-教育,この人類最大のプロジェクトに向けて-

 鳴門教育大学は,新構想の大学として1981年10月に創設された「教員のための大学」,「社会に開かれた大学」です。2004年4月からは,国立大学法人鳴門教育大学として装いを新たにし,本年,創立30周年を迎えるまだ若い大学です。2010年4月から,法人化第2期を迎え,今年は2年目に入ります。
 本学は,法人化第2期の中期目標の前文に,次のような文言を掲げ,大学の機能別分化を明確に打ち出しています。
 「鳴門教育大学は,教育は国の基であるという理念のもとに,教員養成大学として時代の要請に応えるべく,高度な教職の専門性と教育実践力,かつ豊かな人間愛を備えた高度専門職業人としての教員の養成を最大の目標とする。併せて,学校教育に関する先端的実践研究を推進し,我が国の教員養成における先導的な役割を果たす。」
 この目標のもとに,本学は,教員養成大学として個性際立つ大学を創造していきます。本学はまた,四国霊場88カ所の一番札所,霊山寺が鳴門にあることにちなんで,「教育の一番札所」と名付けています。この名に恥じぬよう,中期目標の実現に向けて邁進していきたいと思います。
 本学は小さな単科の教育大学ですが,多くの有能な人材を擁していると自負しています。学生一人ひとりのニーズに合わせて,きめ細かな教育研究指導ができる体勢をとっています。教育は学生と教員の信頼関係の上に成り立つものです。「信頼関係なくして教育なし」です。教育とは,畢竟,人間関係を基本とした学問であると思います。この基本の上に,本学の教員養成においては,教育の理論と学校現場の経験知・実践知の往還を通してEvidence-Based Education(科学的根拠に基づいた教育)を目指し,学生や学校現場のニーズに応えていきたいと思います。
 私は,人類が生き延びるための最大の武器は教育にあると考えています。教育によってヒトは進化し,発展してきました。これからも,教育という装置が人類の命運を握っているといっても過言ではありません。人類が言葉を獲得して以来創り上げてきた,この偉大な装置である「教育」というプロジェクトの中に、鳴門教育大学は布置されています。私は,そのことを誇りに思います。私たちは,この魅力ある壮大なプロジェクトに取り組み,教員養成大学独自の大学組織文化を構築していきたいと思います。

 

平成23年4月1日

 

国立大学法人鳴門教育大学長 田中雄三