鳴門生徒指導研究第24号(2014)
Journal of Naruto School Guidance and Counseling,Number 24,2014,August,ISSN 0917-5180

ここでは,学会誌「鳴門生徒指導研究」第24号の論文のタイトル(英文タイトル)・著者名、要約、キーワードを掲載します。


1.日本語・英文タイトルと著者名および要約
 
(1)2013年の世界の不登校研究の概観―ERICの文献から―
 佐藤 正道
A Review of the Studies about Non-Attendance at School,School Phobia,and School Refusal in the World(2013)
:SATO Masamichi
   要 約
 日本の不登校の問題を考えるうえで,常に世界の研究に目を向け続けることは必要である。筆者は1980年から1990年までの研究の概観を行い,その継続研究として1991年から2002年まで,および2011年はERICおよび PSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの,2003年から2010年まではPSYCHOLOGICAL ABSTRACTSの不登校との関連が考えられるキーワードschool attendance,school dropouts,school phobia ,school refusal を持つ文献を分類してきている。その継続研究として2013年はERICの文献64件について取り上げ分類し検討を加えた。
 キーワード:school attendance,school dropouts,school phobia ,school refusal

(2)小学校高学年におけるperfectionismと学校適応感の関係
杉本 卓弥・葛西真記子
The Relationship between Perfectionism and School Adjustment of Elementary School
Children
:SUGIMOTO Takuya,KASAI Makiko
  要 約
本研究では,小学校高学年の児童のperfectionismが学校への適応感に正と負両方の影響を与えているのかを検討することを目的とした。まず,小学校高学年用学校適応感尺度を作成し250名の児童を対象に検討した結果,大久保(2005)が作成した適応感尺度と同様の因子構造が確認された。本尺度は,4因子27項目で構成され,内部の一貫性を示すα係数も十分な値であった。次に,児童の完全主義が学校への適応感に与える影響を検討した。その結果,児童の学校への適応感の各側面に負の影響を与えているのが「結果へのこだわり」であり,逆に正の影響を与えているのが「完全への願望」であった。このことから従来のperfectionism研究で見られてきたperfectionismの正と負の両方の側面が今回の研究においても確認されたことを支持するものであった。
 キーワード:小学校高学年、自己志向的完全主義、学校適応感

(3)教師のコミュニケーション行動に対する教師認知・子ども認知のずれ−小学生と教師への質問紙調査から―      
 今西 悠・葛西真記子
Teachers’ Communication Behavior and the cognition of teachers and pupils
−Survey to Elementary pupils and teachers−
  :IMANISHI Haruka,KASAI Makiko
 要 約
学校生活において教師が子どもに与える影響は重要であり,教師のコミュニケーション行動に対する子どもの認知を調べる研究がなされてきた。その中で,両者のコミュニケーションの認知にずれが生じ,子どもの教師への心理的距離に否定的な影響が起こっている可能性が示唆された。一方,有効な教育を行う上で重要な教師のコミュニケーション行動の特性として,教師のコミュニケーション行動の「直接性」が明らかにされてきた。そこで本研究では「直接性」を伴うものを含めた教師のコミュニケーション行動の教師認知と子ども認知とのずれについて検討した。その結果,教師認知と子ども認知のずれは,子どもの学年よって変化していること,教師認知が肯定的であるほど子どもの教師への心理的距離が小さくなることがわかった。このことから,教師は子どもの発達段階によって,自身のコミュニケーション行動や子ども認知を修正する必要があると考えられる。
 キーワード:教師認知、子ども認知、コミュニケーション行動

(4)中学校教師の精神的健康にストレスとストレスコーピングが及ぼす影響
俊野淳子・葛西真記子 
The Impact of Stress and Coping on Junior High School Teachers’ Mental Health
  :TOSHINO Atuko,KASAI Makiko
 要 約
教職員の病気休職者数はここ10年間で1.6倍に増加し,特に中学校教員のストレスが高いことが明らかになってきた。そこで本研究では,中学校教師を対象に,精神的健康状態,ストレス,そしてストレスに対してどのような対処(コーピング)法を明らかすることを目的とした。対象は,36名の中学校教師で,GHQ30,中学校教師ストレッサー尺度,中学校教師のストレスコーピング尺度を実施した。その結果,どの尺度においても性別による違いはなく,@健康度のレベルが高い群では現れにくい病理が,低い群になると身体レベル・活動レベルまで問題化して現れてくること,Aストレスコーピングに関してはその問題を見なかったり先送りしたりしている場合が多いこと,B健康度のレベルが高い群では,様々なストレスへの対応に多用性が見られることが明らかとなった。今後,精神的健康度の低い教師を対象にストレスへの対処法のレパートリーを増やすような介入が必要であると思われる。
 キーワード:ストレス、ストレスコーピング、精神的健康、教師
    
(5)通常学級への適応が難しい生徒への支援の実践 〜別室教室での体験活動を通して〜
隅田 薫,佐藤 亨
An Action Research of the Support for Junior High School Students in An Extra-classroom
:Based on Experience
:SUMIDA Kaoru,SATO Toru
 要 約
本研究では,内面に悩みを抱え通常学級での学習や生活に支障を来し不適応状態にある生徒を支援するため,学校内に既設された別室での支援活動の可能性を検証するとともに,支援した体験活動の意味を検討することを目的とした。Y中学校を協力学校として,X年4月〜X年11月の期間に別室教室での支援実践を計画し,実践した。実践に関するエピソード記述による分析結果から,@別室教室が生徒の心理的物理的居場所として作用したこと,A体験活動が生徒の教室復帰への内面からの効力感を喚起させる要素として作用したことが示唆された。
 キーワード:別室教室、体験活動、園芸療法、花療法

(6)アンガーマネジメントプログラム実施による児童の変容と教師の児童認知に関する研究
井上 隆・中津郁子
A Study onthe Transformation of Children and Teacher's Child Cognition by Anger Management Program Implementation
:INOUE Takashi,NAKATSU Ikuko
 要 約
 本研究では、近年増加傾向にある「小学生の暴力行為」に対するアンガーマネジメントプログラムの開発と実践を行い、アンガーマネジメントプログラムの児童に対する効果とアンガーマネジメントプログラム実施前後の教師からみた児童認知の変化を検証した。実践対象学年は今まで実践例の少ない中学年(小学校3年生)を対象とした。
 アンガーマネジメントプログラム実施による「攻撃性の減少」効果は見られなかったが、教師から見た児童の「攻撃性の減少」には有意な差がみられた。また、教師用RCRTによる教師から見た児童のモノサシの多様化やウマの合う児童とウマの合わない児童の想起順に変化がみられた。今後の課題として、アンガーマネジメントプログラムの内容の精選や般化の方法が示された。
 キーワード:アンガーマネジメントプログラムの開発、問題攻撃性尺度、教師用RCRT


このページに掲載された内容および原著論文はすべて鳴門生徒指導学会(THE NARUTO ASSOCIATION OF SCHOOL GUIDANCE AND COUNSELING)に帰属するものである。

Copyright 2000-2014 Naruto Association of School Guidance and Counseling:Last Updated 2014.11.20