★ドクチョウ
ドクチョウというチョウのなかまは、その名の通り、体内に毒を持ち、まずい味がするので、鳥などに捕食されにくくなっています。バロ・コロラド島の周辺では、Heliconius sara、H. erato、H. sapho、H. cydno、H. drisなどのHeliconius属のものの他に、チャイロドクチョウ Dryas juliaやアサギドクチョウ Philaethria didoなどが毎日のように見られます。
これらの種は、一種の警告色である赤や黄色の鮮やかな色彩を持っていて、ひらひらと優雅に飛び回ります。そして、これらの種によく似た色や形を持つシロチョウやタテハチョウのなかまがいます。これがいわゆる擬態(ベーツ型擬態)で、まずいチョウに似ることで、捕食を回避する効果があると考えられています。例えば、アサギタテハSiproeta stelenesというチョウは、アサギドクチョウにそっくりで、最初のうちは捕まえないと区別がつかないほどです。もっとも、慣れると飛び方でだいたい区別できるようになります。また、この両者は微妙に生息環境が違い、アサギドクチョウは高いところやギャップを高速で飛んでいるのに対して、アサギタテハは少し日陰の道沿いを飛んだりとまったりしていることが多いのですが、ほとんど数メートルしか離れていないところにいたり、一方を他方が追飛していたりということもあって、本人たちも間違えるようです。
また、まずい種どうしも互いによく似た色彩をしていて、捕食者はそのうちの一種でもまずいことを学習すると、よく似た他の種も食べなくなると考えられています。これも擬態のひとつで、ミュラー型擬態といわれています。例えば、H. saphoとH. cydnoは、後翅の裏の色が違うだけで、そっくりです。
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ランタナの花で吸蜜する
チャイロドクチョウ
Dryas julia
アサギドクチョウ
Philaethria dido
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