鳴門生徒指導研究第26号(2016)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 26,2016,August,ISSN 0917-5180

ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第26号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名、要約、キーワードを掲載します。


日本語・英文タイトルと著者名および要約
(1)2015年の世界の不登校研究の概観 −ERIC および PsycINFO の文献から−
                            佐藤 正道

A Review of the Studies about Non-Attendance at School,School Phobia,and School Refusal in the World(2016)
      :SATO Masamichi
要約
 日本の不登校の問題を考えるうえで,常に世界の研究に目を向け続けることは必要 である。筆者は 1980 年から 1990 年までの研究の概観を行い,その継続研究として 1991 年から 2002 年まで,および 2011 年は ERIC およびPsycINFO(PSYCHOLOGICAL ABSTRACTS)の,2003 年から 2010 年までは PsycINFO の,さらに 2013 年と 2014 年は ERIC の不登校との関連が考えられるキーワード school attendance,school dropouts, school phobia ,school refusal を持つ文献を分類してきている。その継続研究として 2015 年は ERIC および PsycINFO の文献 91 件について取り上げ分類し検討を加えた。


Key words : school attendance, school dropouts, school phobia, school refusal


(2)自己指導能力を高めるホームルーム活動の実践 〜 一生を見通すという視点を取り入れて 〜
         白濱真紀子,小坂 浩嗣

An Action Research on Classroom Activities for improving Self-Guidance Competency at a Senior High School ; From the Perspective of the Life Career Vision
       :SHIRAHAMA Makiko,KOSAKA Hirotsugu

要約
 本実践研究では、生徒自らが現在および将来における自己実現を図っていくための力で ある自己指導能力を高めるホームルーム活動を開発・実践し、その効果について検証する ことを目的とした。Y 高等学校1年生(85 名)を協力学級として、X 年4月〜X 年 11 月 の期間に計3回のホームルーム活動を計画し、実践した。その結果、今回の実践には自己 指導能力を高めるために「一生を見通す視点」「自己理解」「目標の明確化」に作用する要 素のあることが明らかにされた。一方で、生徒の発達段階に応じたプログラムを計画する ことが必要であること、「自己理解」が進むほど「葛藤」に直面する生徒が出てくることか らフォロー体制を整える必要性のあることが課題として挙がった。


キーワード:自己指導能力、自己実現、ホームルーム活動

(3)生徒指導の機能を活かした話し合い活動による自己指導能力育成の実践的研究
       天満 洋介,池田 誠喜
A Practical study of self-guidance capability development through dialogue activities
          :TENMA Yousuke,IKEDA Seiki

要約
 本研究は,中学生の自己指導能力の育成を図ることを目的として,A 中学校を対象に生 徒の自己指導能力を育成するための教育プログラムを作成し,その実践効果を検証した報 告である。 教育プログラムの作成にあたり,生徒の実態を捉えるためのアセスメントとしてスクー ル・モラール尺度を作成し測定を行った。結果,「教師との関係」,「友人との関係」,「部活 動との関係」,「学級との関係」,「自己実現」の5つの因子が抽出され、5因子の得点比較 から,「学級との関係」,「自己実現」の2因子が他の3つの因子より低いことが示された。 この結果を踏まえ,「学級との関係」にかかわる望ましい学級風土形成のための共感的人間 関係の構築と,「自己実現」のための主体性・自律性の育成を図ることを目的とした教育プ ログラム「話し合い活動」を学級活動・教科指導・学校行事に導入し効果の検証を行った。 結果、教育プログラム「話し合い活動」が,自己指導能力の育成を図るための共感的人間 関係,自己決定,自己存在感という生徒指導の三機能に触れることができる実践活動とな ったことが示された。


キーワード:生徒指導の三機能,話し合い活動,スクールモラール,自己指導能力

(4)スクールカウンセラーの効果的活用及び教育相談の充実に関する研究
   −学校組織・体制,教職員の意識の在りよう等の検討を通して−

               松尾 康則,葛西真記子
The Effectiveness of School Counseling Practice and the Substantial School Guidance and Counseling
          :MATSUO Yasunori,KASAI Makiko

