鳴門生徒指導研究第25号(2015)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 25,2015,August,ISSN 0917-5180

ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第25号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名、要約、キーワードを掲載します。


1.日本語・英文タイトルと著者名および要約
(1) 2014年の世界の不登校研究の概観
―ERICの文献から―      
    佐藤 正道
A Review of the Studies about Non-Attendance at School,School Phobia,and School Refusal in the World(2014)         :SATO Masamichi

日本の不登校の問題を考えるうえで,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から2002年まで,および2011年はERICおよび PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの,2003年から2010年まではPSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance,school dropouts,school phobia ,school refusal を持つ文献を分類してきている。その継続研究として2014年はERICの文献46件について取り上げ分類し検討を加えた。


(2)小学校における『子ども理解のポイント』作成
    〜若手教員の学級づくりへの支援を通して〜
                             望月 崇宏,阿形 恒秀
Editing "Point of Understanding the Child " in Elementary School
     : Based on the Support for Class Management of a Young Teacher
:MOTIZUKI Takahiro,AGATA Tsunehide

近年,小学校現場では「学級づくりの難しさ」が課題になることが多い。また,ここ数年で多くのベテラン教員が退職を迎え,若手教員が採用されることが多くなってきている。それにより,教師文化や指導技術の継承をどうするのか,という問題が生まれている。筆者の置籍校でも,そのような状況は見られた。
本実践研究では,これらの課題解決を目指し,若手教員の学級づくりの支援を目的として,筆者が実践研究を通じて得た知見を基に,小学校の若手教員を対象にした資料『子ども理解のポイント』を作成した。内容は,「見る」「判断する」「指導する」という「子ども理解のサイクル」を前提として,キーワードとなる「述語」を巡る中堅教員と若手教員の<問答>と,学校現場で実際に活用できる<ワークシート集>で構成した。
この資料により,子どもに関わる教師の行為についての考えを深めたり,意味づけしたりすることができた。また,筆者のような中堅教員が,「若手教員に教師文化や指導技術をどのように伝えたら良いか」という問題について考察することができた。


(3)小学校における,みんながつながる学級経営をめざした取り組み
  〜あたたかく充実した人間関係を育む集団活動を通して〜
                           佐藤かおり,小坂 浩嗣
Good Relations of Class Management and Classroom Activities in Elementary School
: Analysis on Programs of Group Work
:SATO Kaori, KOSAKA Hirotsugu

本研究では,全教職員で共通理解を図りながら計画的・協働的に集団活動の実践に取り組むことが,学級力を向上させる効果と可能性を検証することを目的とした。A小学校(児童数約490名)を研究協力校として,X年4月〜11月の期間に,学級力を向上する手だてとして,集団活動を取り入れた活動を計画的に継続して実践した。そして,その計画や実践の振り返りをねらいとした学年団会(スマイルミーティング)を定期的に実施した。その結果,子どもたちへのアンケート調査から,子どもたちの間に互いに助けあおうとする雰囲気の醸成や学級,学校の居心地のよさの向上が認められた。また,教職員へのアンケート調査から,学級力向上に向けて協働しようとする雰囲気の高まりが認められ。以上の結果から,計画的に継続して集団活動に取り組むニコニコタイムと,共通理解を図りながら計画的・協働的に集団活動に取り組むスマイルミーティングの有用性が示唆された。一方で,集団活動実施の工夫や,教職員自身の取り組みへの必要感を高めることが重要な課題に挙がった。


(4)生徒指導実践に活かす自己指導能力尺度の作成
                      天満 洋介,池田 誠喜,阪根 健二
Development of Self-Guidance Ability Scale in Student Guidance
 :TENMA Yousuke,IKEDA Seiki,SAKANE Kennji

本研究は,生徒指導における中学生の自己指導能力を測定する尺度を作成し,教師が自己指導能力の理解を深め,実際的に自己指導能力の育成を目指した実践に寄与をすることを目的とした。調査対象は中学生329名であった。まず自己指導能力の尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討した。その結果,自己指導能力は「共感的人間関係」,「自己決定」,「自己存在感」の3つの下位尺度からなることが明らかとなった。なお,妥当性の検討にはレジリエンス尺度を用いた。

 
      
(5)摂食障害の事例にみる父・母・子の三者関係について
   −事例のメタ分析を用いて−
                            武田彩記子,葛西真記子
Relationships among Father, Mother, and daughtor of Eating Disorders
: Using Meta-analysis of Case Studies
  :TAKEDA Sakiko,KASAI Makiko

本研究では,これまでに発表されている摂食障害の事例研究をメタ分析することによって家族要因を明らかにし,摂食障害発症予防や治療の一助になることを目的とした。その結果,摂食障害の家族要因として,母親の過保護・過干渉な養育態度や,母親と子どもの双方,または一方的な依存,母親への気遣いがあることが示唆され,さらに,母親から受容されていない感覚があることが明らかとなった。また,父子関係より母子関係において,密着しており,なおかつ感情や欲求を言語化できない場合,摂食障害発症に影響を及ぼすことが明らかとなった。また,夫婦関係においては,夫婦内で葛藤が生じていたり,密着しすぎていたりするなど,夫婦内の均衡が保たれていない場合,摂食障害発症へと繋がることが示唆された。また,母子関係・父子関係・夫婦関係の個々に持つ機能や意味は,それぞれの家族関係のあり方により,形を変えながら存在しており,それぞれが補い合える関係性であることが,子どもの精神的健康にとって重要であることが考えられる。



このページに掲載された内容および原著論文はすべて鳴門生徒指導学会(THE NARUTO ASSOCIATION OF SCHOOL GUIDANCE AND COUNSELING)に帰属するものである。

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