かに、昔に比べて子どもたちが未熟なまま小学校に入学してくるという話もききます。データがないので、はっきりしたことは言えませんが、共働きの家庭や核家族が増えたり、ご近所づきあいが疎遠になれば、子どもたちが昔ほどしつけられていなくても不思議ではないかもしれません。しかし、だからといって、それを親や社会や、ましてや子どものせいにしていても問題は解決しません。むしろ、大切なのは、「甘えっ子」をいかに自律させていけるか、学校という限られた環境の中で、いかに社会的・倫理的なルールを守ることを学習させられるかだと思います。