要約
本研究では,教育相談の充実やより効果的なスクールカウンセラー(以下:SC)活用の 具体的な方向性を導きだし,教育相談活動の効果的な学校像やその具体的な内容について も明らかにすることで,教育相談の充実に向けた相談体制や SC がより機能的に活動でき るための学校組織・体制,SC 担当者の任務内容や留意点,教員の意識の在りよう等につ いて一定の共通モデルを提示することを研究の目的とした。方法として,教員への質問紙 調査(研究T),SC への質問紙調査(研究U),教員及び SC への面接調査(研究V)を行 った。それらの結果をもとに,総合考察において,SC の効果的活用及び教育相談の充実 に向けて,学校組織・体制,教職員の意識の在りよう等について検討・改善が必要な視点 について考察し,最終的に,SC を効果的に活用する上で必要なこと,重要な視点などに ついてモデルの提示を行った。

キーワード:教育相談体制,スクールカウンセラー,効果的な活用,モデル

(5)保育所のおける箱庭あそびの実践 −児童虐待予防の観点から保育所とのコラボレーション−
              西森 啓祐,中津 郁

Practice of Sandplay in the Nursery :Collaboration with the Nursery from the Point of View of Child Abuse Prevention               :NISHIMORI Keisuke,NAKATSU Ikuko
要約
児童虐待予防の観点から,保育所に箱庭を設置し,実践が行われている。本研究は傷つ き体験を抱える 4 歳男児 A との箱庭療法面接事例を示し,A の成長と保育所とのコラボレ ーション(協働)を検討することを目的とする。A の箱庭は荒々しいものから始まり,次 第に安全基地と思われるものや,男性性の芽生え,自立していこうとする姿など,大きく 成長する様子が見られた。保育所での定期的な箱庭あそびの検討会の中では,参加者が一 連の箱庭作品の中での子ども理解やこころの声を聴くことに努め,子どもの成長や課題を 共有した。子どもの変化や成長により,子ども・保育士・保護者の関係性は変化した。そ して,それらは保育士の保育力の向上ともなった。箱庭あそびの実践及び保育所とのコラ ボレーションは,多少なりとも児童虐待からの回復と予防につながると考えられた。

キーワード:児童虐待,箱庭あそび,保育所,コラボレーション


(6)学校とスクールカウンセラーの連携に関する研究 −A 県公立小・中学校における実態調査より−
              山本 信子,中津 郁子
Study on the Cooperation of the School and the School Counselors :From Survey in Public Elementary and Junior High School
             :YAMAMOTO Nobuko , NAKATSU Ikuko


要約
本研究はA県全公立小・中学校におけるSC活用の質問紙調査による実態調査を通して、 学校側の視点からSC活用の在り方を探ることをねらいとした。SCが配置されている 小・中学校において、校種間・規模間・配置形態間によりSC活動状況の比較から、学校 の受け入れ体制や配置後の取り組みを整えることでSC活用の効果は高まるのかを考察し た。また、学校とSCの連携システムを検討した。その結果、校種間では中学校が、配置 形態間では拠点校が、学校の受け入れ体制・配置後の取り組み・SC活動状況とも有意で あった。このことから,SCを効果的に活用するためには,学校の受け入れ体制や配置後 の取り組みを整えることが大切だと考えた。また、学校とSCの連携において、人間関係 を繋いでいける教職員とSCの関わり方を根本に据えた連携システムの構築が必要だと考 えた。

キーワード:学校の受け入れ体制、配置後の取り組み、SC活動状況、連携システム


このページに掲載された内容および原著論文はすべて鳴門生徒指導学会(THE NARUTO ASSOCIATION OF SCHOOL GUIDANCE AND COUNSELING)に帰属するものである。

Copyright 2000-2016 Naruto Association of School Guidance and Counseling:Last Updated 2016.11.13