鳴門生徒指導研究第28号(2018)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 28,2018,August,ISSN 0917-5180

ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第28号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名、要約、キーワードを掲載します。


日本語・英文タイトルと著者名および要約

(1)2017年の世界の不登校研究の概観 − ERIC およびPsyc INFO の文献から−
           佐藤正道

A Review of the Studies about Non-Attendance at School,School Phobia,and School Refusal in the World(2017):SATO Masamichi
要約
 日本の不登校の問題を考えるうえで, 常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い, その継続研究として1991年から2002 年まで, および2011年はERIC およびPsyc INFO( PSYCHOLOGICAL ABSTRACTS ) の, 2003年から2010年まではPsyc INFO の, さらに2013年と2014年はERICの,さらに2015年からはERICおよびPsycINFOの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance ,school dropouts , school phobia , school refusal を持つ文献を分類してきている。その継続研究として2017年はERIC およびPsyc INFO の文献65件について取り上げ分類し検討を加えた。

Key words : school attendance , school dropouts , school phobia ,school refusal

(2)
学級担任による過剰適応的な肢体不自由児に対するストレスマネジメント教育の実践事例 共同体感覚と生活充実感の関連
                   小西 一博
Practice example of stress management education for the over-adaptive child with a physical disability by classroom teacherKONISHI ,Kazuhiro 
要約
肢体不自由の特別支援学校に在籍し,過剰適応的な児童1 名に対して,学級担任がストレスマネジメント教育を実践した一事例を報告し,その効果について検討した。ストレス反応チェックリストの結果から対象児が抱えている漠然とした悲哀や心の痛み,感傷的な気分などを改善することができたと考えられた。また,ストレス対処チェックリストにおいて,「相談」,「問題に対処」に関して最も得点の上昇が確認されたことから,誰かに相談したり,積極的に問題の解決に当たろうとしたりする態度が身に付いたと言える。このことから,本プログラムは対象児にとって有効であったと考えられた。

キーワード: 学級担任 肢体不自由児 ストレスマネジメント教育

(3)
中学校における課題を抱える生徒への援助を目指す教育相談の在り方
     松井直人・阿形恒秀

School Counseling for Support to School Maladaptation Student in Junior High SchoolMATSUI ,NaotoAGATA ,Tsunehide

要約
筆者が勤務する中学校においては,アセスメント(生徒及び教職員に対するアンケートと教職員に対するインタビュー)の結果,不登校生徒だけでなく,表面的には問題なく学校生活を送っているように見えても内面に何らかの不安や悩みを抱えながら生活している生徒が存在すること,不適応生徒への支援のための学校全体での取組や情報共有が十分でないと感じている教職員が少なくないことがわかった。そこで筆者は,「不登校生徒支援」「教職員の意見交換の充実」「教育相談室からの発信」の3本の柱による実践研究に取り組んだ。「不登校生徒支援」では,教育相談室の整備,家庭訪問の事前の打ち合わせ・事後の振り返りの実施等に取り組んだ。「教職員の意見交換の充実」では,ケース会議の実施や「気づき掲示板」の導入に取り組んだ。「教育相談室からの発信」では,教育相談だよりの発行や教師が自身の中学時代について自己開示して語る「あの頃の私」の実施に取り組んだ。
このような実践を通じて,中学校における組織的な教育相談活動と,課題を抱える生徒一人一人に対するきめ細かな援助を展開する糸口を提供することができた。
キーワード: 不適応,不登校,家庭訪問,ケース会議,情報共有,教師の自己開示

(4)
信頼関係を築き、主体性を発揮できる児童の育成−集団と個の相互作用を活かして−                    
   
森北智代・小坂浩嗣
Effects of Educational Program to Increase Self-Formation Consciousness of Elementary School StudentsFrom Reflection and From Each Other
MORIKITA ,TomoyoKOSAKA ,Hirotsugu
要約
本実践研究では,「信頼関係を築き,主体性を発揮できる児童の育成」を課題に,集団と個の相互作用を意図した「自分で気づき,考え,行動する」学習活動を開発し,その教育効果を検討することを目的とした。A小学校4年生(63名)を協力学級として,X年4月〜X10月の期間に,「パワフル大作戦」と名付けた3つの活動内容からなる取組を実践した。実践記録の分析結果から,今回の実践は児童の被承認感や自己肯定感を高める上で,有効であった。今後の課題には,自己・他者との効力感は補完関係を継続していくことと主体的な学びの過程での児童主体の程度と教師介入の程度のバランスをとることの2点が挙げられた。

キーワード: 信頼関係,被尊感情,主体性,WS型授業,目標と振り返り

(5)
hyper-QUソーシャル・スキル尺度」を用いた学校不適応群の特性と不適応予備群の早期把握と支援に関する検討
   橋由希子 中津郁子

The study on characteristics of school maladaptive group and earlydetection and support of potentially maladaptive group using hyper-QU social skill scale
TAKAHASHI ,YukikoNAKATSU, Ikuko
要約
今回,A県公立B中学校生徒を対象にhyper-QUソーシャル・スキル尺度による調査を平成2829年度と連続して行い,学校不適応群の特性と予備群の早期把握の方策について検討した。不適応群では一般群に比し,かかわり因子得点が有意に低く,特性に多少の程度差はあれ,継続して存在することが示唆された。つぎに一般群におけるかかわり因子の得点分布(平均値±1SD)から予備群把握のための基準値を設定した後,28年度から29年度にかけ不適応群に移行した生徒10名について検討した結果,下限値以下が4名,上限値以上が1名認められ,その後,発達障害と診断された生徒が4名,心理的要因を抱えていた生徒が1名認められた。また28年度のかかわり因子得点を一般群,移行群,不適応群で比較した結果,調査時点で移行群を独立した集団として位置づけることは出来なかった。今後,かかわり因子の得点分布から不適応予備群の基準値を設定し,該当した生徒に対してきめ細かな見取りを行うことで,より効果的な不適応への移行防止が可能でないかと考えられた。
キーワード: 学校不適応,不適応予備群,不適応防止策,hyper-QUソーシャル・スキル尺度

(6)
非行問題に関する教員とスクールカウンセラーの連携及び協働
  渡辺仁・葛西真記子
Cooperation between Teachers and School Counselors towards Juvenile Delinquent Behaviors
   :WATANABE HitoshiKASAI Makiko
要約
学校現場で起こっている様々な生徒指導上の課題に対応するためには、教員のみによって対応するのではなく、心理の専門家であるスクールカウンセラー(SC)等を活用し、教職員がチームで問題を抱えた児童生徒への対応を行うことが重要である。しかし、現在のところ非行問題に関して、SCの支援を十分に活用しているとは言えない。本研究では、児童自立支援施設に併設する分校・分教室の教員7名にインタビューを行い、非行問題においてSCとの連携が難しい現状について明らかにした。その結果、非行問題での課題として、非行に対する教員のこれまでの考え方、生徒指導の問題、教員の知識不足があり、非行問題の解決にために、SCの活動を理解すること、意見交換する場を設定することが必要であることが示唆された。今後、SCが非行問題に対して、どのような支援ができるのかについて情報を発信し、チームで検討する場を設けていく必要がある。
キーワード:スクールカウンセラー、連携、協働、非行

(7)高等学校における進路支援の在り方についての一考察 −定時制・通信制での支援事例を通して−
 八原 るみ
One of consideration about the state of the course support in a high schoolThrough a support case by a part-time schooling system correspondence course
YAHARA,Rumi

要約
本研究では、多様な学習の在り方を支援する取り組みとして、定時制・通信制高校に通う生徒に対し主に進路支援を目的に支援相談員として活動した実践事例2例を報告し,進路支援の在り方について検討した。その結果、将来の自己実現のためには自分に関することの理解を深めることが必要であり、学校で教師や同年代の大人との関りを通して自己理解を深めることが重要であることが示唆された。今後は自己理解を深める指導支援とともに、自らの適性を生かす将来の見通しを持てるような指導支援の取組が課題であることを指摘した。
キーワード: 自己理解,進路支援,高校生,定時制・通信



このページに掲載された内容および原著論文はすべて鳴門生徒指導学会(THE NARUTO ASSOCIATION OF SCHOOL GUIDANCE AND COUNSELING)に帰属するものである。

Copyright 2000-2018 Naruto Association of School Guidance and Counseling:Last Updated 2018.08.27